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【対談】マツモト・タスク×三觜喜一|『Jacobs 3D』がもたらすもの

2020/05/06 ゴルフサプリ 編集部

独学でゴルフサイエンスを学び「Jacobs 3D Golf」のアンバサダーになったマツモト・タスク。かたや指導の現場でスイングを見続け、プロを輩出してきた三觜。その邂逅をとりもったのは「ゴルフの力学」だった。「Jacobs 3D」をよく知る2人が最先端テクノロジーに託すものは何か?果たして日本のスイング指導に未来はあるのか?互いの実体験を通して今後のゴルフ界を展望する。

マツモト・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。「Jacobs3DGolf」アドバイザリーメンバーにして国内ただ一人のアンバサダー。USGTF(全米ゴルフ教師連盟)、TP(Iタイトリストパフォーマンスインスティチュート)のライセンスも保持。

三觜喜一
みつはし・よしかず。1974年生まれ。PGAティーチングプロ。日本で唯一ジェイコブス3Dシステムが使える「三觜ゴルフアカデミー」(大箱根CC)を主宰。YouTube登録者は21万人超え

『Jacobs 3D』で日本のゴルフ指導は変わる!

タスクは三觜の教えに心酔しゴルフサイエンスを学びながらレッスンを受けた。

3Dが理解できず物理と数学を1からやり直す

タスク 仕事でイギリスに長くいた関係で、私は2000年代に入ってもなおパーシモンヘッドのドライバーを使っていました。日本に帰ってきてからいきなりデカヘッドに替えたものの、メタルを経験していなかったせいか全く打てず、ボールを置きに行くゴルフに甘んじていました。「まずい」と思って多くのプロの元で体験レッスンを受けたり、レッスンDVDを観まくりました。その過程でアメリカのゴルフ研究にも触れたところ、日本の研究の浅さがわかった。まだマイナーでしたが、アメリカではスイングを3Dで語るグループもあり、1冊だけ出ていたマイケル・ジェイコブスの本を読みました。でも、全く理解できず物理と数学を1からやり直しました。

三觜 僕は3Dなんて最近まで全く知らなかった。レッスンを始めて10年くらいは失敗オンリー。「ゴルフって何を教えても上手くならない」と思っていました。30歳の時に試合で石川遼くんと会って、もう選手としては絶対無理だと思い、彼みたいなプレーヤーを育てようと一念発起して勉強しまくりました。簡単ではありませんでしたが34歳の時に男子プロを送り出せて、そこでやっと自分の中に確信めいたものが出てきた。そんなタイミングで入ってきたのが辻梨恵ちゃんで、彼女にも同じことを落とし込んだら、100も切れなかった子がたった1年で関東のチャンピオンになったんです。

ジェイコブス3Dの解析結果は、三觜の教えを強力に後押しした。
「シャット→オープン→シャット」。ジュニアにはクラブを右旋回させることを教えてきたという三觜。

初めてのシャローアウトがとりもった三觜との縁

タスク その時は何を教えていたのですか?

三觜 簡単に言うと「シャット→オープン→シャット」。クラブを右旋回させて打つことです。みんなどうしてもボールに対してフェースをブツけに行くので、フェースを閉じながら打とうと教えました。その時からやっていたのがパート2で紹介したカゴドリル。あれがスムーズにできる子はみんなうまく振れました。アップターンドリルについてはもっと前からやっていましたが、正直、どういうメカニズムで当たるのかわからなかった。ただ、うまく当たるようになるのでずっと続けていただけです。当時中学生だった梨恵ちゃんもアップターンドリルばかり。ただ、各々に効果が出ることで共通のメリットが見つかってきた。みんな同じクラブの使い方になったので、それが確信になってからは毎年プロを送り出せるようになりましたね。

タスク DVDを観まくっていた頃、今のように情報発信されてなかったせいもあって、私にとって三觜さんは遠い存在でした。しかし、その教えは直感的には正しいんじゃないかと思っていました。で、たまたま教わっていた鈴木真一プロが三觜さんのお弟子さんだった。なぜ鈴木プロに教えてもらったかといえば、今まで一度もできなかったシャローアウトが初見でできたから。それでぜひ三觜さんにも教えていただきたいと思った。合宿に参加させていただくと、クラブが仕事している感じになってすごく飛んで「これだ!」と思いましたね。まだ3Dの勉強は初期段階でしたが、うまくリンクして落とし込めました。

肉眼だけで見ていた問題点をデータでも確認できる

三觜 ジェイコブス3Dで解析したデータは、僕が選手たちに伝えていることの裏付けになります。今年のオフに、タスクさんが合宿先の高知まで来て選手のデータをシェアしてくれましたが、それが面白かった。タスクさんが夜に来られて「こういうデータが出ているからこうしたほうがいいです」とアドバイスしてくれたのと全く同じことを、まさにその日の朝、僕が選手に教えていたんです。間違ったことを伝えなくてよかったと思いました。

タスク GEARSで計測したデータをジェイコブス3Dで解析し、返ってきたデータでしたね。三觜そこでもしデータと整合性がとれなければ、その日に教えたことは全部ボツ。正直ドキドキだったんですが安心しました。僕はこれまでモーションキャプチャーや計測データを拠り所に選手に手を施すことはありませんでしたが、ジェイコブス3Dのデータは全く異質でした。プレーヤーのスイングを見る時、僕はクラブの挙動しか見ません。体の動きは結果論なのでほとんど見ないのですが、自分が見えている世界がデータとして目の前に出された感じで、なるほどと思った。もちろん100%合っていることはありませんが、肉眼だけで見ている問題点をデータで見せてもらったことで、もっと良くなるプラスアルファがたくさん出てきたのです。

日米女子プロに見るインパクト時の重力負荷の違い

三觜 例えば僕が教えている髙木優奈の場合、ジェイコブス3Dのデータ的にはPGAのトッププレーヤーとほぼ同じ。ただ、インパクトの瞬間だけちょっと合わせる動作の原因になるキネティクスの問題があって、詰まり気味になるのが気になっていました。加えて、体をダイナミックに使うタイプなので疲れてもたないんです。なので「もっとおとなしくスイングしよう」が去年からのテーマだったのですが、データを見たら全然おとなしくなっていなかったことがわかりました。

タスク 彼女はトップが小さいスイング。その段階でクラブからボディ側に与えられるローテーショナルレジスタンス(抵抗)が激しいんです。体を大きく切り返すので大きな抵抗がかかる。ショートアームで切り返す場合、正しくグリップを引くベクトルさえ作れればとても良くて、彼女にはそれができます。ただ、これだけ大きく体を使って切り返すと、例えばライが良くない状況や、タイミングがちょっとズレると危ないというデータがあるんです。アメリカの女子プロは全体的に、抵抗が少ない位置までクラブを上げてサラッと打っています。

三觜 去年までは体も小さく全身を使っていたので1年間もたない。だから、いいか悪いか成績がハッキリ分かれる。年間を通じて安定した成績を出すのが難しいので、一昨年ステップアップに出られることが決まった時に勝つ試合を狙い撃ちしました。欧米っぽいスイングなので洋芝も苦にならないから北海道で勝とうと計画し、優勝しました。

髙木優奈
(グランフィールズCC)
1998年5月13日生まれ。神奈川県出身。ツアー初年だった昨年のステップアップで優勝。今季はQT43位からツアーに参戦、シード権ゲットと優勝を狙う。

[Jacobs 3Dデータで観測]ダウンスイングに表れる日米女子プロの決定的な違い

日本の女子プロの中で大勢を占め、一般的であると分析・判断したスイングに「日本の女子プロ」のスイングと、同じように「米国の女子プロ」のスイングをジェイコブス3Dのデータで比較。タスク氏に解説をしてもらった結果、その違いはダウンスイングに顕著に表れていた。日本の女子プロは、エネルギーを無駄に消費していた!?

「Jacobs 3D」による日米女子プロのダウンスイングデータ比較

[βフォース]日本の女子プロは切り返し直後からβフォースを強大にかけ続けるのが特徴。それは強烈な横振りをしていることを表す。米国の女子プロはキャスティングモーションを優先させるためダウンスイング以降でβフォースがかかり始める。

  • 赤い矢印がβフォースを表しており、切り返し直後から矢印が長く伸び、フォースが増大していることがわかる。

  • 左の日本の女子プロと比べてβフォースの大きさを示す赤い矢印が小さく、発生タイミングも遅い。

[γフォース]高いトップから横振りに入る日本の女子プロは正しいグリップポジションの維持をγフォースのベクトルで強引に確保しようする。つまり、引くベクトルが違うので身体を無理やり使い、ボールに伝わらない無駄なエネルギーが生じる。

  • 切り返し直後から赤い矢印が伸び続け、γフォースが増大していることからも横振りを行なっていることがわかる。

  • γフォースの増え方から無理なトルクをかけているふうには見えず、自然なクラブの動きがイメージできる。

[ダウンスイング時のトルク]高いトップから横振りに入る日本の女子プロは正しいグリップポジションの維持をγフォースのベクトルで強引に確保しようする。つまり、引くベクトルが違うので身体を無理やり使い、ボールに伝わらない無駄なエネルギーが生じる。

  • このグラフからわかるのは、発生した余分なローテーションに対して相殺するトルクを加えてエネルギーを浪費しているということ。

  • 日本の女子プロに比べて半分足らずのトルクしかかかっておらず、エネルギー効率の良さが伺える。

[インパクト時の重力負荷]米国の女子プロのインパクト時の重力負荷は70Gに満たないが、日本の女子プロは概ね100-150Gに達する。非効率にかけざるをえない莫大なトルクにより、遠心力MAXのインパクト時に身体側に莫大な負荷がかかっているということ。

  • 150に達する重力負荷体への負担大

  • 重力負荷は70未満体への負担小

日米女子プロに見るインパクト時の重力負荷の違い

タスク これは日本の女子プロの宿命なのですが、体が小さいこともあって、飛ばすには位置エネルギーを使わなきゃいけないと思いがち。それでトップで手を高い位置に上げます。するとヘッドとボールの距離がすごく離れるため、戻すのに特殊なフォースを使わないといけない。優奈プロのみならず、みなさんに共通するところです。

三觜 僕もそこは教えたのですが、アイアンはいいがドライバーは非効率だった。ドライバーは飛ばしたいという思いがピークになりますから。アメリカのツアープロは「我々はドライバーは重視していない。アイアンのスイングをしている」と言います。だからドライバーは曲がってもいいという考え方らしい。確かに1年間を通して考えると、飛距離も大事ですが楽に効率よくすることが重要。それには頑張って打たなくてもいい。

タスク そうですね。データ的にはそれがよく出ています。ちなみにLPGAツアーのプレーヤーの場合、インパクト時にかかる重力負荷は70Gもありません。これに対して日本の女子プロの重力荷重は軒並み100Gを超え、なかには150Gもの値を記録するプロもいます。アメリカの女子プロもドライバーでは120Gになることはありますが7番アイアンでは皆無です。

三觜 今年になってそのデータが出てきたら、優奈の姿勢がガラッと変わりました。彼女は僕が言うと口答えしてくる。「そんなこと言っても飛ばないじゃん」と。でもそのデータで口を封じられた。論より証拠。女子を教えているコーチとしては最高の優越感に浸れました(笑)。真面目な話、科学的根拠がないと選手が不信感をもつ恐れがある。それがコーチとの不和を生む可能性もあります。ジェイコブス3Dを使えると、これだったら間違いないと言えるものが手に入るので選手との信頼関係も築けます。梨恵ちゃんもすごく質問をしてくるようになりました。今までは自分なりにやって試合で試して「こうしています」と事後報告するだけでしたが、今はやる前に意見を求めてくる。結果はこれからですが感謝ですね。

厳粛なる事実に目が行けば日本のゴルフは変わる

三觜 ジェイコブス3Dはグローバルスタンダードの先頭を走っていますが、残念ながら普及しづらい。アンバサダーがタスクさんしかいないとなるとゴルファー全員にはシェアできません。そうなるとプレーヤーと直に接する我々が最低限の原理原則を網羅しておかなければいけない。アマチュアの方に落とし込む方法は、それぞれでいいと思います。

ただ、ここまでスイングが丸裸になると、感覚論や2次元データをもとに指導するわけにはいきません。もしアマチュアの方がジェイコブス3Dを通じてクラブの力学を把握したら、理にかなっていない指導は一発で見抜かれます。そうなった時にはかなりの問題になる。自分が習っている先生を嘘つき呼ばわりする生徒さんが増える可能性もあります。

タスク 私も正しいことを普及したい気持ちはありますが、ジェイコブス3D以前に、日本では圧倒的に正しいことが伝わっていなかった。その原因の一つはゴルフ界の組織が正しいことを知ろうとしなかったこと。ここを是正することがまず必要だと思います。ジェイコブス3Dをきちんとやると、今まで正しいと言われていたこと、今すごく流行っていることなどが、アマチュアゴルファーにとってはノーになります。プロのようなフィジカルがない限り、絶対にやってはいけないことがあるのです。それをどう伝えるか。いずれにしても、ここ3~4年の解析技術とその結果は、今後のゴルフ界にものすごい影響を与えるはずで、それをきっかけに変わっていかきゃいけない。キネティクスが明らかになったのは400年のゴルフの歴史の中で初めてで、これは目を背けてはいけない部分で絶対にシェアされなければいけない。ここに全てのゴルファーの目が向けば日本のゴルフは確実に変わります。

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