見て、見られてこそのゴルフ!ティ周辺は檜舞台なのだ!

「スタート時間の前にスタートホールに行くのは、配慮に欠ける愚行だと教わりました」
とんでもない誤解や間違いほど、それらしいので広まりやすい傾向があります。「ビジネスでも、アポイントより早く行くのは先方に失礼ですよね」と、ゴルフには直接関係のないビジネスマナーも一緒になると、説得力があるような気がする人も多いようです。

スタート時間の10分前にティ周辺に行く、というのがマナーですが、間違った“嘘のマナー”では、スタートするときに後ろの組の人が見ているとプレッシャーがかかるし、急かされているように感じさせるから、前の組がスタートしてからホールに到着するのが上級ナマナーだという理屈のようです。

しかし、いわゆるスロープレーにつながるような怠慢な行動は、全体を考えれば心配りでもなく、ただの迷惑な余計なお世話に過ぎません。ゴルフはその日、そのコースに集まったゴルファーが順番にホールを使用していくことで成り立っているのですから。

スタートホールでは、誰にもワクワクドキドキの時間が訪れます。人に見られながら準備して、その日の第一打目を打つのはプレッシャーです。しかし、それがゴルフなのです。誰にも見られたくないのであれば、コースを貸し切ってゴルフをすれば可能ですから、そうすればいいだけのこと。

「ティ周辺とグリーンは、ゴルファーにスポットライトが当たる檜舞台なんだよ」と僕は教わりました。知らない人同士でも、良いショットには賞賛の声掛けをして、失敗は沈黙の同情を送るのがゴルフの素晴らしい文化的な側面であることを忘れないようにしましょう。

時間ギリギリに行動してバタバタと準備をするという、失敗するための要素満載で第一打目を打つのは、せっかくのゴルフなのにもったいないのです。余裕を持ってスタートを迎え、見られても恥じない“ゴルフ仕草”で第一打を楽しみましょう

ゴルフ仕草?ゴルフは言葉じゃなくともたくさんの情報発信をしている!

少し前に“江戸仕草”が話題になりました。雨の日に狭い道ですれ違うとき、傘がぶつからないようにお互いに傘を斜めにする心配りを始めとした気遣いで、江戸時代の町人は平和に過ごしていた、というマナーが“江戸仕草”です(後付けで、証拠に乏しく正しくないという歴史学者の指摘が続いたため、諸説ありとなっています)。

2024年。ゴルフコースでは、後からプレーをするゴルファーに迷惑をかけないためにたくさんのマナーが伝承されています。自己満足だと馬鹿にする人もいますが、ドライバーが届かないような遠くからでも見えるマナーはいくつもあります。そういうマナーを身に付けて颯爽とゴルフをする姿を見て、人は“ゴルフ仕草”が良い、と自然と尊敬したりするものなのです。

例えば、バンカーに入ってボールを打っている人は遠くからでも見えます。バンカーレーキを取りやすいところに持ってきてからバンカーに入るのも仕草。斜面を保護する意味で、低いところから出入りするのも仕草。打った跡だけではなく、入ったところから出る足跡も全てレーキで慣らすのも仕草。ゴルフ仕草は見ていて気持ちが良いものです。

打った後にバンカーレーキを探してウロチョロするのも、近いからとグリーン方向の斜面を出入りするのも、バンカーを均さずに行ってしまうのも、遠くから普通に見えています。そして、心から同情します。ゴルフの神様はそういう人に対して、微笑まないからです。

朝のスタートホールの光景でも、カッコ良く見えるゴルフ仕草はたくさんあります。ティやボールの準備ができていて、サッとティアップできる所作はその代表です。

ボールがないとバッグに戻るとか、ティを何度も刺してボールがなかなか乗らない、本番に悪い影響が出るほど何回も素振りをするなどは不慣れや準備不足を無言で撒き散らす初心者の特権でしょう。しかし、ゴルフ歴があっても愚行を繰り返す人は、人となりを疑われても文句は言えません。

言い訳している暇があるなら、ゴルフができることに感謝しよう!

“ゴルフ仕草”を書き出したしたら、本が何冊も書けてしまいます。大事なのは、基本の心配りのマナーを身に付けることです。

何度も“ゴルフ仕草”を披露しているうち内に自然とレベルアップして、生まれる前からできていました、という感じで身に付きます。遠くからでも近くからでも誰が見ても、「良い“ゴルフ仕草”だね」と思われるようになれば成功です。

“ゴルフ仕草”が身に付くと「あの人と、またゴルフがしたいね」と言われるようになります。

ゴルフの魅力のひとつは、仲間と楽しい時間を過ごせることです。迷惑ばかりかけていれば徐々に敬遠されて、結局ゴルフに誘われなくなってしまうのは悲しいけれど現実です。ゴルフができるのは幸せなこと。“ゴルフ仕草”は、それを実感できる資格でもあるのです。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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