有名人のゴルフは苦労が多いが昭和の大スターはレベルが違った?
政治家や芸能人などの有名な人たちは、普通にゴルフをしたくともなかなか思い通りに行かないようです。特に人気商売に分類される有名人は、常に人の目を気にしながら好印象を維持しつつゴルフをすることになるので、ストレスが多いのです。
昭和の終わりに、誰も知っているような大スターをゴルフコースで見たことがあって、感心しました。
彼は握手を求められれば握手をして、一緒に写真を撮ってとお願いされても嫌な顔をせずに対応して、求められればスコアカードにもサインをしてファンサービスしていました。練習グリーンにパターを持ってきたのに、結局1回も打たずに、スタート時間になってしまったのを見て、こういう努力をしているから大スターなのだと思ったのです。
食事中も周りに配慮しファンサービス
さらにすごかったのは、レストランでの対応です。サンドイッチを片手間に食べながらビールを飲みつつ、「配膳するスタッフとぶつかると危ないから、こちらに並んでよ」と群がる人たちの交通整理をして、後半のスタート時間ギリギリまでファンサービスしていたのです。
後でコースの支配人から聞いたのですが、それ以外にも従業員用に色紙に50枚サインをしてくれたそうです。その代わり、プレー代と食事代は無料にしたそうですが、それで貸し借りなしになるバランスなのかは疑問です。本人は「お騒がせして申し訳なかったね。でもね、ファンあっての自分だから」と笑っていたと聞きました。
真逆の対応をするスターも見たことがあります。マネージャーみたいな人が守っていて「プライベートなので。事務所の決まりでサインも写真もできません」とガードしていました。「何だか偉そうで、テレビと違うなぁ」「嫌いになったわ」と評判を落としていましたが、ファン層が違うので問題なかったのかもしれません。
いずれにしても、自由に、かつ、普通にゴルフができないのは可哀想です。
プライベートを守るために特別室は生まれた!
「○○で撮影があるんだけど、近くに特別室があるゴルフコースを知ってる?」業界関係者から聞かれることがあります。
特別室があるゴルフコースは少数ですが、日本中のあちらこちらにあります。色々なパターンがありますが、基本は、ホテルのセミスイートのような個室のことを特別室と呼んでいるのです。着替え、食事、トイレとお風呂、3組ぐらいのパーティーができるスペースというのが、特別室の内容になります。つまり、クラブハウスの機能が一部屋で済むようになっているのです。
特別室までの動線も、一般の来場者と触れることがないようにデザインされていることが多いので、有名人だと騒がれずにゴルフができるのです。
特別室は元々、コースのオーナーが特別な接待用に作ってそれが広まったと言われています。有名なホテル系列のゴルフコースが、お忍び用に各クラブハウスに秘かに設置したことが特別室の業界内の知名度を上げました。
前後の組をお付きのスタッフなどがプレーするようにしてガードすれば、ゴルフをしているところも一般の人には見つからないのです。ボールを曲げて隣のコースに行って遭遇してしまうことがありますが、多くの場合、そんなところで会えるとは思っていないので「アイドルの△△にそっくりな人がいた」で済んでしまうというわけです。
時代は変わっても特別を好む人たちは消えない!
バブルの頃に、特別室の数はピークを迎えました。その結果、有名人ではないのに特別なことが大好きなお金持ちも特別室を利用するようになりました。
政治家や芸能人などが、特別室を使用しても特別な料金は発生しない慣習でしたが、お金持ちの場合は特別な利用料金を請求することで特別室のステータスを上げようという思惑がコースサイドにはありました。バブル当時の特別室の使用料は、高いコースだと100万円、安くともプレー代以外に20万円ぐらいが相場だったそうです。
そもそも有名人のプライベートを守るのと同時に、有名人がいることで騒がしくなるという迷惑を一般のゴルファーにもかけないことが特別室の存在意義です。
21世紀になり、ゴルフコンペが減ってコンペルームという個室を使わなくなるゴルフコースが増えていく中で、特別室だけは稼働し続けました。令和の時代になって、特別室だけしかないクラブハウスを持ったゴルフコースも生まれています。
個室で自分たちだけの空間を楽しむ気軽さに見合うお金が発生するのは自然なことだと納得して、そういうクラブハウスを求める人たちは多くはありませんが、いつの時代も一定数いるのです。
あなたはどちらが好み?
特別室があるコースに電話をして、使用したいと申し込んだのに「うちにはそのような施設はありません」と断られたと憤っている人がいました。特別室は特殊な空間で、それを使うことを許された人しか使えないから価値があるのです。お金持ちでも、資格がないと判断されればそれまでです。
さて、強がりでも何でもなく、騒がれずに普通にゴルフができることは幸せなことです。有名人の苦労を知れば、それは当たり前ではないのだと感謝すらしてしまいます。
特別室は、仲間だけの濃密な空間で楽しいかもしれませんが、僕は偶然にその日に出逢った知らないゴルファーたちを感じながらゴルフをするのが大好きです。ゴルファーの数だけ大なり小なりの喜怒哀楽がゴルフに詰まっていることを実感できるからです。
僕にとっては、たくさんのドラマが交差する大部屋みたいな空間でゴルフができることが特別なのです。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。




