高齢者ドライバーの事故はゴルフコースでも起きている

「こんな車の駐め方、初めて見ました」といって見せてくれた画像には、ゴルフ場の駐車場で目安となるラインを無視して駐車している、傷だらけの白いセダンが写っていました。異質だったのは、ライン通りに駐めれば本来なら4台駐車できる場所に、その白いセダンはラインとほぼ直角の横向きに駐まっていたのです。これは迷惑だね、と同情しました。

車の持ち主は、そのコースの古参のメンバーで90歳近い高齢者ゴルファーだったそうです。ハーフしかゴルフをしないので、終了後に駐車場に同行してもらって注意をしたところ、「自分がこんな馬鹿なことをするわけがない!誰かが車を動かしたんだ!」と顔を真っ赤にして激高し、取り付く島もない状態だったとのこと。

真相はわかりませんが、こういうような高齢者ゴルファーのトラブルが増えているそうです。

ややっこしい“ドライバー”

別のコースのオーナーは、ゴルフコースで高齢者が大きな事故を起こす前に年齢制限を設けるしか対策はない、と真面目に話していました。

さまざまな事情により車を運転しなければならないケースがあることを考えると、高齢者ドライバーの事故はやるせない気持ちになります。本人だけですむ事故のみならず、被害者が出る事故も増えています。こういう事故がゼロになるように、心から祈るしかありません。

ここでは「高齢者」と書きましたが、見出しなどで字数の制限があると「高齢」と略されることが多々あります。これが、なんともややっこしい。

「高齢者ドライバー」なら読み違えませんが、「高齢ドライバー」になると、運転者の意味のドライバーではなくウッドの一番のドライバーを連想して、読み違いをしてしまうのです。これは、ゴルファーのあるある話でしょう。

高額ドライバーが暴走し大叩き!?なにそれ?

「ドライバー暴走」というと、車が時速200キロでぶっ飛ばすシーンや、あおり運転で迷惑をかけているシーンを連想します。頭に高齢がつくと、不幸な事故があったのだろうか、と気分が沈みます。いずれも自動車と運転者の話です。

しかし、それを「高額ドライバー暴走」と読み違えると、数年前に見た事件とリンクします。

1本12万円超えのセミオーダーのドライバーを、清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入した知人がいたのです。ドライバーが苦手で、何年も悩んだ末の決断でした。知人は4週間たっぷりと練習場で打ち込んで慣らしを終え、いざ自信満々、高額ドライバーのデビューラウンドへ。僕もご一緒することになりました。

数年前に目撃した「高額ドライバー暴走事件」

知人は、スタートホールではボールを探しに行くのが難しいぐらい大きく曲がってOB。打ち直しはチョロ…2番は左ドッグレッグで最高のショット。しかし、飛び過ぎて突き抜けてOB。左にショートカットを狙って打ち直したボールは当たりが弱く、手前の池に消えました…。期待が大きかった分、失望が大きくなるのもゴルファーのあるある話です。

初級者のようなスコアになることが確定した知人は、難ホールとして有名な池絡みの9番でも池にボールを献上した瞬間、意図的なのか事故なのかは見ていなかったのでわかりませんが、ドライバーが手から離れてひゅーっと池の縁まで飛んでいったのです。

キャディが、ひっ、と短い悲鳴を上げました。その知人は、静止するキャディを無視して池の縁に無言でずんずん歩いて行って、泥だらけになってドライバーを救出しました。同伴者は言葉を失ったまま、知人を見つめるしかありませんでした。

知人は、「地クラブだけに、土まみれ池まみれ」と、イマイチ意味のわからないことを言いながら大笑いをしたのです。僕には彼が泣いているように見えました。あと30数回、分割の支払いがあると聞いていましたから、そう見えただけなのかもしれません。泥々になったドライバーはその後どうなったのか、聞いていません。

これが、僕が見た「高額ドライバーの暴走事件」でした。

憧れの高級ドライバー大事故!お金でスコアは買えず?

2023年、値上げの嵐が吹き荒れて多くの人たちが苦しんでいます。ゴルフも例外ではなく、さり気なくいろいろなものが値上がりしています。ドライバーもそのうちの1つです。大手メーカーの新製品ドライバーは、軒並み10万円前後になりました。

「高級ドライバーは、やはり飛ぶのですか?」と聞かれることがあります。中古店で購入したドライバーしか打ったことがない人が増えているそうですが、自分たちの知らない世界のことをたずねる感じで聞いてくるわけです。

「お金でスコアを買うのは難しいですが、飛距離はお金で買えます」と答えています。

先日、高級ドライバーを買って絶好調だという友人と一緒にゴルフをした時のことです。

友人は何を思ったのか、ティーイングエリアのティマーク近くにアドレスをしたのです。本人は、ティマークの上を通そうとしたのだと思いますが、ショットの際、チンッという音がしました。擦ってしまったのです。見せてもらうと、フェースの下部もえぐれたように凹んでいて、ソールには線状の大きな傷がついていました。

彼は動揺して、絶好調だったはずのドライバーショットも、ゴルフそのものも散々でした。過去5年間で、最低のスコアだったそうです。高級ドライバーで大惨事、本人の油断が原因か!という感じです。

ドライバーは、本当に罪なヤツです。人を狂わせる悪魔のクラブだという説もあります。高額のものも高級なものも、買う人がいるから作られているのです。支払った分だけ仕事をしてくれればいいのですが、なかなか商談成立にはならないようです。

そういうところもゴルフの面白さ、です。だからゴルフはやめられません。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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