「7番アイアンで150ヤード」は本当に常識?自分に合うアイアンの選び方

「7番アイアンで150ヤード打てるよ」とか「残り150ヤードなら7番だな」など、いつの間にか7番=150ヤードが常識に。もちろん、コレはコレでOK。でも本当にこの常識をクリアしないとダメなのだろうか…。
根拠のない常識によって、自分に合わないアイアンを買う人が増えている
より遠くまで飛ばすことができれば、それは大きなアドバンテージとなり、スコアも縮まるでしょう。また「飛ばしたい!」という欲望はゴルファーであれば、誰もがもっているもの。至極当然といえます。
ドライバーをはじめとしたロングゲームで多用する番手であれば、プロ、アマ問わず、飛距離を追い求めることは自然なことです。しかしプロとアマで大きく違うのが、アイアンに何を求めるか、です。
プロゴルファーは皆、「アイアンは飛ばすクラブではなくて狙うクラブ」と口を揃えます。アイアンに飛距離性能を求めるプロは、まずいません。
一方アマは、「アイアンも飛ばしたい!」という人がほとんど。飛距離へのニーズが高いため、チタンなどの高反発素材を使ったアイアンが増え、さらにストロングロフトといわれる「ロフトの立った」アイアンが今やスタンダードになりました。
高反発素材もストロングロフトもゴルフクラブの進化であり、時代の変化なので悪いことではありません。しかし根拠といえるものが提示されないまま、いつの間にか「7番アイアンは150ヤード打つクラブ」といったヘンな常識が広がってしまいました。
そしてこのヘンな常識のせいで自分のレベルや身の丈、そしてプレースタイルに合わないアイアンセットを購入してしまう人が増えています。
これでは、思うようにスコアアップできないことは言うまでもありません。
ゴルフクラブは、ロフトが大きいほどやさしく打てる特性がある。
単純にロフトだけを比較すると、立っているほどボールは上方へ上がりにくくなるため、遠くまで飛びます。またスピン量が減るため、曲がりにくくなります。
その代わり弾道は低くなり、スピン量も減るためボールが止まりにくくなります。またインテンショナルにボールを曲げようとしても、スピンがかかりにくいため思ったほど曲がりません。
さらにアイアンに限らず、ゴルフクラブはロフトが大きいほどやさしく打てるという特性があります。長さや重量が同じなら、ロフトが大きいものほど、打つのが簡単というわけです。
長さや重量の違いはありますが、7番アイアンよりピッチングウェッジのほうがミスしないと感じる人がほとんどのはず。このことからもロフトの大きさは、打ちやすさに関係してくるのです。
となると、こんな疑問が出てきます。
Q:いまやスタンダードとなった「ストロングロフトのアイアン」は、打ちにくいの?やさしくないの?
A:「YES。打ちにくくて、やさしくないですよ」とも、「NO。打ちやすくて、やさしいですよ」とも言えない。
これが答えです。なんとも中途半端で曖昧。これでは答えになっていないと、憤慨する人がいるかもしれませんね。
では、なぜこのような答えになってしまうのか。それはストロングロフトにしてロフト角が減り、打ちにくくなったぶん、軽い素材を使ってヘッドを大きくしたり、コンポジット構造にして低重心化したり、周辺重量配分設計によって慣性モーメントを大きくしたりして、ロフト角減少による打ちにくさをカバーしているからです。
ヘッドが大きくなれば芯も広くなるため、ミスヒットしにくくなります。低重心になればボールが上がりやすくなります。慣性モーメントが大きくなればフェース(ヘッド)の向きが変わりにくくなるため、方向性がよくなります。
はじめてアイアンセットを購入する人や、アイアンの買い替えを検討している人は、いま説明した特性を覚えておくと役にたつかもしれません。

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とはいえ、スリクソン ZX7 MkⅡアイアン、ブリヂストン221CBアイアン、テーラーメイドP770アイアンなど、プロや上級者に支持されているアスリートモデルアイアンの7番は、ロフト角が32〜33度です。
つまり方向性を第一に考えた、狙うアイアンの7番のロフトはあまり変化していないわけです。このことから、アイアン購入を検討するとき「7番アイアンで150ヤード打つ」とか「150ヤードなら7番アイアン」といったヘンな常識にとらわれないことが大切なのです。
ダフりやチョロなどのミスが多く、グリーン周りまでボールを運ぶのに多くのストロークを費やしてしまうレベルの人は、ストロングロフトのアイアンを武器にロングゲームを重視したマネージメントでプレーするのがおすすめです。
コンスタントに90台でラウンドでき、これから80台を目指す人は方向性を重視したマネージメントをし、ロフト角32度程度のアイアンでプレーするのがおすすめです。
要するにどんなマネージメントをしたいのか、どんなプレースタイルが自分にマッチしているのかを考えて、アイアンを選ぶことが重要というわけです。

宮川岳也(みやかわ たけや)
ゴルフ雑誌編集記者を経てフリーのゴルフライターに。レッスンやギアはもちろん、ゴルフの歴史などにも精通。また、無類のスイングマニアで、スイング理論が大好き。ここ数年は競技ゴルフに明け暮れ、毎日の練習を自らに課している。

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