ゴルフフォームの基本を初心者向け解説|きれいなスイング動作を習得
耳馴染みのない言葉ですが、ゴルフのフォームというのは、スイングのことです。初心者はまず標準的・一般的なスイング=フォームを理解することで、打ち方や打つときの姿がきれいになり、ひいてはナイスショットにつながってきます。他のスポーツや武術などにもお手本とされるフォームがあり、たいてい、はじめにそのフォームを教わりますが、ゴルフも同じです。
ゴルフで正しいフォームが重要である理由
野球のピッチャーは投げるときの姿・動作を「フォーム」と言うのが一般的ですが、ゴルフは打つときの姿・動作を「フォーム」と言うケースは少ないかもしれません。「スイング」と言うのが一般的です。
スポーツ、武術、バレエやピアノ、お習字など、一般的にどんなものにも基礎、もしくは基本といえる姿・動作があります。そしてこの基本となる姿・動作をはじめに教わったり、習ったりするものです。
ゴルフもこれらとまったく同じで、基本となる姿・動作=スイング(フォーム)を理解できないと、上手にボールを打つことができません。そして、スイング(フォーム)の第一段階がグリップの握り方やポスチャー、アドレスなどになり、これらをまずはじめに覚えなければならないのです。
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ゴルフフォームの基本をスイング動作別に解説
ここからは基礎、もしくは基本といわれるゴルフフォームの姿・動作について説明します。初心者の人はまずここで紹介することを理解して、スイングに取り入れるようにしましょう。
- アドレス時のフォーム
- テークバック〜バックスイングのフォーム
- トップポジションのフォーム
- ダウンスイング〜インパクトのフォーム
- フォロースルー〜フィニッシュのフォーム
アドレス時のフォーム
ボールを遠くまで飛ばしたり、狙ったところへできるだけ安定して打つためには、正しいアドレス(構え方)をつくることが大切です。
ドライバーのアドレスは、以下がポイントとなります。
- 両足の間に肩幅が収まるくらい足を広げます。
- 股関節から上半身を折ります。
- 背筋を伸ばします。
- 膝をわずかに曲げて、ツマ先側(母指球)に体重がかかるようにします。
- 両腕を自然に垂らした位置でクラブを握ります。
- グリップエンドとお腹までの間隔は握り拳2個程度です。
- フェアウェイウッドやアイアンの場合はスタンスの幅が少し狭くなります。
このようなアドレスが一般的で基本といえるものです。スクールなどでコーチやティーチングプロが、さらに細かい部分まで説明することもあります。そういったときは取り入れるようにしましょう。
テークバック〜バックスイングのフォーム
バックスイングの始点であるテークバックは体、腕、クラブを一体化させて動かす意識が大切です。バラバラに動くとクラブは理想的な軌道から外れやすくなり、ショットが不安定になるおそれがあります。
- 両肩と腕で作られた三角形を崩さずに体を右に回しながら、手首を少し折り曲げて、シャフトが地面と平行の高さの位置まで上げます。
- 肩を回転させながら、さらに腕を上げていき、トップをつくります。
バックスイングで大切なことは右足に体重をしっかり乗せていくことと、体を強くネジることです。これらが正しく行われるとインパクト時にボールへ大きな力が伝わり、飛距離アップの可能性が広がります。また方向性アップに必要なスピン量も手に入りやすくなります。
トップポジションのフォーム
トップでは、以下がポイントとなります。
- 右足におよそ80パーセントの体重が乗ります。
- 肩は80~120度回転しています。
- 腰は40~65度回転しています。
- 左肩はアゴの下に収まります。
- グリップは右肩辺りに位置します(後方から見た場合)。
- 左腕は伸び、右肘は少し曲がります。
- クラブのシャフトはターゲットライン(目標線・飛球線)と平行です。
上記がもっとも一般的なトップになるため、初心者はまずこのカタチを目指しましょう。ツアープロの試合などを観ていると体の回転量が少ない人やシャフトがトップでクロスしている人もいますが、初心者がこれらを真似るのはおすすめしません。
基本を覚えたあと、さらによいショットを打つためとか、自分にマッチしたスイングをマスターするとなったときには、ツアープロを参考にしてもいいでしょう。
ダウンスイング〜インパクトのフォーム
ダウンスイングは、両膝をアドレスの位置に戻すことから開始する、もしくは左足のカカトを踏み込んで開始するのがもっとも一般的です。
- 下半身から開始したあと、腰を左に回転させます。
- 上半身は下半身の動きに連動・追随して動きます。
- 下半身の動きでクラブが自然に下りてきてインパクトを迎えるようなイメージが大切です。
- ウィークグリップやスクエアグリップの場合は、インパクト直前にアームローテーションを行ってフェースを閉じる動作が必要になることがあります。
ダウンスイングからインパクトでもっとも大切なのは、下半身主導でクラブを下ろすことです。クラブを手や腕(上半身)の力で下ろすと、理想的といわれる軌道から外れやすくなり、さまざまなミスショットを招きやすくなるため注意が必要です。
フォロースルー〜フィニッシュのフォーム
フォロースルーは、以下がポイントとなります。
- シャフトが地面と平行の高さになるまでボールの位置を見続けるような意識をもちます。
- 体が起き上がらないように、スパインアングル(前傾角度)を維持するようにします。
- クラブヘッドを目標方向へ出すような意識をもちます。
フィニッシュは、以下がポイントとなります。
- フォロースルーのあと、下半身も上半身もさらに左へ回転していきます。
- 左足に90パーセントの体重が乗り、右足はツマ先立ちになるようにします。
- 胸やお腹は目標に正対するようにします。
フォロースルーからフィニッシュは上記がもっとも一般的です。ティーチングプロによってはフォロースルーからフィニッシュは、ヘッドの重さとスイングによって発生する遠心力に任せれば基本的にOKという人もいます。
ドライバー・アイアン・ウェッジのスイングフォーム
ドライバー、アイアン、ウェッジでスイングフォームが変わるわけではありません。どのクラブも基本的には同じです。意識的に変える必要があるのはスタンス幅とボール位置。あとは同じように振ればOKです。
- ドライバーのスイングフォーム
- アイアンのスイングフォーム
- ウェッジのスイングフォーム
ドライバーのスイングフォーム
ドライバーだからといってスイングフォームを変えたり、何かを付け加えたり、逆に差し引いたりする必要はありません。いつも通りのスイングでOKです。
ただドライバーは一般的にボールを上げるためにアッパー軌道で打つことが求められます。そしてアッパー軌道でインパクトするにはボールの位置は左足寄りのほうが効果的で、そちら側に置くのがもっともポピュラーです。
また飛距離を稼ぐために、大きくしっかり振り抜くことが求められます。そして大きく振っても体がブレないように、スタンス幅は比較的広めの人が多いものです。
初心者の多くはドライバーを握るといわゆる“マン振り”をして飛ばそうとします。こうなるとたいてい腕や手の力で振ることになり、よいスイングフォームとはかけ離れてしまうため注意が必要です。
アイアンのスイングフォーム
ドライバー同様、アイアンだからといってスイングフォームを変えたり、何かを付け加えたりする必要はありません。
ただアイアンをはじめ、どのクラブでも地面からボールを打つときの基本はダウンブローです。ダウンブローとは簡単にいうとヘッドが最下点に到達する前にボールをヒットすること。そのためにはボールはスタンス幅のセンター付近に置くのがおすすめで、この辺りに置くのがもっとも一般的です。
初心者はもちろん、アベレージゴルファーはダウンブローに打てず、ダフってしまう人が多いものです。ダフると距離が出ないため、なかなかスコアをまとめられません。まとめるためには、アイアンだからといってスイングフォームを変えるのではなく、ダフらずに打てるように練習することが大切です。
ウェッジのスイングフォーム
アイアン同様、ウェッジだからといってスイングフォームを変える必要はありません。いつも通りのスイングフォームでOKです。
ただアプローチショットは一般的にフルスイングではないことが多いため、スイングフォームが少しコンパクトになったり、小さい振り幅になったりします。しかしコンパクトになるからといって、下半身主導で振ることに何ら変わりはありません。
逆にコンパクト=小手先を使う、といった認識になると、チャックりしたりシャンクしたりと、いろいろなミスにつながるおそれが…。絶対に注意しましょう。
スイングは基本的にひとつ。クラブによってレングス(長さ)やライ角などが変わり、またボール位置やスタンス幅が変わるだけです。もしあなたがクラブによってスイングフォームを変えていたら、すぐにやめたほうが無難です。
初心者に多いゴルフフォームのNGポイント
ここでは初心者によく見られるゴルフスイング(フォーム)の間違った動き、改善すべき動きなどについてお話しします。もしあてはまることがあったら、レッスンプロなどに相談し、修正することをおすすめします。
- 体が動きすぎてスエーしている
- 手や腕の力でクラブを下ろす
- 左足に体重が移らず、右足に残ってしまう
体が動きすぎてスエーしている
初心者はもちろんですが、アベレージゴルファーの多くが、スイング中に体が動きすぎて、いわゆる「スエー」をしています。
バックスイングの開始とともに頭、右腰、右足が右方向へズレる人は非常に多いものです。なかには頭が前方へ動いてしまう人も少なくありません。ダウンスイングでは頭がアドレスの位置を越えて、さらに左方向へズレてしまう人もまた多いものです。
これら横方向のズレに加え、体が伸び上がってスパインアングル(前傾角度)のキープに支障が出ると、ボールをうまくとらえることができません。そのためまずは「スイング軸」をズラさない意識を持つことが大切です。
手や腕の力でクラブを下ろす
初心者をはじめ、多くのアベレージゴルファーは手や腕の力でクラブを下ろします。これでは切り返した途端、体が開くうえ、ダウンスイングの軌道がアウトサイド・インになる傾向が。そしてスライス弾道につながることが増えてしまいます。
スイング(フォーム)の基本は一般的に下半身リードです。ダウンスイングのスタートである切り返しは下半身が先行して動き、それに連動・追随するカタチで上半身やクラブが動きます。
この順番が守られると、ダウンスイングでクラブはインサイドから下りやすくなり、大きなスライスボールなどに悩まされることが少なくなります。
左足に体重が移らず、右足に残ってしまう
前項の手や腕の力でクラブを下ろす動作と関連していますが、初心者をはじめ、多くのアベレージゴルファーはダウンスイングで左足に体重を移すことが苦手です。つまり、ウエートシフトができず、右足に体重が残ってしまいます。残ってしまうため、フィニッシュでいわゆる「明治の大砲」になっている人をよく見かけるのです。
左足へのウエートシフトがうまくできない主な要因は、前項でも触れましたが下半身リードで切り返すことができないからです。
切り返しではまずはじめに左足へ体重を移す意識を強くもちましょう。移し方は膝をアドレスの位置へ戻す、または左足のカカトを踏み込む、というのが一般的です。
自分のゴルフフォームをチェックする方法
ここでは自分のゴルフフォームをチェックする方法を紹介します。よいスイングを身につけるためには頻繁にスイング(フォーム)をチェックして、問題点や改善すべき点などを理解しておくことが大切です。
- スマホのカメラで自分のゴルフフォームを撮影する
- ゴルフスクールやゴルフショップのスイング解析機を利用する
- スイングアプリでゴルフフォームを診断・分析する
スマホのカメラで自分のゴルフフォームを撮影する
もっとも手軽に自分自身でゴルフフォームをチェックする方法は、スマートフォンでボールを打っている姿を撮影することです。三脚やスマートフォンスタンド等があれば、ひとりでも簡単に撮影できます。友人と練習へ出かけたときは、頼んで撮影してもらいましょう。
スイング中に頭が動いていないか、体が前後左右にブレていないかを見てみましょう。
ゴルフスクールやゴルフショップのスイング解析機を利用する
自分でスマートフォンを使って撮影するよりも、もう少し細かい部分までチェックしたいのなら、スイング解析機やシュミレーターを利用しましょう。
多くのインドアゴルフやゴルフショップには設置してあるはず。そしてレッスンプロやショップスタッフが診断してくれるので、ぜひ利用してみましょう。最近は打ちっ放しの練習場にも設置してあるので、活用することをおすすめします。
スイングアプリでゴルフフォームを診断・分析する
スマートフォン用のスイング診断アプリを使うのも手軽でおすすめです。無料のアプリもあるので、出費を抑えてスイングチェックができます。スマートフォンの動画撮影と同様に、ふだん練習しているところでチェックができるため手間がかかりません。
スイング診断の方法はネット上にたくさんの情報が載っているため、それを参考にしてみましょう。
【関連】ゴルフスイングアプリおすすめ特集
正しいゴルフフォームを習得するならゴルフスクールもおすすめ
ゴルフフォームに正しい=正解はありません。できるだけミスにつながらず、できるだけ真っすぐにボールを飛ばせれば、それがその人にとっての正しいスイングといえます。
とはいえ、一般的、もしくは標準的といえる「お手本」のスイング(フォーム)はあります。初心者はまずはこういったスイングを身につけるのが上達への近道でしょう。
お手本のスイングはゴルフスクールやレッスンなどで教わるのがもっとも効果的でしょう。ティーチングプロのレッスンなら間違った動作を指摘してくれるので、悪いクセがつきにくく、バランスよく振ることができるはずです。
【Q&A】ゴルフフォームについて多い質問
以下では、ゴルフフォームについて多い質問・疑問に解答します。
- ゴルフフォームはクラブの種類によって違う?
- ゴルフフォームは男性と女性で違う?
- ダフってしまう人に多いフォームのNGポイントは?
Q. ゴルフフォームはクラブの種類によって違う?
ゴルフフォームはどのクラブでも基本的には同じです。クラブのレングス(長さ)やライ角などが変わるため、アドレス時のスイング軸の傾きやスタンス幅、ボール位置など、少し変わるところはあります。しかし、振り方は一般的には変わりません。
ドライバーはボールを高く上げたいため、アッパー軌道で打つことをすすめるティーチングプロもいます。また、アイアンはダウンブローで打ちたいため、アタックアングル(入射角)をキツくするようにアドバイスするティーチングプロもいます。
このように、教える人によっては若干変化する部分はありますが、初心者はまず、どのクラブでもお手本に則った振り方を身につけることが大切です。それができたら、さらなるレベルアップとして、前述したような方法、打ち方を少しずつマスターするようにしましょう。
Q. ゴルフフォームは男性と女性で違う?
基本的にゴルフフォームは男性と女性で違う部分、変わる部分はありません。ティーチングプロやレッスンプロのなかには男性と女性でスイングの仕方は違う、と考えている人がいるかもしれません。ただし、あまり一般的とはいえません。
とはいえ、「女性は男性より非力な人が多い」「女性は男性より柔軟性が高い」といった世間一般の普遍的な理由から「女性は○○したほうがよい」と考えるティーチングプロはいるかもしれません。しかし、それが正しいかどうかは不明です。前項でお話ししたように、スイングに正解はありませんから。
したがって、男女でスイングの仕方は違うという考え方や教え方があり、それを受け入れて実践するのは悪いことではありません。要は結果がよければいいのです。
Q. ダフってしまう人に多いフォームのNGポイントは?
ダフってしまう要因はいくつかあります。ダウンスイングで、
- 手首のタメが解ける。
- キャスティングの動作が起こる。
- 右肩が下がる。
- ウェイトシフトができず、右足に残る。
- アタックアングル(入射角)がキツすぎる。
などが代表的でしょう。これらに注意することで、ダフりは少しずつ改善されてくると思います。
また練習するとき、ボールの後ろに1~2cm四方のガムテープを貼り、そのガムテープが剥がれないように打つ練習をすると、ダフり防止に効果的です。
ダフりは飛距離を稼げないため、スコアをまとめることが難しくなります。そして、ダフりを防ぐ=ダウンブローで打てるようになればスコアは間違いなくよくなるでしょう。自分ひとりではなかなか上達しないようなら、ゴルフスクールへ通ったり、ティーチングプロに教わったりしましょう。それが上達への近道です。
正しいゴルフフォームを習得しよう
バランスのとれた、きれいなゴルフフォームは、安定してよいショットを打つためには欠かせないものです。そのようなスイングを身につけるために、インターネットやSNSなどを使うのは手間がかからず効率的でとてもよいと思います。
ただ、動画では理解しにくい部分があるため、そのような場合にはスクールなどでレッスンを受けるとより早く身につくでしょう。
■解説者プロフィール
宮川岳也(みやかわ たけや)
ゴルフ雑誌編集記者を経て、フリーランスのゴルフライターへ。USGTFティーチングプロ資格を有し、現在は埼玉県の練習場でレッスン活動も行っている。