【フォーティーンが劇的に復活した背景に迫る】新時代の名器にも竹林隆光の哲学
鹿又芳典 × フォーティーン CROSS TALK 【PR】
常識を疑え。プロに向けたクラブを作るな。美しい道具であれ
『TB-5』の企画担当者である池田だけでなく、今のフォーティーンを支える開発担当者や営業担当者は竹林隆光の哲学を継承しているメンバーたち。天才設計家と言われた竹林の哲学とはどういったものなのか。
鹿又 フォーティーンが創業した約40年前のゴルフクラブは、ほとんど感覚重視で開発されていました。竹林さんはそんな時代に重心距離とか慣性モーメントなどの数字
を持ち込んだ人物と言われていますが、実際にはどういう開発者でしたか?
池田 開発者である前に竹林はゴルファーでした。ゴルフクラブを作るときは、ゴルファーである自分を通して、新しいクラブを考えていました。
鹿又 長尺の『ゲロンディ』はまさにそうですよね。竹林さんはトップアマでしたけど、飛距離が出なかった。だから、もっと飛ばそうとして48インチのドライバーを作った。
池田 1番よく言われていたのは「常識を疑え」ということです。入社後に何度も聞いた言葉で『TB –5』を企画していたときも意識していました。「他のメーカーと同じことはしたくない」ともよく言っていました。
鹿又 私も、その言葉は本人から聞いたことがあります。
池田 もう一つはゴルフクラブはシンプルで美しい道具であれということですね。開発では数字にもこだわっていましたが、最後にクラブを打つのは人間です。視覚から入っている感覚や印象がショットに影響するということをゴルファーとして理解していました。世界初の中空アイアンは、美しくてやさしいアイアンを作りたいというのが原点にあったと思います。
鹿又 竹林さんがいる時代のフォーティーンも、1990年代までと2000年以降は全く違う会社になりましたよね。
池田 80年代・90年代のフォーティーンは設計会社でした。大手メーカーから依頼されてクラブの設計をしていましたが、90年代後半になるとCADの時代になって、データだけでゴルフクラブの設計ができてしまう。設計会社としてのフォーティーンの仕事はどんどん減っていきました。そこからクラブ製作に転向し、2001年にはじめて自社ブランドのクラブとしてウェッジを発売しました。それが大ヒットした『MT –28』です。
鹿又 なぜ、一作目がウェッジだったのですか?
池田 当時はタイガー・ウッズがプロに転向した直後で、タイガーが使っていたクリーブランドのウェッジが大人気になりました。それまではアイアンセットが8本セット、10本セットの時代だったのでアイアンセットの中にあるウェッジを使っていました。でも、タイガー・ウッズ以降はアマチュアも単品ウェッジを購入する時代になると思ってウェッジに目をつけたと思います。竹林は開発者でしたが商売人としても先見の明がありました。
アーニー・エルスが2002年の『全英オープン』で使用して優勝。その後はPGAツアーでもアイアン型ユーティリティが大流行した。
鹿又 あの頃はプロゴルファーはもちろん、プロを目指す人達やトップアマもみんな『MT –28』を使っていましたね。
池田 日本男子ツアーの使用率1位でした。
鹿又 アーニー・エルスが『HI–858』で全英オープンを制したのも、その時代ですか?
池田 『MT–28』を発売した翌年の2002年です。『HI–858』も中空構造のアイアン型ユーティリティとして大ヒットしました。
鹿又 順風満帆のスタートでしたね。
池田 たしかに、あの2モデルでフォーティーンの知名度は日本だけではなくて、世界的に広まりました。でも、竹林は不満だったと思います。プロゴルファーから評価されることによって、『フォーティーン=上級者のためのクラブ』と思われてしまった。
竹林は「ゴルフメーカーがプロの方を向いてクラブを作りはじめたら終わり。アマチュアのためのクラブを作らないと生き残れません」と言っていました。そこからウェッジ開発の方向性が変わりました。
フォーティーンの創業者 竹林隆光がカリスマ設計者と呼ばれる理由
日本オープンでローアマを獲得した経験をもつ竹林隆光。1981年にフォーティーンを創業すると、世界初の中空アイアンや長尺ドライバー、そしてタラコと呼ばれて大ヒットしたユーティリティを開発。いち早くヘッドの重心位置に注目して重心距離、重心角、さらに慣性モーメントなどの数字を開発にとりいれた先駆者でもある。来日したアーノルド・パーマーにもゴルフクラブのことを質問していた。
●たけばやし・たかみつ/1949年生まれ。成蹊大学時代に本格的にゴルフをはじめて、卒業後は横尾ゴルフに就職。1977年の「日本オープン」でローアマを獲得。1981年にフォーティーンを創業した。
『DJ-6』に継承されている竹林隆光の哲学
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