自動精算機が好きな人、嫌いな人、ゴルフに直接関係ないからこそ恐惶謹言!

40代の男性ゴルファーが言いました。
「自動精算機で朝チェックインしてて、帰りも清算できるコースのほうがスコアが良いような気がするんですよ」

聞いたことがない話だったので興味を持ってよくよく聞いてみると…知らない人に対面で対応してもらうのは少し緊張したり、相手が不機嫌だったりすると嫌な気持ちが伝染するというのです。それがゴルフに影響してスコアに出る、というわけです。

彼はバリバリの営業マン。意外な一面を持っているのだと感心しながら、自動精算機が好きだという人は実はたくさんいるのかもしれない、と思ったのです。

自動精算機を扱っている会社に取材しました

2023年の時点で正確な数字は不明ですが、業界の感覚としては日本のコースの25%ぐらいが自動精算機を採用しているそうです。

「あれ、嫌だよね。フロントも同時に使えるところだと、100%フロントでの対人の清算を選ぶよ」というゴルフ仲間が、僕の周囲では圧倒的多数でした。ちなみに、僕もほぼ同じ意見です。
「時間がかかるんだよ。よくわからないから慎重になって、余計に遅くなる。後ろに人が待っていると焦るから、失敗して最初に戻ったりするんだよね」

自動精算機への評価は、サービスの低下だと考える人が多いような気になっていましたが、4分の1のコースで採用されている現実や、使い慣れれば対人よりも早く清算できる利便性を考えると、自動精算機を歓迎するほうが多数派になっていくのかもしれません。

ゴルフコースがブラック企業にならないためには、不可欠なもの?

自動精算機を採用しているコースにも色々と聞いてみました。

ちょっとビックリしたのは、話を聞いた4つのコースは全て違う系列のコースでしたが、全コースがフロントでのサービスを希望する客には対応しているということでした。100%自動精算機というわけではないのです。

自動精算機を採用した最大の理由は、同じでした。従業員の負担を減らすためだそうです。朝6時半に出社して7時からフロントに立っている社員を14時半に帰宅させるために、清算のフロント業務を機械化することは時代の要求とのことでした。早番と遅番のシフトで対応していたコースは、人員を半分は無理でも、3分の1は減らすことができるという点も経営的には魅力だったそうです。ただ、一人の人件費よりも機械のリース代のほうが安いと聞くと、ちょっと寂しい気持ちになりました。

「今はね、どこもブラック企業って言われないように必死なんだよ」話を聞いたコースの中で、自動精算機をフル活用しているコースのオーナーが言っていました。

人の温もりが感じられるからこそのゴルフなんだよ

色々な事情はわかりました。自動精算機のメリットはゴルフコース業界を飲み込んでいき、近い将来にそのシェアは過半数に達するのだと感じました。

ゴルフコースのスタッフも楽ができて、来場するゴルファーも慣れてしまえば簡単で時短にもなるのでしょう。面白いのは、それを「平等になる」と表現したグループがいたことです。従業員は人間なので、どうしても相手を区別してしまうが、機械にはそれがないから平等だというわけです。

コースのスタッフは、客であるゴルファーとゴルフを通して気持ちが通じ合えれば、気持ち良く接することができます。一方、どんなにコースに通っていても、お金をたくさん落としていても、自分勝手で迷惑をかけていることに平気でいられる客とは、気持ちが通じ合えないのです。悲しいことに表面的には互いに笑顔でも、区別してしまうのが人間です。

前者の客と後者の客では、同じようでも同じにはできないのです。区別された側は、平等じゃないと不満に思うでしょう。触れずにわかる心の温もりは、ある意味でキャッチボールです。どちらかが一方的に投げても、受けてくれなければ成り立ちません。

懐かしむ未来がくるのだろう

ゴルフは朝には誰もが自信と希望に溢れています。スタート前の幸せです。ラウンドが終われば、十人十色。幸運に包まれている人もいれば、絶望でうつむいている人もいるのです。

清算をフロントでする場合、対応するスタッフはたくさんのドラマを見ているのです。顔を覚えるほど何度も来場している客であれば、良くも悪くもその人の本質までをも知っているのです。区別するな、というほうが無理な話です。

「昔はさ、フロントに人がいてチェックインしたり、清算してもらったりしたんだよ」
そんなふうに懐かしむ未来があるのかもしれません。その際、人の温もりを感じられて幸せだったと秘かに思えたら、ゴルファー冥利に尽きると言えます。馴染みのスタッフの顔が何人も浮かんで…。

自動精算機もいいですが、フロントでスタッフが対応してくれるのもまたいいものなのです。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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