最後は劇的ウイニングパット!!も余韻に浸ることはできず…

感動の場面は4日間の平均スコアが最難関だった18番パー4でした。

内田は6メートルほど のフックラインを見事に読み切ってのバーディフィニッシュで締めました。
初優勝が4日間大会で初日から首位を守り通しての「完全V」は、2010年「日本女子オープン」での宮里美香以来15年ぶりで史上5人目。
北海道出身選手が北海道で勝つのは大場美智恵、菊地絵理香(2回)と小祝さくらに続く史上4人目(5回目)のダブル快挙でした。

それだけに地元のファンの前でたっぷり余韻に浸りたい、ところですが、早々にカップからボールを拾い上げるとグリーンサイドに出てキャディと握手。まるで単にバーディを決めた後のようです。

それも仕方ありませんでした。
この時は同組の山城奈々が少し近い距離に2オンさせ、泉田琴菜はアプローチを3メートルほどに乗せたので、二人のパットがまだ残っていたのです。

最高の瞬間、を演出できなかった理由は

内田がバーディパットを打つ前の時点で2位の山城と泉田とは5打の差があったので、勝負がひっくり返ることはまずありません。

ですから山城と泉田としては、内田にファーストパットをしっかり寄せてもらい、ウイニングパットの瞬間を存分に味わってもらおう、と考えていたはずです。

それが、内田のパットはカップイン。
この距離が入る確率、というのはどれぐらいなのでしょう?
アメリカ男子PGAツアーのスタッツでは、20フィート(約6メートル)超を最も決めているトニー・フィナウの成功率が11.64%なので、パット巧者で10回に1回というところでしょうか。

そうそう入ることはない距離ですから本人も先に打ち、2人も打たせたのでしょう。

それが入ったために、初優勝を味わう時間が激減してしまった、というわけです。

ホールアウト後、山城と泉田が粋な気遣い

山城と泉田が気を利かせたのはこの後でした。

全員がホールアウトすると、グリーンサイドで待っていた仲間が内田を祝福します。

ですが、競技はスコアカードを提出するまでは正式には終わっていません。

提出所はクラブハウス内だったので、内田は感動を分け合うのもそこそこに引き上げようとします。

この時、山城と泉田は内田の前を小走りで引き上げて行ったのです。

これはグリーンからクラブハウスに引き上げる“ビクトリーロード”を、地元のファンに存分に祝福されながら歩いてほしい、との気遣いだったのではないでしょうか。

一緒に歩くとそんな雰囲気にならないかもしれない。
かといって勝者を称える形で先に歩いてもらうのも、後ろから急かしてしまうようなことに….。

早々に引き上げたことで、内田ひとりだけの花道の出来上がり、です。

初優勝を祝福する、初優勝がならなかった“グッドルーザー”

嬉しい初優勝。それも地元で史上5人目の快挙付きという感動を存分に味わってほしい。
それを引き立てたのは、優勝経験のない山城と泉田でした。

勝負の世界で生きるプロゴルファーですから、初優勝を目の前で見た悔しさも少なからずあったはずです。

そんな状況でも勝者を称える気遣いができる人間性の持ち主が集まっているツアー。現在の盛況の理由が垣間見えたようなシーンでした。

(文/森伊知郎)