どうしてゴルフ場にはドレスコードがあるの? 襟付きを着なきゃいけない理由と背景
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第60回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
そもそも、倶楽部って何?クラブハウスはどんな場所なの?
ゴルフデビューする際に大きな問題になるのが、ゴルフコースのドレスコードでした。
“でした”と過去形にしたのは、最近では「あまり気にしていません」という声も聞くからです。
とはいってもゴルフをする、また続けていく中で、ドレスコード問題を完全に避けて済ませることが可能なほど、時代は新しいページまで進んでいないのも事実です。
ドレスコードというのは、簡単な例で書くと冠婚葬祭の服装マナーのようなものです。
結婚式に出席する際に、それなりの服装をするのは常識であり、多くの人が受け入れています。そういうときだけにしか着ないドレスを持っている女性もたくさんいます。結婚式に参列するためのドレスを選ぶ際、花嫁じゃない人が純白のドレスを着るのは御法度と言われています。
そういうことをグルッと含んで、結婚式のドレスコードです。新郎新婦の父親は正装ということで、モーニングやタキシードを着ることもよく見られます。それぞれにちゃんとした理由や伝統がありますが、多くの場合はただ慣習に従って、頑張っちゃうわけです。
ゴルフは冠婚葬祭じゃないよね?という疑問の声も聞こえてきます。その通りです。では、どうしてドレスコードがあるのかを説明します。
ゴルフコースのドレスコードを理解して楽しめるようになるには、まずはクラブハウスとは何なのか?を知る必要があります。
打つ方のクラブと混同しないように、コースのほうは倶楽部と書きましょう、という時代がありましたが、倶楽部を知ると少し見えてきます。
歴史を辿ってみよう
諸説ありますが、トランプの『クラブ』のマークは、こん棒がデザイン化されたものだという説があります。こん棒は、中世の隠語で『男性』を意味していたそうです。
18世紀末からゴルフブームが起きてゴルファーが増えた際、ゴルフコースが足りなくなり、新設のコースが一気に増えます。この時に利用されたのが倶楽部、という概念です。
倶楽部は、仲間を集めて自分たちのゴルフコースを持とうとか、既成のコースをホームコースとしてのスタート枠を維持しようとか、そういう意図で組織されていました。入会資格の第一は男性であることだったので、「男性だけの集まり=クラブ」とされたというわけです。
当時の男性にとっても、同性の仲間だけで秘密基地を作るような感覚は、日常の”柵”を越えて特別な空間に逃げ込めるゴルフとリンクすることで、どんどん進化して増殖していきました。
秘密基地に入れるのは、仲間だけです。入会の審査はどんどん厳格になっていき、見た目で仲間だとわかるよう、合言葉的なユニフォームの工夫も始まりました。この工夫が、約200年過ぎた現在でもゴルフ倶楽部のドレスコードとして残っているのです。
倶楽部の仲間として、相応しいかどうか?服装というアイテムで見定めるのです。仕事着ではなく、普段着でもなく、余裕がなければ所有できないアイテムほど、仲間の証として重宝されました。
どうしてブレザー?襟付き?シャツイン?
それはドレスコードには、余裕があるか、品位があるか、窮屈な装いでも我慢できるかという、仲間としての資格を精査する意味合いがあったのです。
考えてみてください。自分たちのオシャレな遊び場に、場違いなダサいスーツで来場した人がいたら、その人はその場の空気を乱す人かもしれない、と警戒する気持ちになるのと根本は同じです。
倶楽部の仲間同士がバカ(おふざけ)をやっても、外には一切漏れない秘密の空間がクラブハウスだったのです。絶対の秘密保持が約束されている空間は、自然と閉鎖的になっていきます。入り口でドレスコードをチェックされるのは、当たり前です。
中に入りたい人たちは競って、自分は資格があるのだと証明しようと躍起になったのが、クラブハウスの歴史です。
前置きが長くなりましたが、今回はクラブハウス内のドレスコードについて書きたいと思います。
ゴルフコースのドレスコードが絶滅してしまう、という噂は本当か?
「ゴルフコースのドレスコードなんて、もう少ししたらなくなりますよ」と言う人たちがいます。
半分本当で、半分は嘘です。
ゴルフコースのドレスコードは倶楽部のための、倶楽部の決まりですから、倶楽部が消えていけば失効する運命です。倶楽部はどんどん減っていますので、ドレスコードが無効化されていく流れの中で、僕らはゴルフをしているのです。
そもそもリゾートコースでは、名門の倶楽部であっても、ドレスコードなしという歴史を持っているところもあります。また、現在でも、レストランの入場時には上着がなければダメ、というコースもあります。プレー後にクラブハウスに戻ったらロッカーに行き、上着を羽織ってレストランに行くのです。食事が終われば逆行して、上着を戻してコースに出ます。
どちらも、日本を代表するような経済人を中心としているメンバーシップのゴルフコースです。どんなに偉い人でも、無名の三世会員でも、決まりごとの前ではみんな平等なのです。コースの特性に合わせてちゃんと機能しているのですから、適材適所です。
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