スポーツするような動きやすい服装がドレスコード違反なのは、どうして?

ゴルフコースのドレスコードは実は二刀流で、(1)クラブハウスに入る際にチェックされるものと、(2)着替えてプレーする際のものの二種類が厳密には存在します。2023年時点では、(2)のプレーする際のものだけが存在するコースのほうが多くなってきています。

動きやすいスポーツウェアでもいいはずなのに、ドレスコードでは禁止しています。ゴルフの歴史に敬意を払って接しようという、基本的な概念があるからです。

ゴルフには、少なめに考えても500年を楽に越える歴史があります。ゴルフが生まれた時代には、スポーツなんて概念はなかったのです。昔のゴルフの絵画にはジャケットとネクタイでゴルフをしている姿が書かれていますが、単純にそれ以外の相応しい服装がなかったのです。

そういう先人たちが、不自由を我慢してゴルフを伝えてくれた名残が襟付きシャツという伝統だと考えれば、そのぐらいはいいかと思えてくるのです。

Gパンのようなカジュアルすぎる服装がNGというのも、ゴルフコースは現実を忘れて楽しむための空間だという昔からの慣習を守るために生まれたのです。

Gパンは労働者の作業着だった歴史があるので、労働を想起させるものとして相応しくない、と考えられました。数十年前まではセーターも、アイルランドの漁業労働者の防寒着(アランセーター/フィッシャーマンセーター)だった歴史があることからNGだったのです。

公的な場で行われるゴルフシーンで、イギリスの王室関係者が着用してゴルフをプレーするとその服装がゴルフウェアとして認められるという、暗黙の了解が現在でも続いています。セーターも、そうしてOKになったのです。

僕らが生きている間にも、新しく認められる服装があるかもしれません。

ゴルファーは美学という絆で繋がっていることを、ドレスコードが教えてくれる!

シャツの裾を出して着る「シャツアウト」はおじさんのゴルフウェアの象徴で”カッコ悪い”と若者ゴルファーが言ったと書いたら、それを読んだ僕の周辺のオジさんゴルファーたちは、一斉にシャツインするようになりました。

シャツインは、ドレスコードの着こなし部門の代表的象徴です。

オジさんゴルファーたちはカッコイイと思ってシャツアウトしていたので、よく見られたいという純粋な気持ちはカワイイのです。つまり、自分が楽だからということではなく、他者にどう見られるか?というのが服装の役割だということです。

嘘のような怖い話

バブル期の真夏のある日、僕が通っていたゴルフコースで大事件が起きました。スタートした直後にゴルフウェアを脱ぎ、男性が海パン一丁、女性も水着でプレーした組がいたのです。

「ウェアの形に日焼けしちゃうし、暑いから脱いだだけだよ。クラブハウス近くに行ったらゴルフウェアを着るから、いいでしょう?」と、海パン男は言ったそうです。

コーススタッフは毅然と、「ドレスコードを守ってもらえないなら、今すぐに退場してもらう」と宣言、彼らは渋々ゴルフウェアを着てプレーを続けたということでした。

この手の、自分の都合だけを押し付ける嘘のような怖い話はバブル期だけではなく、令和でも生まれています。

ドレスコードは、各コースのローカルルールです。みんなで一緒に我慢しようねという美学が、ゴルフという文化にとってとても大事なのです。

自己申告で審判がいないゲームは、欲望との戦いに負けないことが大前提ですから、服装の決まりを我慢することぐらいで音を上げるなんて論外です。

そのような信頼関係の入り口が、プレー中のドレスコードだと言えるのです。

ドレスコードは、キャラクターになりきるコスプレだと考えれば楽しめる!

男性のドレスコードは、こんな感じが原則となっています。

● 襟付きシャツをシャツインすること
● ウール、または綿、それらに見える素材のスラックス形式のズボン
●一般的な意味で不快なデザインやカラーは禁止

女性は本来同じではありませんが、日本では不勉強な偉い人が面倒臭がって、スカートはOKだけどあとは同様にお願いします、となってきました。

不快とされるデザインの中には、戦争を連想させる迷彩柄、威嚇するような毒虫カラー、下着のような短パンやホットパンツもNGに入るようです。

令和のゴルフブームで若者ゴルファーを見て感心するのは、ゴルフウェアを楽しむのがとても上手なことです。ドレスコードはコスプレのようで楽しいという発想は、オールドゴルファーたちにはないものです。

自分がなりたい、もしくは好きなゴルファーになった気分を味わうために最も簡単な方法は、服装を真似することです。

コスプレで理想に近づいてゴルフをより楽しめるのであれば、一石二鳥です。プレー中のドレスコードは、知らないうちに新しい時代を迎えたのかもしれないと、最近は感じるのです。




篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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