渋野日向子の強さ徹底解説|アイアン&スイング編
シブコの強さ''徹底解説''アイアン編
さあ、ここではツアープロコーチ・青山充に渋野日向子(しぶのひなこ)の「曲がらないアイアンショット」の秘密を解説してもらおう。
●型破りシブコ|渋野日向子テクニック&キャラクター
Part1:“世界のスマイル・シンデレラ”を徹底解剖!
Part2:シブコの強さ''徹底調査''ドライバー編
Part3:シブコの強さ''徹底解説''アイアン編
Part4:シブコの強さ''徹底解説''パッティング編
Part5:今明かされる、シブコのすべて
解説
青山 充
あおやま・みつる。
1971年生まれ。片岡大育や仲宗根澄香ら多くのツアープロをコーチ。フライトスコープやGEARSといった最新システムを駆使した、科学的なアプローチと見識に基づいた解説、レッスンに提供がある。
どんな時も強気にピンを狙える秘密は、左腕を外転した構えと“詰まらない”下ろし方にあり
ジョン・ラームや D・Jの要素が入った世界標準のスイング
渋野さんのスイングは、アイアンショットにおいても曲がらない要素に溢れています。
まず、アドレス時に左ヒジが左腰骨を指すくらい外転しているという点。これなら、土壇場で緊張しても、叩きにいってもフェースが急激に返ったりしません。
そして、切り返しからのクラブの使い方。左手首を屈曲(掌屈とも言う)させてフェースをシャットにした後、ハンドパスを体の前方向に向けます。これによって、インサイドシャローなダウンスイングとなります。さらに、右腕が詰まらないから、手元が浮かず、前傾もキープしたまま、思い切り振り抜けます。だから、振り遅れないんですね。また、先天的に高いであろう身体能力を生かし、体を使って振り切るため、インパクトの精度が高いんです。
シャットなフェース使いによるボールの上がりにくさをカーボンシャフトでカバー
i210アイアン(#5~#9、PW)
フェースをシャットに使って、
ハンドファーストにとらえる渋野の場合、ロフトが立ってインパクトするため、高さが出にくくなる。「おそらく、そのために球が上がりやすいカーボンシャフトを入れてみよう、となったのではないでしょうか」(青山)
フジクラMCI-80(R)
渋野日向子のスイング 第1印象
常に同じリズム、バランスでスイングできるのはすごい
「試合の終盤になってもリズムが変わらず、打ち急いだり、力んで重心が浮いたりというスイングがありませんでした。笑顔というトリガーで最高の身体状態を生み出すメンタルと、振り切ることで安定を導くショット力が素晴らしいと思います」
前傾のキープ力に身体能力の高さを感じる
「重心が低くなるハンドダウンの構えから、前傾を崩さずにインパクトができる点に、基礎的な身体能力の高さを感じます。通常、始動時にあれだけ重心が低いと、ダウンスイングで反動が生じてインパクトで上体が浮きますからね」
左腕が外転した構えがROCを小さくしている
「左腕を外転して構えているということは、ROC(レイトオブクロージャー)が小さくなる状態を作ってスイングしているということ。だから、思い切り叩きにいっても、急激なフェースのターンが生じないんです」
※ROC/レイトオブクロージャーとは、簡単に言えばインパクト時のフェースの閉じ具合のこと。ROCが小さければ、ゆるやかにフェースが閉じているということ。大きければ、急激にフェースが閉じているということになる。
インパクトエリアでフェースが急激にターンしない構え
アドレスで左腕が完全に外転(左に回った)しているため、インパクトエリアで外転しようがない。これは、ウィークグリップで構えているのと同じようなもの。
インパクト時の左腕が、アドレス時と同じ外転位置
アドレス時とインパクト時の左腕の外転位置を見比べると、まさに瓜二つ。渋野のアドレス時の左腕の外転位置が、正確なショットの大きな原因のひとつになっているということの証とも言える。
現在の世界標準とされる切り返しとダウンスイングでの “クラブ使い”
「まず、特徴的なのが切り返しでの左手首のフレクション(屈曲)です。それによって、フェースをシャットに使い、インサイドシャローのポジションからアタックしています。ハンドパスを若干体の前に持っていき、ダウンスイングすることによって、腕が詰まることなく振り切ることができています」
通常は、切り返し時に手元を体の前に動かすとカット軌道になる。渋野がインサイドシャローに振れるのは、体の正しいシークエンス(運動)があってのこと。アマチュアがこの形だけを真似するのはオススメしない。
左手首の屈曲でシャットフェースに
ダスティン・ジョンソンなどにも見られる切り返し時の左手首のフレクション(屈曲)によってフェースをシャットに使えるようにしている。この後、ハンドパスを、ほんの少し体の前に向けてインサイドシャローに下ろしていく。
切り返し以降はパームダウンしてシャットフェースを崩さない
ダウンスイングではパームダウン(右手のヒラが地面を向く)させることで、シャットフェースをキープ。そのまま腕が詰まることなく振り切られるので、精度の高いインパクトになる。
腕が詰まらないから思い切り振り抜ける
切り返し時にハンドパスがやや体の前方に向くことによって、手元が前、クラブは後ろ、という関係性が作られる。その結果、手元を低い位置に下ろせて、腕を詰まらせずに振り切れている。
撮影トーナメント/ ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ、資生堂 アネッサ レディスオープン、北海道 meiji カップ、NEC軽井沢72ゴルフトーナメント
GOLF TODAY本誌 No.568 26〜27ページより
【関連】
・渋野日向子の強さ徹底解説|ドライバー&スイング編