OKパットは何センチから? 今さら聞けないOKパットのアレコレを解説
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第125回

競技ではなく仲間内のゴルフではよく使われるOKパット。適用される距離はカップからワングリップというのが一般的な認識だと思うが、これって正式にはどうなんだろう? OKパットにまつわるあれこれを解説する。
OKパットってルール違反だったの?
「ゴルフしてから今日まで、短いパットはほとんどやっていないから」
短いパットをポロポロと外し続けた彼はそう言って複雑な表情をしていました。彼は幼なじみで、その日、初めて一緒にゴルフをしました。
20年以上、営業畑一筋で接待ゴルフをしてきた彼は、良くも悪くもOKパットがある世界でゴルフをしてきたのです。
そのコンペは、完全ホールアウトルール、つまり、OKパットは認められないというストロークプレーの競技でした。
OKパットはマッチプレーで認められているだけで、一般的にプレーされているストロークプレーではルール違反です。でも、ゴルフコースのローカルルールなどで認められていたり、コンペ内のルールで2パット目が外れたら次のパットは長さにかかわらずOKとする、というように決められることもあります。
日本だけの悪習だと知ったかぶりをする人がいますが、世界中のゴルフコースで正式にはダメだけど、ローカルルールとして、というパターンで習慣となっています。
先程紹介した幼なじみのようにパットが下手になってしまうからとか、ルールはルールだからとか、OKパットを撲滅しようと考えている人たちもいます。インチキは許せない、という真面目さが根底にあることは明確で、一定の理解を得ています。
時短プレーとしてのOKパットを理解する
実は僕も競技ゴルファーとして現役の頃は、OKパットは自分だけ不採用にしてプレーしていました。同伴者にはOKを出しますし、自分の残りのパットにOKが出たら、「練習で打たせて」と一声かけて、お先に打ったりしていました。ホールアウトするまでのリズムが乱れるのが嫌だったからです。
しかし、約10年前に、あるゴルフコースの経営者に注意をされて改心することにしました。
「ジュニアの指導とかもしている立場だからこそ、時短のためにコースがお願いしているOKパットルールを無視しないでください。あなたを真似て、短いパットにも時間をかけてプレーする人が増えたら、どう責任を取るつもりですか?」
目から鱗でした。時短ルールを邪道だからと妨害する権利は、誰にもないのです。
現在では、OKパットは時短のためだと説明して、ローカルルールとして採用しているコースでは積極的に利用しています。
コースの管理スタッフに言わせると、グリーンのカップの縁とその周辺が、OKパットを徹底してくれれば痛みにくいので、芝生に優しいハウツーとして有効でもあると聞いてから、より積極的に採用しています。
OKパットはワングリップ? それともワンパター?
英語圏のオールドゴルファーはOKパットのことを「イン・ザ・レザー」と洒落て言ったそうです。
革の内側とは、本革シューズ1足分、つまり30センチだと1980年代の後半に、欧米でのゴルフに詳しい方から教わって、粋だねぇ、と感心しました。
しかし、それから数年後、米国人の用具マニアに「正しくは、グリップの長さだからOK、という意味です」と教えてもらいました。1960年代以前は、パターのグリップは基本的に革巻きで、今のグリップより1.5番ぐらい長いのが流行っていました。
イン・ザ・レザーというゴルフスラングが生まれたときのグリップの長さは50センチぐらいぐらいだったそうです。
OKパットって、何センチぐらいが正式なの? という質問がよくあります。
絶対に入る距離という説、ワングリップという説、ワンパターという説、その他諸々。そもそも正式なんてありはしないので、仲間内で議論して決めるのが正解なのだと思いますと答えます。
令和になって、そういう曖昧さをリセットするハウツーを採用しているゴルフコースが出てきています。グリーンのカップの周囲に直径1.2メートルぐらいの円が描かれているのです。円の内側に入ればOK、というローカルルールは、わかりやすくて大好評だと聞きました。
この円のこと、方式をOKサークルと呼んでいます。採用を検討しているゴルフコースも多いようなので、今後の広がりに注目しています。
OKパットを出した、出さないで、互いの人間性がわかるというエピソードは無限にあり、ゴルフ談義のテーマとしても盛り上がります。
1対1のマッチプレーでは、OKパットではなく、コンシードが正式な用語です。OKパットで色々な喜怒哀楽がうごめくのは当たり前です。そもそもコンシードは、マッチプレー戦略の一つだからです。
時短プレーのため、グリーンの保護のため、と達観したように考えるのがOKパットとのオススメの関係だといえます。
神経質になればなるほど、結局、自分が消耗して損をする理不尽もゴルフの面白さなのです。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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