ゴルフスイング解析の先駆け!サイエンスアイって使ったことありますか?〜今だから言える驚きのストーリー〜
【第20回】商品開発はドラマ!SCIENCE EYE(ブリヂストンスポーツ)|フィッティングの未来を切り拓いた!インパクトの瞬間の挙動解析システム
インパクトをすぐに見ることができる画期的なシステムとして1986年に商品化したサイエンスアイ。
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はSCIENCE EYEシリーズが主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.603/70〜71ページより
取材・文/嶋崎平人
クラブとボールのマッチングから始めたたった2名のプロジェクトが5万分の一秒の瞬間を顕現化!
クラブヘッドの挙動とインパクトの瞬間を解析することで、ボールの飛球方向や距離までわかることになった。
ゴルフクラブを選ぶときに、いろいろなクラブを試打して、クラブの入り方や、ヘッドスピード、ボール初速、スピン、打ち出し角などを計測し、そのデータをもとに、最適なシャフトやクラブを選ぶことは、今では普通のこととなっている。そのデータを解析できるシステムの先鞭となったのは、ブリヂストンスポーツが1986年に発売した「サイエンスアイ」である。
この「サイエンスアイ」について、ブリヂストンスポーツの広報管理シニアマネージャー木村徳義氏とプロ・アマチュア企画シニアマネージャー岩出浩正氏にお話しを伺った。
開発のプロセスなどを伺った木村徳義氏と岩出浩正氏
広報管理シニアマネージャー木村徳義氏(右)とプロ・アマチュア企画シニアマネージャー岩出浩正氏(左)
初代の「サイエンスアイ」の開発はブリヂストンのスポーツ本部の開発部門で1985年にスタートした。東京の小平にブリヂストンの技術センターがあり、タイヤ開発部門を中心に技術者が2000人以上研究開発に取り組んでいた。その中で「サイエンスアイ」の開発はたった2名のプロジェクトであった。
元々、研究部門でプレーヤーとギア(クラブ、ボール)のマッチングが研究テーマで、その中でゴルフのインパクトの瞬間の挙動解析手法として開発された。ボールとクラブが衝突した5万分の1秒の世界を解析する手法は、当時スチールカメラと高速ストロボを使い写真撮影し、撮影したフィルムを現像し、それを解析していたので時間がかかっていた。いかに速く解析できるかがポイントで、光センサー、ハイスピードカメラなどを検討して、開発には1年以上を要した。
この時代、映像のデジタル化が急速に進んでいてその技術を生かし、インパクトの瞬間をCCDカメラ、マルチ高速ストロボで撮影し、画像をメモリーに記録して計測する方法にたどり着いた。ただあくまでも研究用だった。プロを含めてインパクトデータを解析していくなかで、ゴルフのインパクトの瞬間が見られて面白い、さらにこの装置を使い ①最適なゴルフクラブ、ボール選び ②適切なスイング診断 が出来るので、積極的に事業展開を開始しようと、当時ブリヂストンスポーツの故山中幸博社長が今までリアルタイムで見られなかったものを科学で見られるようにしたと「サイエンスアイ」と命名し1986年に商品化し発売した。
クラブ販売に欠かせないシステムとして全国のショップに浸透。持ち運びできるポータブルな廉価版も発売
米国でも特許を申請。当時は世界でもリアルタイムで解析するシステムがなかったので、海外からも引き合いがあったという。
「サイエンスアイ」はスイング映像解析のビデオシステム、インパクト解析システムを組み込んで1000万円と高額であったが、ゴルフショップやゴルフスクールを中心に100台以上販売された。また、当時世界でリアルタイムで解析するシステムがなく、海外からも引き合いがあった。
実際に自分のクラブの入り方やデータを見たゴルファーからは「自分のゴルフヘッドの入り方がリアルに映像で見ることができて面白い。」またプロからも、インパクト結果から出たデータをもとにシミュレーションされた弾道や飛距離をみて「自分がイメージした通りの球筋で飛距離も合っているので驚いた。」などの声が上がり、その精度の高さを証明した。
正確なフィッティングに欠かせないサイエンスアイ
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デジタルの進化と相まって可能になった、インパクト時のクラブフェースの向きや速さの正確な解析。これによりフィッティングが大幅に進化した。
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開発当初は1台1000万円したシステムも、のちに300万円を切るポータブル版のサイエンスアイ フィールドも発売。
最適クラブ選びの需要が高まる中で屋内設置型の、「サイエンスアイ」にはゴルフ練習場などの屋外で使用でき、持ち運びができるポータブル型の要望がでてきた。またクラブ販売にも貢献。実際にゴルフ練習場などで試打会をして「売る・売れる」仕組みができた。今までの“感覚論”ではなく、数値データで、納得して購入してもらえる方向に変わってきた。
また、価格を抑えた機器の要望も高まってきた。そして、1997年に最適クラブ選択システムとし「サイエンスアイ フィールド」を発売。価格は300万円を切る298万円に抑えた。クラブフィッティングをすることが、クラブ販売には欠かせないソフトとなり、全国のショップに浸透していった。ブリヂストンも全国で「サイエンスアイ フィールド」を使った試打会「ゴルファーズドック」を展開して、お客様のスイングに合った最適なクラブを無料でアドバイスする試打会を展開し、フィッティングの重要性の認識を広めていった。「サイエンスアイ フィールド」はトータル2000台以上販売され、クラブフィッティングのスタンダードになった。
一方、「サイエンスアイ フィールド」を使って、クラブを診断できる人を養成するために、検診マスター制度もつくり、導入したショップを中心に1000人以上を養成した。現在では各クラブメーカー、シャフトメーカーもフィッティングに力を入れており、そのための計測機器も進化して、トラックマンのような最新の機器を活用している。「サイエンスアイ」から始まった、計測に基づくクラブフィッティングは今やクラブ選びの常識となっている。現在では、スイングのクセを含めて、フィッティングできるように進化。まだ、フィッティングを経験していないゴルファーはぜひ一度経験してほしい。ゴルフライフがより楽しくなるかもしれない。