なんでこんな形なの?と酷評されたキャスコ「パワートルネード」が爆発的ヒット!ネーミングの由来はあの野球選手!?
【第29回】商品開発はドラマ!ゴルフ界に旋風を巻き起こし新スタンダードを築いたUTの代名詞!
ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話を、メーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はPOWER TORNADO(キャスコ)が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.612/70〜71ページより
写真/ゴルフトゥデイ編集部 取材・文/嶋崎平人
四国香川でグローブからスポーツ事業をスタート!
自社開発・製造にこだわり独自の製法&素材で名器を世に送り出した「キャスコ」
キャスコといえば「パワートルネード」を思い浮かべるほど、メーカーの代名詞となったブランド。発売当時、ロングアイアンの打ちにくさを解消するやさしいクラブをして話題に。
キャスコ株式会社の企業理念の一つに次のような思想がある。『「新発想」「新素材」「新技術」で変化にスピーディに対応し、新たな価値を創造します。』というものだ。キャスコは、独自の技術で自社開発・製造し、オリジナリティのあるクラブを世に送りだし、この言葉を体現している。
その中でも、キャスコと言えば、1999年に発売され爆発的なヒット商品となったユーティリティ(UT)「パワートルネード」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
そんなパワートルネードの商品開発について、キャスコ株式会社常務執行役員、開発・企画部・部門長、藤原正彦氏にお話を伺った。
初代モデル開発当時、シャフト開発の担当をしていたという、キャスコ株式会社常務執行役員、開発・企画部・部門長 藤原雅彦氏。
キャスコは1959年、四国香川県で高級ドレス手袋の製造販売の「鎌田利商店」として創業した。1962年からスポーツグローブの研究に着手、5年後にはドレス手袋から撤退してスポーツグローブに特化し、ゴルフグローブを軸にバッティンググローブ、乗馬、テニス用グローブの開発・販売を開始。
これがスポーツ事業のスタートであった。
1994年にはクラブ用素材として高強度のスーパーハイテンを自社開発。他社と差別化を計ることが、爆発的ヒット商品の開発につながった。
1992年から自社一貫生産によるクラブを発売し、社名をキャスコ株式会社へ変更し、1994年にはクラブ用素材として高強度のスーパーハイテンを自社開発。
クラブ製造のステンレス鋳造設備も自社工場を有しており、「これまでのステンレスでは他社と差別化できないため、ステンレスに変わるもっとよい新しい素材がないか」と研究した成果である。
この合金の特許も持っており、「自社工場がなかったら生まれなかった素材」だと藤原氏は語る。この素材があったからこそ、新しいUTの開発につながった。
「パワートルネード」誕生まで
低重心を実現するために、当時のUTにはないスルーボア構造を採用。藤原氏は「シャフトが見えるソール部分の商品としての仕上げに苦労した」と話している。
当時のゴルフクラブは特にロングアイアンが打ちにくく、各社がフェアウェイウッドとロングアイアンの中間のクラブであるUTの開発に着手していた。
キャスコは鋳造を含め自社工場を持っており、さまざまな形状を試作することができたため、ヘッド開発担当者がいろいろなプロトタイプを試しながら、球が上がりやすく、グリーンにキャリーで乗せて止まり、さらに多様なライから抜けがよい独自のマルチソールをつくりあげていった。
その試作品の数は、基本の3〜4種類をベースに、実に20以上にのぼるという。また、低重心を実現するために、当時のUTにはないスルーボア構造を採用した。
藤原氏は当時このシャフトの開発担当で「シャフトの強度については自社生産の設計ノウハウがありあまり苦労はしなかったが、シャフトが見えるソール部分の商品としての仕上げに苦労した」
また、「ヘッドはスルーボア構造なので、通常ネックならばライ・ロフト等の微調整ができるが、その余地がないため、シャフトを貫通する孔の精度を上げることに苦労した」と新しいモノづくりの難しさを振り返る。
これまでにない高反発&低重心を実現し、大きな慣性モーメントを持つやさしい名器「パワートルネード」は、キャスコ独自のスーパーハイテンという素材、スルーボア設計により誕生したというわけだ。
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1999年初代デビュー。プロアマ問わず人気を博し一躍新定番を構築!
性能に満足できる試作品が完成し、最初に当時の社長に見せた時のこと。今までにない形状に「こんなもの売れるわけがないだろう」と酷評されたというが、しかし実際に打つと、やさしく球が上がり、プロのトーナメントに持っていくとすぐに使いたいとの声が上がった。
次第に社内でも「これは売れるのではないか」と風向きが変わると、契約外のプロも使用するようになり、評価が高まった。とはいえ、実は「プロ用のシャフトはまだ開発していなかったので、チップカットして対応した」というから、その人気の急加速ぶりがよくわかる。
発売は1999年10月で、価格は1本4万8000円。スペックに関してはロフト16度で41.5インチ、19度は41インチ、22度は40.5インチ、フレックスはRとSをラインナップした。
番手は従来であれば、#3、#4、#5となるところだったが、例えば#3FWと#3Iの中間のクラブという意味を込めて#33とダブルナンバーを採用した。キャディさんがクラブをわかりやすいようにとの配慮もあったのだそう。
累計150万本を超える大ヒットブランドに
「パワートルネード」という名前の由来は、竜巻(上がる)という意味で製品の特徴を表す言葉であると同時に、当時、大活躍していた野茂英雄の代名詞が「トルネード」であり、言葉の印象の良さも決め手だったとか。
発売当初は、ユーザーからもなんでこんな形なの?との声があがったが、打ってもらうとその性能の良さが評価され、トップアマの多い九州地区から火が着きはじめた。発売から半年もすると業界全体へ反響が広がり「よく売れました」と藤原氏がつぶやく。
自社生産のため人員を増やして残業し、アベレージで月1万本、最大で月3万本まで生産したがそれでも追いつかない状況に。また米国でも高評価を受け、リー・トレビノが使用した。番手も#77、#99と増えて、2年間で20万本以上のヒット商品となった。
さて、一度聞いたら忘れない、ネーミングの由来とは一体何か!?
商品化する中で、5人の開発メンバーが商品のネーミングを検討。「トルネード」とは、球が上がりやすい、竜巻(上がる)という意味で、製品の特徴を表す言葉であると同時に、当時、メジャーリーグで活躍し大フィーバーを巻き起こしていた野茂英雄の代名詞でもある「トルネード」というワードが持つ印象の良さとインパクトを加味。
トルネード+パワーで「パワートルネード」に決定したという。その名のとおり、ゴルフ界に旋風を巻き起こし、最新モデルである11代目「UFO by POWERTORNEDO」まで累計で150万本以上を数える大ヒットブランドに成長。いまやUTのひとつのスタンダードになっている。
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