パターにウェッジと同じグリップを使っているゴルファーはいないはず

1997年のマスターズ初優勝から、左ひざの手術からの復帰戦となった2008年全米オープンでの優勝までのタイガーを知るゴルファーにとっては、タイガー・ウッズこそ世界最高のプレーヤーであり憧れの的だった。鍛え上げた肉体と卓越した技術で勝ちまくったのだから、体力や技術は及ばなくても、せめて同じクラブでタイガーにあやかろうという気持ちで、タイガーの使用クラブが人気だった。

ティアドロップ型のウェッジを世に広めたのもタイガーだし、グリップ、ツアーベルベットの「裏刺し」を流行らせたのもタイガーだ。実はこの「裏刺し」がアマチュアゴルファーにとっては劇薬だったのではないかと思っている。タイガーはバックラインなしのグリップを使用して、しかもグリップのロゴを裏側になるように装着してフェースを開いて握った時も、閉じて握った時も、同じフィーリングで握れるようにした。その為の「裏刺し」だと言われている。

バックラインは和製英語で、英語では「リマインダーリブ」と呼ばれるものだ。どの向きでグリップを握ればよいのか思い出させてくれるありがたいものなのだ。パターのグリップには、親指が当たる部分に平面がある。これがあるから同じように握れるし、フェースの向きを掌で感じることが出来る。



グリップにはバックライン、ありとなしがある

ゴルフルールで「パター以外のクラブは、グリップの横断面が円形でなければならない。ただし、間断のない、真っ直ぐで、若干盛り上がったリブをグリップの長さ全体にわたって組み込むことができる。・・・・・」と規定されている。パター以外のグリップに平面を持たせてはいけないけれど、その代わりにバックラインだけは認められているということだ。いつも同じ向きにクラブを握れるようにするためのバックラインがいつの間にか、少数派になってしまい、今純正で装着されているグリップは「バックライン無し」が主流となっている。

タイガー以外にも、バックラインが少数派になってしまった原因はもうひとつある。ドライバーの「カチャカチャ」だ。ロフトとライを調整できるありがたい機能だから、今ではほとんどのモデルに搭載されているのだが、キャロウェイと本間を除き、調整を行うとシャフトが回転するので、グリップの向きが変わってしまう。だからバックライン無しのグリップが主流となってしまった。

ところが最近、USPGAツアーでもバックライン有りのグリップを使用する選手が少しずつ増えていると言うし、バックラインの高さをルールギリギリまで高くした「アラインMAXシリーズ」がゴルフプライドから発売された。テニスやバドミントンのラケットのように八角形のグリップはルール違反だけれど、ルールの範囲内で同様の機能を持たせる方が“得だ”と考えるプロが増えつつあると言うことだ。

テニスやバドミントンで断面が丸いグリップを使いますか? と問われれば、答えは「ノー」だろう。飛ばしたいと同時にショットの方向性を高めたいと言うのは、すべてのアマチュアゴルファー共通の思いだろう。だとすれば、バックライン有りのグリップを使わない手はないはず。カチャカチャ付きのクラブでも、自分に最適なポジションを決めてしまえば、それに合わせてバックライン有りのグリップに交換すればOKだ、実際にプロはそういう使い方をしている。

文/大塚賢二(ゴルフギアライター)
1961年生まれ。大手ゴルフクラブメーカーに20年間勤務。商品企画、宣伝販促、広報、プロ担当を歴任。独立後はギアライターとして数多くのギアに関する記事を執筆。有名シャフトメーカーのシャフトフィッターとしての経験も持つ。パーシモンヘッド時代からギアを見続け、クラブの開発から設計、製造に関する知識をも有するギアのスペシャリスト。