“グリーンリンクス”知っていますか？ 進化し続ける全英オープンの施策
SDGsとゴルフ｜第14回
キャメロン・スミスによる劇的な逆転優勝で幕を閉じた今年の全英オープン。全英オープンを主催するのはR＆A（Royaland Ancient Golf Club of St Andrews）という組織だ。今回はR＆Aが全英オープンで取り組んでいる“グリーンリンクス”について紹介する。
GOLF TODAY本誌 No.603／117ページより
ゴルフは人々や自然にポジティブな影響を与える役割を担っている
選手もギャラリーもマイボトルを利用
会場内には様々な場所で「GreenLinks（グリーンリンクス）」という文字に出会う。全英オープンが、サステナビリティ、レガシー、気候変動対策に特化して2016年にスタートした取り組みだ。
“グリーンリンクス”は、主要なスポーツイベントとして開催することによる環境および社会的な影響を最小限に抑えることを目的としている。
“グリーンリンクス”の取り組みの中で、最も話題になったのが2019年から取り組んでいるプラスチックカップやボトルの廃止だ。今年の会場でもギャラリー向けにはマイボトルが販売されており、水を補充するウォーターサーバーを会場内の様々な場所に設置。選手もマイボトルをラウンド中持参しており、水がなくなった時は途中で補充を行っていた。
サステナブル・ゴルフ・ディレクターが取り組みを推進
ギャラリー向けに販売されているマイボトル。
本連載第3回でもR＆Aがサステナビリティを非常に重視していることを取り上げたが、この考え方は組織づくりにも浸透している。その一つが、サステナブル・ゴルフ・ディレクターという存在だ。
この重責を担うアーレット・アンダーソン氏は今年の全英オープン開幕前、「全英オープンは、ゴルフが人々や自然にポジティブな影響を与える役割を担っていることを示す機会を提供します。ゴルフは人と自然に良い影響を与え、責任ある資源利用を実証し、気候変動対策を支持する役割を担っています。私たちはこの取り組みに協力し、継続的な改善という共通の目標にコミットしてくれるすべてのパートナーに感謝します」とメディア向けのリリースにて述べていた。
2022年大会でさらに進化したこと
セント・アンドリュースで開催された150回記念となった今年の大会は、“グリーンリンクス”の取り組みがさらに進化した。具体的な施策は下記の通りだ。
・コースの芝刈りには、今年初めて最先端の電気自動車とハイブリッド自動車を使用。
・会場内に約50カ所の給水ポイントを追加。マイボトルの販売収益。観客からの寄付金と同額をマスターカードが上乗せし、2万本以上の木を植えることを目標とする森林再生プロジェクトを行っている「Priceless Planet Coalition」へ資金を提供。
・ケータリングで使用する使い捨てプラスチックを削減し、敷地内の全施設で持続可能なケータリング用消耗品を使用。
・持続可能な方法で調達された水素化植物油（HVO）を使用した複合型仮設発電機による再生可能な電力の使用。
・選手やスタッフの移動には、メルセデス・ベンツの電気自動車を使用。スコティッシュ・パワー社の臨時EV充電装置を使用して、選手や関係者の移動に使用されており、充電ユニットで充電。また、徒歩や自転車での移動が奨励されており、敷地内には駐輪場がある。
・会場内のケータリングサービスは全て地元産の食材を使用するよう義務付け・コミュニティ再利用プログラムにより、建設・撤去時に価値のある資材の再分配を促進。
サステナブル・ゴルフ・ディレクターは「全英オープンは地球の未来を守るために、より多くのことを行うよう継続的に努力する」とも語っている。
最も歴史のあるトーナメントである全英オープンは、その歴史を未来へ繋げていくためのサステナビリティ対策についても世界最高峰のトーナメントなのだ。
北村 収
1968年東京都生まれ。ゴルフ雑誌（ALBA）編集部、ゴルフダイジェスト・オンライン メディア部門に所属後、2011年に株式会社ナインバリューズを設立。ゴルフ分野を中心に、取材・執筆・編集からソーシャルメディア、web、Eコマースの企画運営まで総合プロデュースを手掛ける。
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