“エースクラブ”の選び方は機能優先か、見た目優先か?
戸川景の重箱の隅、つつかせていただきます|第52回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.630/74ページより
エースクラブ”の選び方は機能優先か、見た目優先か?
2024年10月の日本オープンはラフのセッティングが厳しく、ショットの精度が問われるサバイバルゲームとなった。
優勝したのは32歳の今平周吾。17番のバンカーから奇跡的なチップインで追いすがる木下陵介を、最終18番のロングパットで見事に振り切った。
2人とも、4日間を通してショットの安定感、パットの精度は抜群だった。勝敗を分けたポイントは何だったのか。そのひとつとして“エースクラブ”の存在を考えてみた。
“エースクラブ”を定義すると、“代えることができない、全幅の信頼を置けるクラブ”だろうか。ゴルフはターゲットゲームであり、ミスを極力減らすことが1打を競う優勝争いでは重要になる。スーパーショットではなく、如何に置きに行ける“守りのショット”をつなげるか。その拠り所となるのが“エースクラブ”だろう。
“エースクラブ”の逸話は、昔からフェアウェイウッドやユーティリティに多い。アプローチの要であるウェッジやパターは、加減して操作しやすいぶん“代え”がきくせいかもしれないが、意外と“エース”には昇格しないようだ。
一流プロなら、ドライバーは飛ばせて当たり前、ショートゲームも上手くて当たり前。優勝争いで差がつくとしたら、180〜220ヤードのショットの精度であり、それを風やライに左右されず、安定して狙い打ちできることなのかもしれない。そこに“エースクラブ”があることは、大きなアドバンテージになるはずだ。
今平は、タイトリストのユーティリティ『910H』を、10年以上使い続けている。2年前に中古ショップでスペア用を3本購入したというほどの入れ込みようだ。これはまさに“エースクラブ”と言えるだろう。
実際、日本オープンでは難ホール続きのサンデー・バックナインでも、このユーティリティはティショット、セカンドショット問わず大活躍。スコアメイクの要となっていた。
さて、この“エースクラブ”への信頼感は、どこから生じるのだろうか。私は、入り口は見た目、次に操作性の相性、そして最後の決め手はやはり見た目に戻る、と考えている。
“安全に置きに行く”と“狭いエリアを狙い打つ”というのは、ロングショットではクラブに求めるものは同じだと思う。まずは“狙いやすさ=構えやすさ”であり、そこで見た目が重要になる。特にフェアウェイウッド、ユーティリティはヘッドのフォルム、フェースプログレッションの関係で、構えにくいものが多いからだ。平らなライで目標にフェース向きを合わせやすく、実際の打ち出しも揃う。これが第1段階だろう。
だが、ロングショットは様々なライ、天候の中での操作性も要求される。個人が持つ振り方の技術、打点の違い、弾道作りの考え方に合ったヘッド、シャフトの挙動を整える設計や構造が必要となる。これは実際に打ってみないとわからない。1球打つだけでダメ出しができた不動裕理、ワッグルだけで選別したニック・ファルド、他のプロのスイングとクラブの相性まで見極めた尾崎将司といった天才は別としても、プロレベルなら少なくとも“自分に合う1本”は見つけられると思う。
それでも、最後にしっくりくるかどうかは、やはり見た目で決まるはずだ。プレッシャーのかかる場面では、自分の感覚より頼れるものが欲しくなる。それが、いざという時に“モノサシ”になるクラブだ。見慣れたヘッドの傷や打痕が成功の予感を抱かせてくれる。緊張下のスイングを、スムーズに促してくれる。今平周吾のプレーぶりからは、改めて“エースクラブ”を作る強みを感じさせられた。
戸川景(とがわ・ひかる)
1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
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