プロ転向から4991日、267試合での初優勝

パー以下なら優勝。ボギーだと最終日に65と猛烈に追い上げたツアー通算11勝の小祝さくらとのプレーオフ、という状況で迎えた最終18番パー5は3打目をバックスピンで戻して2メートルにオン。バーディパットを決めて嬉しい初勝利を手にしました。

2011年8月1日に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)に入会してからこの日の初優勝までに要した日数は4991日。これはツアー制が施行された1998年以降では2番の長さ でした。
勝利の瞬間は派手なガッツポーズはなく、プレッシャーから解き放たれてホッとしたような表情が印象的でした。
それがこれまでの長い年月を物語っているのでしょう。

父は名球会投手、元ソフトバンク監督の工藤公康氏

工藤のお父さんはプロ野球の西武、巨人、ソフトバンクなどで活躍し、通算224勝を挙げた名投手で、現役引退後はソフトバンクホークスの監督も務めた工藤公康さんです。

ゴルフも大好きで60台で回る腕前の持ち主ですが、工藤が「プロになりたい」と言った時は自分でバイトでもしてプロになれ」と告げたそうです。

工藤が本格的にゴルフを始めたのは高校入学後からで、費用の面倒をみてくれたのは祖母でした。
そして工藤は試合などでかかった費用をノートに書き留め「プロになって稼ぐようになったら返す」と自分の中で誓い、そのために記録を残しておきました。

プロになってからは昨年までの賞金でトータル1億円超を稼いでおり、スポンサーも付いていますが、プロゴルファーは転戦などの経費が自己負担なので“返済”はなかなか大変だったと思われます。

プロ転向後すぐの新人戦で優勝した後には祖母をグアムに連れて行くことができましたが「それだけで、おばあちゃん孝行してなかったので、今日は勝てて良かったです」と恩返しできたことを喜びました。

勝利につながった父のアドバイス

プロスポーツ選手としての実績としても『雲の上の人』と表現する父に対しても「結果が出なくて申し訳ないとずっと思っていた」と言いました。

その公康さんとゴルフの話をした際「お前は悪くなってからオレの所に来る。そうじゃなくていいことを自分で書き出して、いい時をずっと持続できるようにするんだよ」と言ってもらったことに倣っていいことを書き残すようにしたら「勝ちました」(工藤)。
これはさすが「名球会」入りした実績ならではのアドバイスでした。

自分はいつ咲く花なのか

表彰式のスピーチでは、親交のあるソフトボール日本代表監督の宇津木麗華さんから「人は春咲く花、夏咲く花、秋咲く花、冬咲く花、と色々だから自分はいつかと楽しみにしていたらいいよ」との言葉をもらったことを励みにしていた、と話していました。

桜が咲き誇る宮崎。父親が長らく選手、監督を務めた九州で初勝利、というのは、長く諦めなかったことへのゴルフの神様のプレゼントだったのでしょう。
「自分はまだ五分咲き」と言った工藤。満開に向けて、さらにどんな活躍をするかが楽しみです。
(文/森伊知郎)