前日にコースレコードを出し、「今日もいいはず」と思えた理由は?
川﨑は前日(3日目)が9バーディー、ノーボギーの63で、大会でのコースレコードタイ記録でした。
勝って兜の緒を締めよ、の諺があるように、調子がいい時ほど慎重に。絶好調がそう続くわけではない、と考えるのが日本人の気質だといえます。
それが川﨑は「今日も(調子は)いいはず、と思っていました」とサラリ。その言葉通りに8バーディー、ノーボギーの64で回り、ツアーの最多アンダー記録を一気に4打も更新しました。
パー4を105ヤード短くしてビッグスコアを、と協会の思惑
今大会は酷暑でグリーンを速くできないこともあり、記録が狙えるようなセッティングで、というJLPGAと主催者の意向がありました。
本来は360ヤードだった5番パー4が2日目以降は255ヤードとなり、トータル19個のイーグルが出たのもそのためです。
なおかつ「世界に通用する選手が育ってほしい」との協会の思惑も込められています。
「スコアに“天井”を作るな」
2011年に就任した小林浩美JLPGA会長は、世界に通用するために必要なこととして「スコアに“天井”を作らず伸ばす」ことを挙げます。
日本で開催されるアメリカツアー「TOTOジャパンクラシック」(2014年以前はミズノクラシック)では、海外勢がスコアを伸ばすのに日本選手がついていけないことが多々ありました。
例えばこれまでの最多アンダー記録(通算24アンダー)で優勝した2003年大会のアニカ・ソレンスタムは2位に9打差。日本勢最上位は当時6年連続賞金女王の最中だった不動裕理で、10打差の5位。トップ10に他に日本勢はいませんでした。
古くは1996年「伊藤園」でのローラ・デービースが15打差のツアー史上最多ストローク差で優勝しています。
地の利があるはずの日本でこれでは、メジャーなどで海外に行って伸ばし合いについていけるはずはありません。
あえてバーディ合戦に
そこで近年のJLPGAはあえて「バーディー合戦」になるセッティングを実施するようにしました。
とはいえ、単純に簡単にするだけでは、海外で通用する選手は育ちません。
そこで強化策として行われているのがピン位置を左右に振ること。
大東建託最終日は、18ホールの半分が左右の端から5ヤード以内でした。
このピン位置を正確に狙っていかないとバーディーは取れない。少しでも誤差が出れば難しいサイドにグリーンを外してパーを取るのがやっとになります。
伸ばさないと勝てない。そのためには、より高いショットの精度が求められるようになったのが近年の日本女子ツアーです。
川﨑は2週前の「ミネベアミツミ」と2戦連続優勝(前週はオープンウィークで大会なし)。2大会での8ラウンドは全て60台という素晴らしい内容です。
この勝ち方をする選手が出てきたのはJLPGAの強化策の成果だといえるでしょう。
強化策が実った稲見萌寧の銀メダル
それが最も結果として現れたのが、最終日に65と伸ばして銀メダルを獲得した東京五輪での稲見萌寧、と小林会長は言います。
さらに渋野日向子、笹生優花、古江彩佳のメジャー制覇にも繋がったといえそうです。
(取材・文/森伊知郎)




