オデッセイの「ホワイト・ホット・インサート」今だから言える驚きのストーリー
【第21回】商品開発はドラマ!ボールに合わせたソフトなインサートで世界のゴルファーを魅了
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はWHITE HOT ホワイト・ホット (キャロウェイゴルフ)が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.604/70〜71ページより 写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人
「ボールと同じ素材にしてみたら?」とのイリーの一言がヒントになってブレイクスルー!
ボールのカバーと同じ素材をインサートに採用したことが画期的だった。
WHITE HOT(ホワイト・ホット)が生まれたのは2000年である。インサートのスタンダードとなり、今年で誕生から22年である。
No.1パターメーカーであったODYSSEY(オデッセイ)をキャロウェイゴルフが1997年に買収したことが、このホワイト・ホットを生み出すきっかけとなった。
このホワイト・ホットについてキャロウェイゴルフのマーケティングの茂貫太郎マネージャーにお話しを伺った。
キャロウェイゴルフのマーケティングの茂貫太郎マネージャー
キャロウェイゴルフと一緒になったタイミングで、オデッセイのチームは新しいインサートを開発するのに苦慮していた。
オデッセイはストロノミックスというインサートが既にあり、衝撃を吸収する樹脂でできていて、打感が軟らかく、当時のフィーリングが硬い2ピースボール、3ピースボールが主流の時代にマッチしていた。
また、摩擦係数が高いためボールがフェース面で滑りにくく方向性にも優れていた。ただ、衝撃を吸収することで、反発も落ちてイメージ通りの距離を打てない欠点があった。
キャロウェイゴルフでは、丁度ゴルフボールビジネスに進出するタイミングで、創業者のイリー・キャロウェイが「ウレタンのボールを打つのには、ウレタンの樹脂インサートがよいのでは」「ボールと同じ素材にしてみたら?」と何気ない一言がヒントとなった。
ボールのカバーに使われている数種類のウレタン樹脂で開発をスタートした。ボールのカバー材は反発が良く、パターインサートに同じ材料を使うと、エネルギー伝達効率もよく、フィーリングも軟らかく、方向性も良いと、いいこと尽くめであった。
最初、協力会社の町工場で、試作を繰り返し評価が良いものができた。ただ、加工をどうするか、どのようにインサートをヘッドに組み込むか、どう接着するか、構造をどうするかなど、量産化に苦労した。
新しいインサートの開発には微妙なフィーリングがわかる日本のプロ達が支える
2000年2月にWHITE HOTパターが発売された。インサートの白「ホワイト」と最新を意味する「ホット」の組み合わせである。当時のカタログを見るとヘッド形状から番号で命名され、ホワイト・ホット#1〜#5などである。
ホワイト・ホットの魅力
アニカ・ソレンスタムや宮里藍が使用して大人気を博した2ボール。
注目されたのは、2002年2月に発売したホワイト・ホット2ボールである。このパターは、アマチュア向けにやさしさを追求した設計であった。それを、発売前の前年の秋にアニカ・ソレンスタムが使いはじめ、日本のツアーで2連勝。
さらに2002年のメジャー「クラフト・ナビスコ選手権」で優勝し、一気に知名度があがった。日本でも、この2ボールを宮里藍が使用した。またホワイト・ホット#5を谷口徹が使用し、2002年の国内男子賞金王になった。
ホワイト・ホットの次のインサートは何か。ボールがモデルチェンジすると、構造や素材が進化し、打感も変わってくる。それに合わせて、プロの要望なども取り入れながら、いろいろなインサートが2000年以降も開発・商品化されていった。
例えば、2004年ホワイト・スチール、2009年ホワイト・アイス、2017年マイクロヒンジなどである。その数は20種類に及ぶ。
古き良き時代を思い出させる「ホワイト・ホットOG」
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米国でのパテント。
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最新の白いウレタンの感触は、エネルギー伝達効率もよく、フィーリングも軟らかく、方向性も良いと、いいこと尽くめであった。
その中で2007年から、インサートの開発の評価に日本人選手を活用するようになってきた。日本人選手は繊細な評価ができ、開発にも協力的であった。そのため、米国から開発担当者がわざわざ日本に来て、試作したインサートの評価を行った。特に日本人男子プロの感度・評価能力が高かった。
ただ、言葉を英訳しなければならず、微妙なニアンスが初期のころは伝わりづらかったが、米国スタッフも徐々に慣れてきてプロの言わんとすることを理解していった。
新しく開発したインサートの評価は得てして「良い」と言われるが、結局「ホワイト・ホットに近いが、そこまでは」との評価であった。行きつくところ、オリジナルのホワイト・ホットの評価が高いことが判明した。
またツアーでもプロがホワイト・ホットを使い続けて、プロが使っているものを商品として販売するべきとの議論も起こってきた。特に日本からホワイト・ホットの要望が強く、最終的に、今の時代に合わせて復活させたのが「ホワイト・ホットOG」である。OGは「OLD GANGSTER(古き時代の良きもの)」、またオリジナルの意味も持つ。初代はウレタン樹脂(透明の色)に白塗装をしたものだった。長年使用していると、塗装が剥げて中の樹脂が出てくる。
「OG」はプロの繊細なフィーリングを満足させるために、樹脂は同じ材料を使っているが、白い塗料を樹脂に配合しているため、剥がれることはない。2020年11月に日本で先行発売された。
翌年米国でも販売開始した。2代目ホワイト・ホットの誕生である。
初代の打感とコロがりが愛され続け、原点に戻った。偶然とは言え、最初に最高のものを生み出したのかもしれない。これを超えるインサートは何か。初恋は忘れられないということかもしれない。
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