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inpres RMX UD+2|期待されない船出から販売予定数量3倍の飛び系アイアンの登場

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]

2021/10/08 ゴルフサプリ編集部

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]

ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のあるフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はinpres RMX UD+2が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.592/68ページより

7番で200ヤード!「このクラブやばいね!」と思わず言わせる飛ぶアイアンを開発し始めたが……。

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]
商品の名前はコンセプト通りに、「U=ウルトラD=ディスタンス」で、更に「+2=2番手の飛び」ということで、「UD+2」という商品名に。
商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]
商品開発のストーリーを語ってくれたヤマハ株式会社ゴルフHS事業推進部 マーケティングGリーダーの柴健一郎氏。
商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]
広告のコピーも飛ばしを前面に押し出している。

飛び系アイアンの時代を先導したヤマハ「inpres RMX UD+2」が発売されたのは2014年。飛び系アイアンは現在ゴルフ市場で一定のポジションを確保、もっと言えばスタンダードになっている。この時代を先駆けたアイアンを開発し、現在はヤマハ株式会社ゴルフHS事業推進部 マーケティングGリーダーの柴健一郎氏にお話を伺った。

柴氏はヤマハの他部門から2001年にゴルフ部門に異動し、2002年からアイアン開発の専任になった。2003年からスタートしたインプレスブランドの立ち上げなど、商品開発畑で仕事を続けていた。

UD+2の開発は、発売のおよそ2年前からスタートしていた。研究開発で、いろいろな可能性を探っている中で、「飛ぶアイアン」も一つのテーマとしてあがっていた。  

ヤマハの過去のクラブの中で1990年後半に「グランディス602」という飛ぶアイアンを発売していたが、「グランディス」は高性能アイアンでいわゆる飛ばすことに特化したアイアンであった。純チタン鍛造ボディに反発の良い15-5-3チタン合金のフェースを溶接し、キャビティのポケット部分に比重の重いタングステンを嵌合し、超低重心、深重心のアイアンであった。

このアイアンは凄いなというイメージがあった。7番で打つと、200ヤード近く飛ぶので、打って面白くなる。他の開発メンバーに打たせても、「面白い」「このクラブやばいね」との声であった。このアイアン面白いねという単純な理由で、飛ぶアイアンを作ろうと思った。ただ、この「グランディス」はヘッド単価が1万円以上していた。今のヤマハの技術で作ったらどうなるか、トライすることになった。飛ぶアイアンの答えは、このアイアンから見えていた。ボール初速を上げるために、ロフトを立て、反発の良い材料を使う、ボールを高く上げるために低重心、深重心にすることである。ある意味、開発者としては楽なはずであった。

「誰が使う?」「誰が買う?」商品開発よりもコンセプトの落とし込みに1年以上の時間を要したが……。

発想から発売までは約2年間の時間を要した。基本となるモノの開発は順調に進んでいった。7番アイアンの高い弾道で、5番アイアンの飛びを実現するための、構想は明快であった。どのような構造にするか、どんな材料を使うか、製造技術などの課題を解決していき、モノは満足いくものが開発できていった。

次のステップとして、商品化のために企画をあげたが、思った以上に進まなくなった。「このアイアン誰が買うの?」「シニアが使うの?」「そもそもアイアンは飛距離でなく、正確な距離を刻むものでは?」「このアイアンを欲しいと喜ぶ人の顔が見えない?」など、アゲインストの風が吹いて、企画を上げてから発売まで1年以上かかった。実は、モノの開発より時間がかかってしまった。

転機が訪れたのは、2013年インプレスRMXドライバーのアジャスタブルの商品を発売し、社内で多様な幅をもった商品を出せる風が吹いてきたのだ。2014年当時のカタログをみると、カタログページの最後の方に掲載されている。シャフトのラインナップもRのみで、メイン商品ではなく、それほど売れることを期待されていない船出であった。

クラブの名前は、分かりやすいものにしようということで、すごく飛ぶといつことで「U=ウルトラD=ディスタンス」で、さらに「+2=2番手の飛び」ということで、「UD+2」という商品名にした。広告も7番アイアンのビジュアルに「今の5番?」「いや、」のフレーズを入れ、飛びを訴求した。

市場に出してみて、大方の予想に反して販売は最初から良かった。さらに、社内の営業を洗脳することを徹底していった。

ヤマハの営業は実業団の野球部上りが多く、ガタイの良い営業に試打させると7番アイアンで230ヤード飛ばし、「このアイアンはなんだ!!‌」と。飛ばない社員に打たせても160ヤード飛び、理屈より先に自分たちが味わった感動、面白さを共有してもらった。まず社内を味方につけ、販売店様も同様に試打してもらったのだ。
「理屈抜きに打ってもらうと驚くんですよ」柴氏は当時のことを振り返っていた。初代の「UD+2」は売り上げを順調に伸ばし、ロングセラーとして、通常2年の商品ライフサイクルが、3年間販売を続けた。

さらに、「UD+2」の飛びの評価が上がり、飛びのブランドとして独立した。2016年秋には新商品として2代目とし、今まで、「inpres RMX UD+2アイアン」であったが、「inpres UD+2」として、ドライバー・フェアウェイウッド・ユーティリティ・アイアン、さらにレディスまでのすべてのクラブに「UD+2」が付くブランドとなった。アイアンの販売予定数量も3倍以上に膨れ上がった。そして最新シリーズは4代目を数えている。

飛びに勝るゴルフの面白さはないのかもしれない。

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第9回]
アイアンのラインナップの中でも飛びに特化したユーザーイメージ。


取材・文/嶋崎平人


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