クラブ開発の方程式はとても複雑、フォーティーンの答え合わせとは?
コンセプトの立案に始まり、素材や構造の選定、モデリング、重心設計などクラブの開発過程においては複雑な要素が絡み合う。一方、そのクラブを使うゴルファーの側もスキルや体力、好みが千差万別である。ベストな14本をゴルファーに届けるため、フォーティーンはどのように答え合わせをしているのだろうか。
正解へ導く方程式その一 〜 まず常識を疑うところから始めよう
「何かが売れたから、流行っているからといってそれを真似しようという発想はフォーティーンにはありません」
企画担当でTB-5 FORGEDの独創的なシアターブレードデザインの発案者でもある池田純氏はそう言い切る。
「カッコいいアイアンへの憧れはゴルファーの誰もが持っています。でも、見た目よりやさしいアイアンを使いたいという本音もあります。ぼく自身もそうです。だから、マッスルバックのような見た目で打ちやすいアイアンを“いちゴルファー”として純粋に作ってみたいと思いました」
打ちやすさを求めるならキャビティバックが定番だが、「バックフェースの外周に枠があって真ん中がえぐれた形がどうして当たり前なんだろう、外枠を取ってしまったらどうなるんだろう」と考えた。半世紀以上、誰も疑うことのなかった「当たり前」に対する「問い」から生まれたのがTB-5 FORGEDだった。
「常識を疑え」はフォーティーン創業者の竹林隆光氏が常々口にし、自ら実践してきた言葉である。
「プレス加工の溝が当たり前だった時代に彫刻で鋭い溝を掘ったり、マッスルバックしかなかった時代に中空アイアンを創ったり、ドライバーを48インチまで伸ばしたのも竹林でした。我々が100%受け継げているかどうかわかりませんが、少なからず影響を受けているのは確かです」(池田氏)
正解へ導く方程式その二 〜 1人のアマチュアをターゲットと定める
フォーティーンのモデル名は最初の数字が難易度を表していることが多い。法則に従えばTB-5 FORGEDはハイエンドとローエンドのちょうど中間、フォーティーンらしく表現すれば難しすぎずやさしすぎない。初代TB-5 FORGEDはいざ発売されると支持層は「5」の枠をはるかに超えて広がったが、ターゲットゾーンを広くとる意図はまったくなかったと池田氏。
「開発段階でのターゲットはたった一人。若い頃は同じゴルフ場の研修生として切磋琢磨し、フォーティーンにも同期入社した同僚です。彼は国体代表に選ばれるほどバリバリの競技派でしたが、ラウンドの回数が減るとともに腕が落ちてきた。でもやさしいアイアンは使いたくないという。そういうゴルファーは他にもたくさんいるんだろうなと漠然と思ったのがTB-5 FORGED開発のきっかけでした」(池田氏)
実はフォーティーンのクラブ開発には竹林氏の遺した不文律がある。
「誰か一人のアマチュアプレーヤーのためのクラブでなければならない」
技術で打ちこなせるプロではなく、アマチュアが打てなかった球を打てるようにすることがクラブの進化を促すというのが竹林氏の信念。1人のターゲットに絞ったクラブであっても、クラブの進化はより多くのゴルファーに恩恵をもたらしてくれるのである。TB-5 FORGEDはじめ多くのフォーティーン製品がそうであったように。
正解へ導く方程式その三 〜 クラブは美しくなければならない
たとえコンセプトの方向性が正しくても、それを具現化できなければ意味がない。開発課・黒澤康孝氏の役割は企画コンセプトを元に求められる性能を達成しつつ、フォーティーンらしいカタチに仕上げることだ。フォーティーンらしさとはシンプルで美しいこと。コンピュータ画面上で設計を完結できる時代において、いまも手作業で削り込んだモックアップ(実物大サンプル)をデジタルデータに落とし込む手間をかけているのもそのためである。
「入社したとき社内に貼ってあったポスターの『クラブは美しくなければならない』というコピーはいまでも鮮明に覚えています」という黒澤氏。最初に配属された組立て工程や研磨工程では美しさにこだわる先輩社員達と出会い、数え切れないほどのヘッドを自分の目で見、手で触れてきた。
「カッコいいが当たり前の環境で育ってきたので、そこは守らなければいけないという思いがあります。同じモックアップでも人の手が入ったものとCADでデザインして3Dプリンタで出力したものとでは、曲線のつながりや陰影の出方が微妙に違います。また、数字ありきだと、じゃあ最初からタングステンを入れましょうとかんたんな方向に行きがち。どうしても性能を出せないときには異素材も使いますが、できるだけ余計なことはしたくありません。CADなら数字をいじったりするのも簡単ですが、たいていよい方向にはいかないものです」(黒澤氏)
正解へ導く方程式その四 〜 美しいクラブを美しいままゴルファーに届ける
企画・開発チームの役目は正解を見つけカタチにするところまで。その先には正解を正解のままゴルファーに届けるという大事な仕事がある。業界一基準が厳しいといわれる全品検査はよく知られているところだが、品質管理課の新井明生氏はそのキーマンである。
「ゴルフクラブなので使っているうちに傷はついてしまいますが、お客様の手に渡るまでは美しい状態でなければいけません。かまえたときに見えるネックのつながり、トゥの側の立ち上がり、リーディングエッジの出方など感覚的なチェック項目が多いため、そこに明確な基準は設けず、その代わりに検査員同士で感覚のすり合わせを日々行っています」(新井氏)
また、品質管理の仕事はダメ出しばかりではない。とくにフォーティーンのような新しい挑戦の多いメーカーでは不良率を下げる抜本的な解決策が必要となる。
「TB-5 FORGEDなどいままでにない形状の製品を作る場合、あらかじめこういう不良が出る可能性があると工場に伝えます。そして実際に出来てきたものを見て、ベルトを当てる角度だったり、モノを動かす動線だったり、取り扱い方法の改善をお願いすることもあります。実際に初代のTB-5 FORGEDでは、不良ではありませんが汚れが目立ちにくいようにメッキ方法を改善しました」(新井氏)
どんな分野でも「正解」へ一朝一夕にはたどり着けない。今回の取材で分かったのは、「打てなかったボールが打てるようになる」「クラブは美しくなければならない」、そして「常識を疑え」といったフォーティーン創業以来の理念を愚直に守り続けた先に「正解」があったということだ。




