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LとかTとか、蜘蛛とかあるけれど。パターの種類はなぜこんなにも多いのか?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第11回

2022/03/28 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

パッティング

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

パターはパンドラの箱から飛び出した

パターの種類が多いことは、ゴルフの謎の一つだという考え方があります。
市場を見ると、いわゆるメインとして扱われているヘッド形状だけでも5つぐらいに分かれます。
ネックの形状のバリエーションなどを加えれば、あっという間に両手では数え切れなくなる種類になってしまいます。

それぞれに特徴があって、機能も色々です。必要に応じたものだと考えなければ、説明が出来ません。

そもそも、パットというのは、ゴルフの原点であるだけではなく、特別中の特別といえるシビアなゲームなのです。
ゴルフのストロークのほとんどは、少々の失敗なら挽回可能ですし、選択肢は常にたくさん用意されていて、正解も一つとは限りません。
しかし、パットは、極論をいえば、入るか、入らないか、という二つの結果しかないところが、スペシャルなのです。

努力を積み重ねて、腕を磨けば磨くほど、パットという世界では、ゴルファーが出来ることの限界が残酷に露呈します。
腕前だけは足りないところは、用具で補うというのはゴルフの醍醐味です。足りないところは十人十色ですので、パターの種類は増えていったと考えられます。

ゴルフ用具史を紐解くと、最初に異形なパターが出てきたのはいわゆるマレット型です。マレットは小槌の意味です。現代だと、ゲートボールやグランドゴルフで使うような金槌型です。
そして、近代ゴルフになってから、一気に種類を増やしていきます。芝刈り機の性能が上がって、グリーンのコンディションが良くなったからだと推測されます。
誰が開けたのかはわかりませんが、パンドラの箱から飛び出るように、パターは増えていきました。そして、それは、現在まで続いているのです。

どんな名人でも、自分のパターでなければ、その実力をフルに発揮することは出来ません。
自分に合ったパターを使えているか?
数を増やしていくパターは、まだまだ、足りていないゴルファーがいるという証拠なのです。

相性の良さは付き合わなければわからない

ゴルフの黎明期のパターは、いわゆるL字型でした。アイアンと同じような形状で、ロフトが立っているものです。
L字というぐらいですから、見た目の形状がLの形だからという名称です。

ナイフのようにペラペラだったヘッドは、打面を平らにして、後方に膨らみを持たせるものに変化をしていきます。

次に生まれたのは、T字型です。いわゆるセンターシャフトで、ネックを中央寄りに着けて、Tの文字ような形状だったわけです。ルールで禁止をされた実績があります。禁止されるほど入ったのです。(現在では問題なく使えます)

この二つのヘッド形状に、色々なネック形状が生まれていきます。
アイアンのようにヘッドのネックにシャフトを差し込むものが始まりで、シャフトの内側にヘッドのネックの一部を入れるようにしたものが生まれます。ネックが太くて、長いと、ヘッドの重量の何割かがネックに取られて、ヒール側が重く、重心位置が高くなってしまうのを解消しようとした工夫でした。

ネックは、どんどん細く、短くなっていきます。後方に後退させるグースネックも生まれ、曲線的に曲げてバランスを取るスワンネックも生まれました。

直角に曲げるクランクネックが生まれて、出現するのは、ヘッドのトウとヒールに重量を配分して中央を軽くしたアンサー型が生まれます。異形なパターの歴史の始まりです。
ピンというガレージメーカーが作っていたので、当初はピン型と呼ばれていましたが、使用したプロが次々に優勝して、あっという間に世界中に広まり、そのときのメインだったアンサーという機種名が型の名称になりました。

科学的に検証して、ミスヒットに強くしたアンサー型は、パターの革命だったのです。
20世紀の最後の20年は、アンサー型の時代です。
ネックの位置としては、T字になるので、アンサー型にT字型は吸収されていきます。

おまんじゅうを潰して、フェース面を切ったような基本的に丸いヘッド形状をマレット型と呼ぶようになりました。素材革命で、アルミなどの軽い素材で中空のヘッドを作れるようになって出現したのです。ミスヒットに更に強くなりました。

マレット型の半分の半月形状のものは、ネオマレット型と呼びます。
アンサー型のように、色々なネック形状でも使えたので、ネオマレット型は、トウとヒールに重量を分散する形状なども出現して、伝統的な形状と融合もしていきます。

21世紀になって、アンサー型やL字型のようなヘッドの横幅が少ない形状をまとめて、ブレード型と呼ぶようにもなりました。
アンサー型も、活躍するトッププロの使用パターの影響で、ニューポート型と呼ぶケースもあります。

最も新しいヘッド形状は、蜘蛛型です。テーラーメイドのスパイダーという名称のウェイトが入った出っ張りが、ヘッドの前後左右に配置されているパターを発売して、大ヒットしたからです。
蜘蛛を上から見たような形状のパターは、次々に、他のメーカーからも発売されて、一つの形状として市民権を得ました。
2022年の最新情報としては、出っ張りは徐々に小さくなっているので、蜘蛛型の最新のパターを見ても、蜘蛛を連想する人は少ないと思われます。

一気にパターの形状の話を書きました。
読んだだけではわかりませんし、知識として、全てのパター形状を知っていても、あまり意味はないのかもしれません。
パターとの相性は、知識よりも、実際に使ってラウンドしてみなければわからないからです。
恋愛の達人でも、付き合ってみなければ、相手を知ることは無理です。パターも同じなのです。

L字使いからの進言

パターマットで打つ分には、ほとんどのパターを上手く打てます。連続百回カップインできるまで、練習をやめられない、という最後のプレッシャーを味わえる練習法がありますが、それでも、半分ぐらいのパターなら数回の失敗だけで達成できる自信が、僕にはあります。

10代から20代前半まで、1日最低でも2時間ぐらいはパット練習をする毎日で鍛えた腕前は、50代になっても、基礎として、そのくらいのことは楽勝にできるのです。

しかし、コースに出て、単なる2ヤードのパットに、パーパットとか、バーディーパットとか、別の意味が加わると、100球目を外したら最初からもう一度、というパットよりも難易度が上がるものなのです。
相性が悪いパターでは、2ヤードを決められる確率は3割いかないかもしれません。
自分のエースパターなら、9割は入ると思って打つことが出来ます。

僕は少し前に、3年間ほど『蜘蛛使い』でした。世界中に使用者を増やした蜘蛛型のパターを使い熟せると考えたのと、市場から絶滅寸前で、使いたいと思えるL字パターがなかったからです。
でも、1年前に『L字使い』に戻りました。僕の場合は、1ヤードぐらいのショートパットを構えたときの不安が、L字のパターだと、ほぼほぼ、感じなくなるのです。

新しいL字パターを使って、1年が過ぎましたが、ゴルフに行く度に、パットするのが楽しみなので幸せです。

魔法使い学校のクラス分けをしてくれる帽子が、パターでも使えれば、とよく考えてしまいます。
自分にどのパターが合っているのか?
自分にしかわかりませんし、実際にコースで使ってみなければわからないのです。

ついでに、初めて使うウキウキや慎重さが良い作用をして、新車効果という最初だけ凄く良い結果が出て、慣れると消えてしまう現象も起こるので、見極めは極めて困難です。
また、パター選びに悩んでいるゴルファーの大半は、単なる練習不足で下手なだけだという現実もあります。

ある一定のレベルまでは、パットも、他のショット同様に、練習量が裏切ることはありません。練習量の不足は、本人が隠そうとしても、見る人が見れば一発でわかるものです。
どんなパターが自分に合っているのかを知るためには、ある程度の腕前は不可欠なのです。

まずは、30球連続で入らなければ終わらない練習から始めて、クリアするごとに1球ずつ増やして、100球連続を目指しましょう。理由にかかわらず、1日サボるか、達成できずにやめたら、3球マイナスにするのです。
パットに形無し、という格言は、このように結果を出す練習をしていれば、自然と形が身についてくる、という真実を体験させてくれます。

たくさん練習するときに使用していたパターが、自分に合うパターになるのでは? という疑問もわかります。
否定は出来ませんので、不安であれば、プロが使っているとか、高額なのに売れているとか、保証があると思われるパターを使って練習をすることをオススメします。

自分は、何使いなのか? こんなものは自称で良いのです。
現在、使っているパターがネオマレット型なら、ネオマレット使いが事実なのです。
合っているかどうかは、全く別の問題です。

パットについて書き始めると、終わりがないので困りますが…… 今回はこの辺で。

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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