「キャディさん」はどこまで必要なのか?
重箱の隅、つつかせていただきます|第21回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
GOLF TODAY本誌 No.599/70ページより
戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
「キャディさん」はどこまで必要なのか?
カーレースのラリーでは、助手席に「コ・ドライバー」を乗せて走る。コースを下見して調べ上げ、その日の路面のコンディションに合わせて的確な指示を出し、選手には操縦に集中させるのが仕事だという。なんとなく「ツアーキャディ」に似ている気がする。
ゴルフは基本的に個人競技であり、サッカーや野球のようにチームメイトと組んで戦うことはほとんどない。個人の能力で競う点ではテニスや卓球、あるいはマラソンに近い。だが、ゴルフには「キャディ」がいる。ここが他の個人競技と大きく異なるところだ。
プレーヤーの道具を運び、プレー中でもアドバイスを送って助けることができる存在。マラソンで考えてみると、給水タンクやタオルを運びながら選手に伴走し、タイミング良く選手に手渡す役目の人がいるようなもの。こういったサポートがあれば、選手がタイムを縮められる可能性は大きくなるだろう。
「ツアーキャディ」はまさにそのポジションであり、ラリーの「コ・ドライバー」のごとく選手を支え、同じゴールを目指す。優れた「ツアーキャディ」と組むことは、ツアーで戦う選手にとっては大きなアドバンテージになるはずだ。
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だが、一般ゴルファーにとってゴルフ場の、クラブ運びとコース説明がメインの「キャディさん」はそこまで必要だろうか。
昨今はリーズナブルなセルフプレーのスタイルも浸透し、キャディの必要性を感じないゴルファーが増えているように思う。コースナビ付の乗用カートの導入なども、その流れを促しているように感じる。
私自身も、ホームコースでは「キャディさん」は付けない。何年もプレーしていればコースを覚えるし、年々飛距離が落ちるぶん、打球を見失うこともほとんどない。カートがあれば、クラブ運びもまったく苦にならない。
状況判断やクラブ選び、グリーンの読みも、成功しても失敗しても“自己責任”だから愉しい、という考え方でもある。
初見のコースでは「キャディさん」をお願いすることが多いが、慣れないせいか逆に気を遣ってしまう。ナビ付カートで十分、と思うことが多い。
あくまで私個人の考え方だが「キャディさん」は廃止すべきではないだろうか。いや、極論ではある。だが、そろそろ真剣に議論すべき時期が来ていると思う。
昔はコース近隣の主婦のよいバイト先だったかもしれないが、近年は人手不足が進んでいる。
以前は“主”のような「ツアーキャディ」顔負けのベテランもいたが、最近では高齢化もあって質の低下は否めない。それでも良い「キャディさん」を揃えるには、教育に時間も手間もかかる。だから逆に「キャディさん」を“通常はいないもの”とすることで、ゴルフ場の運営やプレーヤーの意識にも変化が起きるはずだ。
「キャディさん」がなくなったら研修生の扱いや仕事はどうするんだ、とかも言われそうだが、それも含めて考えるべきだろう。プロを目指す過程にキャディ業務は必須ではない。
「キャディさん」がいなくなったら、「キャディ派遣」あるいは「キャディ代行」という仕事ができるかもしれない。プレーヤーが、日時とコースを指定して呼ぶ。スタッフ(キャディ)は自分のエリアのコースは熟知しており「ツアーキャディ」並みの仕事をこなす──というもの。ニーズ次第だが、副業、本業として「プロキャディ」が成り立つようになるかもしれない。
こうなれば「ツアーキャディ」も含めて「コ・プレーヤー」とか呼び名を変えたくなる。いや、少し妄想が過ぎたか。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
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