そもそも、倶楽部って何?クラブハウスはどんな場所なの?
ゴルフデビューする際に大きな問題になるのが、ゴルフコースのドレスコードでした。
“でした”と過去形にしたのは、最近では「あまり気にしていません」という声も聞くからです。
とはいってもゴルフをする、また続けていく中で、ドレスコード問題を完全に避けて済ませることが可能なほど、時代は新しいページまで進んでいないのも事実です。
ドレスコードというのは、簡単な例で書くと冠婚葬祭の服装マナーのようなものです。
結婚式に出席する際に、それなりの服装をするのは常識であり、多くの人が受け入れています。そういうときだけにしか着ないドレスを持っている女性もたくさんいます。結婚式に参列するためのドレスを選ぶ際、花嫁じゃない人が純白のドレスを着るのは御法度と言われています。
そういうことをグルッと含んで、結婚式のドレスコードです。新郎新婦の父親は正装ということで、モーニングやタキシードを着ることもよく見られます。それぞれにちゃんとした理由や伝統がありますが、多くの場合はただ慣習に従って、頑張っちゃうわけです。
ゴルフは冠婚葬祭じゃないよね?という疑問の声も聞こえてきます。その通りです。では、どうしてドレスコードがあるのかを説明します。
ゴルフコースのドレスコードを理解して楽しめるようになるには、まずはクラブハウスとは何なのか?を知る必要があります。
打つ方のクラブと混同しないように、コースのほうは倶楽部と書きましょう、という時代がありましたが、倶楽部を知ると少し見えてきます。
歴史を辿ってみよう
諸説ありますが、トランプの『クラブ』のマークは、こん棒がデザイン化されたものだという説があります。こん棒は、中世の隠語で『男性』を意味していたそうです。
18世紀末からゴルフブームが起きてゴルファーが増えた際、ゴルフコースが足りなくなり、新設のコースが一気に増えます。この時に利用されたのが倶楽部、という概念です。
倶楽部は、仲間を集めて自分たちのゴルフコースを持とうとか、既成のコースをホームコースとしてのスタート枠を維持しようとか、そういう意図で組織されていました。入会資格の第一は男性であることだったので、「男性だけの集まり=クラブ」とされたというわけです。
当時の男性にとっても、同性の仲間だけで秘密基地を作るような感覚は、日常の”柵”を越えて特別な空間に逃げ込めるゴルフとリンクすることで、どんどん進化して増殖していきました。
秘密基地に入れるのは、仲間だけです。入会の審査はどんどん厳格になっていき、見た目で仲間だとわかるよう、合言葉的なユニフォームの工夫も始まりました。この工夫が、約200年過ぎた現在でもゴルフ倶楽部のドレスコードとして残っているのです。
倶楽部の仲間として、相応しいかどうか?服装というアイテムで見定めるのです。仕事着ではなく、普段着でもなく、余裕がなければ所有できないアイテムほど、仲間の証として重宝されました。
どうしてブレザー?襟付き?シャツイン?
それはドレスコードには、余裕があるか、品位があるか、窮屈な装いでも我慢できるかという、仲間としての資格を精査する意味合いがあったのです。
考えてみてください。自分たちのオシャレな遊び場に、場違いなダサいスーツで来場した人がいたら、その人はその場の空気を乱す人かもしれない、と警戒する気持ちになるのと根本は同じです。
倶楽部の仲間同士がバカ(おふざけ)をやっても、外には一切漏れない秘密の空間がクラブハウスだったのです。絶対の秘密保持が約束されている空間は、自然と閉鎖的になっていきます。入り口でドレスコードをチェックされるのは、当たり前です。
中に入りたい人たちは競って、自分は資格があるのだと証明しようと躍起になったのが、クラブハウスの歴史です。
前置きが長くなりましたが、今回はクラブハウス内のドレスコードについて書きたいと思います。
ゴルフコースのドレスコードが絶滅してしまう、という噂は本当か?
「ゴルフコースのドレスコードなんて、もう少ししたらなくなりますよ」と言う人たちがいます。
半分本当で、半分は嘘です。
ゴルフコースのドレスコードは倶楽部のための、倶楽部の決まりですから、倶楽部が消えていけば失効する運命です。倶楽部はどんどん減っていますので、ドレスコードが無効化されていく流れの中で、僕らはゴルフをしているのです。
そもそもリゾートコースでは、名門の倶楽部であっても、ドレスコードなしという歴史を持っているところもあります。また、現在でも、レストランの入場時には上着がなければダメ、というコースもあります。プレー後にクラブハウスに戻ったらロッカーに行き、上着を羽織ってレストランに行くのです。食事が終われば逆行して、上着を戻してコースに出ます。
どちらも、日本を代表するような経済人を中心としているメンバーシップのゴルフコースです。どんなに偉い人でも、無名の三世会員でも、決まりごとの前ではみんな平等なのです。コースの特性に合わせてちゃんと機能しているのですから、適材適所です。
日本文化の反映
日本は着物文化の国で、洋装は輸入された借り物だという考え方があります。ドレスコードも、その存在意義や理由を突き止めていくと、ボロが出るものばかりです。
それでも、個々のコースのドレスコードを守るべきだという主張が正義だと判断されるのは、本当に不思議なのですが、僕はロマンチックに考えています。
秘密基地を守りたいという子ども心は尊いので、正義として守ろう、です。
理由なんてどうでもいい、ダメなものダメ、という日本の文化が反映しているとも考えられます。秘密基地防衛タイプのドレスコードは減ってきていますが、この基準をクリアしていれば、ある意味で怖いものなしというレベルになるのです。
黒いスーツがあれば、結婚式も葬式も、その他の儀式も、原則としては大丈夫というパターンと一緒です。
箇条書きにしてみれば、クラブハウス内のドレスコードは簡単です。
● ジャケット(ブレーザーのみというコースでも、最近はスポーツジャケットでOKになっています)
● 襟付きのシャツ(そのままプレーできるポロシャツでもOK)
● ウールかそれっぽく見える素材、または綿かそれっぽく見える素材の長ズボン(素材に注意)
● 革か、それっぽく見える素材の靴(素材が大切)
クラブハウス内のドレスコードは、つまりは、入り口のチェックをクリアするためのものです。
昭和の頃は、自信がなければスーツで来場して、ロッカーで着替えろ、と教える企業もありました。ファストファッションのブランドなら、簡単に全てが揃います。セールなどを上手く利用すれば、1万円でお釣りがきます。
冠婚葬祭用の黒いスーツだと思えば、楽勝なのです。
ゴルフができるのであれば、ドレスコードを我慢するなんて微々たるもの!
若者ゴルファーとドレスコードの話をしていたときに、感心した言葉がありました。
「ゴルフは大人の遊びで、それに参加していると理解すればオールクリアになるんですよ」
僕の冠婚葬祭の服装という話を聞いて、彼はそう言ったのです。
「ゴルフができるのであれば、ドレスコードの我慢なんて微々たるものだと思う」
僕は口癖のように話して、彼と意気投合したのです。
いろいろと事前に調べたり考えるのが面倒臭いからと、冠婚葬祭用の黒スーツ的な服装でコースに出向くというゴルファーもいます。ロッカーでプレーする服装に着替えることが、”ゴルフが始まる”というスイッチになっているというゴルファーもいます。
しかし、現在の日本のゴルフコースの多くは、プレー中のドレスコードとクラブハウス内のドレスコードが一緒になっています。事前に調べても、「ゴルファーらしい服装でお願いします」程度しかわからず、コースに行ってみても、張り紙などでドレスコードを掲示していないコースのほうが多くなったように感じています。
注意されないからといって自由にするというのは短絡的で、それでは大人の遊びに参加する資格がありません。自由になればなるほど、本当は不自由になるのがゴルフシーンでは当たり前であり、そこが面白いところなのです。
僕はドレスコードのことをいろいろなところで書いている関係で、注意して恥ずかしくないように振る舞っているつもりですが、若者ゴルファーを見ていて拍手をして讃えたくなることが多々あります。
ゴルフウェアというオシャレを楽しむのも、ゴルフの面白さだと考えている雰囲気が伝わるからです。
先日、比較的ドレスコードが厳しく、トップスの裾を出している男性に対してしっかり注意するゴルフコースの支配人に話を聞いて、納得したことがあります。
「裾出ししているのは、40〜60代の中高年のお客様が圧倒的に多いですね。若いお客様の来場も増えてきていますが、裾出しを注意したことはほとんどありません」
オシャレに敏感な若者ゴルファーからみれば、男性の裾出しは、カッコ悪いオジさんゴルファーを象徴する着こなしになるのです。
スマホでいつでもどこでも画像や動画を記録できる現在。若者ゴルファーは、“撮るゴルフ”も楽しんでいます。画像は嘘をつきませんので、自分を客観視できるから、若者ゴルファーのゴルフウェアの着こなしのレベルはどんどん上がるのだと思います。
クラブハウス内のドレスコードに厳しい厳格なゴルフコースは、少数派になっています。2023年現在、クラブハウスが大人の秘密基地として機能しているコースは、絶滅寸前です。
しかし、クラブハウスがなくなったわけでありません。秘密基地的な遊び方ができるかどうかは、場所よりも、誰とするかが何倍も重要なのだと思いだしてください。
クラブハウスは上手く使えば、秘密基地的な楽しみ方ができる空間です。大人の遊びとして、ゴルフを味わい尽くすのであれば、変身するようにオシャレを楽しむという分野もクリアして、クラブハウスも楽しむことを強くオススメします。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


