どうしてゴルフ場にはドレスコードがあるの? 襟付きを着なきゃいけない理由と背景
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第60回
日本文化の反映
日本は着物文化の国で、洋装は輸入された借り物だという考え方があります。ドレスコードも、その存在意義や理由を突き止めていくと、ボロが出るものばかりです。
それでも、個々のコースのドレスコードを守るべきだという主張が正義だと判断されるのは、本当に不思議なのですが、僕はロマンチックに考えています。
秘密基地を守りたいという子ども心は尊いので、正義として守ろう、です。
理由なんてどうでもいい、ダメなものダメ、という日本の文化が反映しているとも考えられます。秘密基地防衛タイプのドレスコードは減ってきていますが、この基準をクリアしていれば、ある意味で怖いものなしというレベルになるのです。
黒いスーツがあれば、結婚式も葬式も、その他の儀式も、原則としては大丈夫というパターンと一緒です。
箇条書きにしてみれば、クラブハウス内のドレスコードは簡単です。
● ジャケット(ブレーザーのみというコースでも、最近はスポーツジャケットでOKになっています)
● 襟付きのシャツ(そのままプレーできるポロシャツでもOK)
● ウールかそれっぽく見える素材、または綿かそれっぽく見える素材の長ズボン(素材に注意)
● 革か、それっぽく見える素材の靴(素材が大切)
クラブハウス内のドレスコードは、つまりは、入り口のチェックをクリアするためのものです。
昭和の頃は、自信がなければスーツで来場して、ロッカーで着替えろ、と教える企業もありました。ファストファッションのブランドなら、簡単に全てが揃います。セールなどを上手く利用すれば、1万円でお釣りがきます。
冠婚葬祭用の黒いスーツだと思えば、楽勝なのです。
ゴルフができるのであれば、ドレスコードを我慢するなんて微々たるもの!
若者ゴルファーとドレスコードの話をしていたときに、感心した言葉がありました。
「ゴルフは大人の遊びで、それに参加していると理解すればオールクリアになるんですよ」
僕の冠婚葬祭の服装という話を聞いて、彼はそう言ったのです。
「ゴルフができるのであれば、ドレスコードの我慢なんて微々たるものだと思う」
僕は口癖のように話して、彼と意気投合したのです。
いろいろと事前に調べたり考えるのが面倒臭いからと、冠婚葬祭用の黒スーツ的な服装でコースに出向くというゴルファーもいます。ロッカーでプレーする服装に着替えることが、"ゴルフが始まる"というスイッチになっているというゴルファーもいます。
しかし、現在の日本のゴルフコースの多くは、プレー中のドレスコードとクラブハウス内のドレスコードが一緒になっています。事前に調べても、「ゴルファーらしい服装でお願いします」程度しかわからず、コースに行ってみても、張り紙などでドレスコードを掲示していないコースのほうが多くなったように感じています。
注意されないからといって自由にするというのは短絡的で、それでは大人の遊びに参加する資格がありません。自由になればなるほど、本当は不自由になるのがゴルフシーンでは当たり前であり、そこが面白いところなのです。
僕はドレスコードのことをいろいろなところで書いている関係で、注意して恥ずかしくないように振る舞っているつもりですが、若者ゴルファーを見ていて拍手をして讃えたくなることが多々あります。
ゴルフウェアというオシャレを楽しむのも、ゴルフの面白さだと考えている雰囲気が伝わるからです。
先日、比較的ドレスコードが厳しく、トップスの裾を出している男性に対してしっかり注意するゴルフコースの支配人に話を聞いて、納得したことがあります。
「裾出ししているのは、40〜60代の中高年のお客様が圧倒的に多いですね。若いお客様の来場も増えてきていますが、裾出しを注意したことはほとんどありません」
オシャレに敏感な若者ゴルファーからみれば、男性の裾出しは、カッコ悪いオジさんゴルファーを象徴する着こなしになるのです。
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スマホでいつでもどこでも画像や動画を記録できる現在。若者ゴルファーは、“撮るゴルフ”も楽しんでいます。画像は嘘をつきませんので、自分を客観視できるから、若者ゴルファーのゴルフウェアの着こなしのレベルはどんどん上がるのだと思います。
クラブハウス内のドレスコードに厳しい厳格なゴルフコースは、少数派になっています。2023年現在、クラブハウスが大人の秘密基地として機能しているコースは、絶滅寸前です。
しかし、クラブハウスがなくなったわけでありません。秘密基地的な遊び方ができるかどうかは、場所よりも、誰とするかが何倍も重要なのだと思いだしてください。
クラブハウスは上手く使えば、秘密基地的な楽しみ方ができる空間です。大人の遊びとして、ゴルフを味わい尽くすのであれば、変身するようにオシャレを楽しむという分野もクリアして、クラブハウスも楽しむことを強くオススメします。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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