ステルスアイアンは1モデルだけで勝負する孤高のアイアンか?!
新しいステルスアイアンをコースに持ち込み、ロマン派ゴルフ作家が検証する!
ステルス アイアン
新しい『ステルス』シリーズには、アイアンが一種類しか発売されない。競合他社は数種類から選べるし、今まではテーラーメイドも同様だった。コースに持ち込んで、その謎を紐解き、レポートする。
撮影/篠原嗣典
新しい時代のスタンダードモデルが『ステルス アイアン』なのか?!
テーラーメイドは、2022年4月1日に新しい『ステルス アイアン』を発売する。
コピーは、“スコアメイクの武器に、ステルスアイアンを”である。
テーラーメイドのメインブランドのアイアンは、今まで、スタンダードモデル、『MAX』、『MAX OS』というように複数のラインアップを用意し、色々な層のゴルファーが自分に合うものを選べるようにしていた。
しかし、今回の新製品は、『ステルス アイアン』の一種類だけなのだ。
スペックを見てみると、7番でロフト28度ということで、ぶっ飛び系アイアンに分類される。
スタンダードモデルにも新しい時代が来たというメッセージなのか?
それとも、他に意図があるのか?
『ステルス アイアン』は、ラインアップ不要の万能なアイアンなのか?
何とも不思議である。
『SIM』シリーズにおいて、数代に渡って、正直に書くと、アイアンについては不満があった。『P』シリーズのアイアンは上手く作ってあると感心できるのに、メインブランドのアイアンは、机上の理論で空回りしているというか、詰め込みすぎで渋滞しているというか……
だから、『ステルス アイアン』の一種類だけしか出ないということ知ったときに「無駄な抵抗はやめる」と決断したということなのか、と、一瞬、頭の中を過ったのだ。
じっくりと『ステルス アイアン』を見てみると、ネックやソールに、目に見えてわかるテーラーメイドのテクノロジーが詰まっている。
「トウラップテクノロジー」で、フェースを極限まで薄くして、バックフェースのトウ側までえぐって、飛距離と寛容性をアップし、裏側から蓋をすることでヘッドの剛性を向上させるのが「キャップバッグデザイン」である。
複合的なテクノロジーで、初速を上げ、徹底した低重心で高弾道を打ちやすくしたのが『ステルス アイアン』のようだ。
実質的には、中空アイアンなのだ。
一種類だけの答えがわかったような気がした。時代は、キャビティバックを通り越して、中空アイアンにシフトしてつつある。
やさしい中空アイアンとしてのポジション一つで、多くのゴルファーが使えるクラブになったということのようである。
そうとわかれば、『ステルス アイアン』への期待は倍増する。楽しみながら、コースで打つことになったのである。
完成度が高い中空アイアンが『ステルス アイアン』である
『ステルス アイアン』の一発目は、6番アイアンだった。ロフト24度はロングアイアン並みである。
少し薄い当たりだったが、強いボールでほぼストレートに飛んで、170ヤードキャリーして、10ヤード転がって止まった。
打音は小さめで、音質は硬質だ。打ち応えも、しっかり目で、打感に不満を持つゴルファーは少ないと思われる。
次に9番アイアン、ロフト37度を打った。クラシカルなアイアンであれば8番アイアンに相当する。きれいな高弾道の軽いフェードで、飛距離は120ヤード。ボールはその場で止まった。
ミドルアイアンは2番手アップだが、ショートアイアンは1番手アップになることがわかった。
次は130ヤード残りで、8番アイアンを持ったが、ロフトは32度だ。
構えてみると、130ヤードよりも飛びそうに感じた。ロフトが立っているように見えたのだ。パンチショット気味に打った。ボールは中弾道になって、125ヤードキャリーして、10ヤード転がった。
別のホールで、8番アイアンをフルショットした。真芯に当たった。高弾道で、スピンもかかった。139ヤードキャリーして、ボールは2ヤードで止まった。
『ステルス アイアン』は、上手く出来ている。中空アイアンとしては、かなりの完成度だと感じた。
芯に当たれば、高弾道で素晴らしいボールが出る。ショートアイアンはスピン性能も申し分ない。
飛距離についても、ミドルアイアンはぶっ飛び系アイアンで、ショートアイアンは飛び系アイアンで、テーラーメイドが、新しい基準だと宣言しているような気がした。
飛距離不足で、スコアを損している自覚があるゴルファーに『ステルス アイアン』はオススメである。
また、『ステルス』シリーズのドライバーの使い手にも『ステルス アイアン』は楽しんで使える可能性を感じるのでオススメしたい。
注意点は、芯に当たらなかったときに、ボールが上がりにくく、高さも浮力も弱いことだ。これはパワーがあるゴルファーであれば、問題にならないかもしれないが、ヘッドスピード40m/sぐらいの場合は注意が必要である。
もう一つは、ぶっ飛び系アイアンの宿命であるが、番手間の開きが大きくなる隙間があることだ。『ステルス アイアン』の場合、8番アイアンまでは飛距離がしっかりと出るが、9番アイアンから飛距離よりも狙い通りに止まるほうに機能が発揮される傾向がある。
この解決方法は、色々とあると思うので、使い手に合う工夫が上手くいくことを祈るしかない。
『ステルス アイアン』は、中空アイアンとして完成度が高い。
『P』シリーズで蓄積したノウハウが、十分に活かされていると感じた。
『ステルス』というブランドは、テーラーメイドのメインブランドで、ツアープロが使っているクラブである。
『ステルス アイアン』は、明らかに対象を中級者と初級者にしているようで、その部分は、ブランドイメージと少し違うことは拒めない。
とはいえ、2022年のゴルフシーンを見渡せば、ドライバーは得意だが、アイアンは苦手というゴルファーはかなりの割合で存在する。
『ステルス』というブランドは、それに合わせて、ドライバーとアイアンを開発した、と考えると、全てが丸く収まる気がするのだ。
テーラーメイドのアイアンで良いのは『P』シリーズだけで、他のブランドのアイアンは不満が残ったと書いた。とはいっても、市場では、イマイチな評価をものともせずに、大ヒットアイアンになっていた。
アイアンはスコアに直結する用具であり、使っていたゴルファーの苦労は大変なものだったと想像する。
新しい『ステルス アイアン』は、コピーでも、スコアアップを全面に出している。
もう一度、テーラーメイドのアイアンを試してみようと、いうゴルファーに、まずは試打してみるべきだと進言したい。
簡単な部類に無条件に入るアイアンではないからだ。
打ち手にある程度の腕前があれば、楽しくゴルフが出来るのが『ステルス アイアン』なのだ。
直感的にチョイスするのではなく、じっくりと選んでこそ、『ステルス アイアン』は機能すると思えてしかたがないのである。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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