トップでクラブを「右回り」に小さく動かして、最適なグリップ圧を見つけよう!!
大西翔太コーチが教える「ゴルフスイングのツボ」 VOL.16
理論をわかりやすく展開し、実戦ですぐに役立つレッスンで大人気の大西翔太コーチ。
その大西コーチが、誰も知らなかったゴルフスイングのツボをこっそり教えてくれた。第16回は前回に続いてグリップの握り方のポイントを解説。両手を正しく握ることも大事だが、クラブを気持ちよく振るには両手の力加減にも十分に気を配ろう。
手首が自然に稼動しやすく、クラブをシャープに振れるグリッププレッシャーがベスト
両肩を脱力し、首が長く見えるような構えがつくれる握り加減が大事
皆さん、こんにちは。ツアープロコーチの大西翔太です。今回もグリップについて説明していきたいと思います。Vol.15でもお話ししたように、グリップはカラダとクラブをつなぐ「ジョイント」の役目を負っています。両手を正しく握ることでクラブを正しい軌道で振りやすくなるのですが、形だけに目を向けるのはちょっと危険です。グリッププレッシャー、つまり両手の力加減にもしっかり目を向けて頂きたいと思います。両手の握り圧はある意味、両手を握る形よりも重要といってもいいくらいなのです。
両手の10本指でどこに一番力を入れるかといえば、左手の小指、薬指、中指の3本です。力を入れるというよりも、小指側の3本をグリップにしっかりと巻きつけて締めておくという感覚です。右手は中指と薬指の2本が中心です。この2本もグリップに巻きつけて、左手の3本と右手の2本の計5本の指をグリップにフィットさせておくように握りましょう。この5本指だけでクラブを持ち、素振りすると5本を締めておく感じがつかめます。
スイング中にグリップが緩まないようにするためには、両手とも親指と人さし指のツケ根を締めておくのも大事ですが、この部分を締めるだけで親指と人さし指にはあまり力を入れないこと。力が入ると両腕の外側の筋肉が緊張し、肩が硬くなりやすいからです。両ワキがあいて、首が短く見える怒り肩型のアドレスとなり、クラブがスムーズに振れません。要はグリップがジョイントの役目を果たさなくなるのです。
その点、左手の小指側の3本と右手の2本で持つ感じを出すと、両腕の内側の筋肉がほどよい張りが感じられて、両ワキが自然に締まってきます。両肩がストンと落ち、なで肩型のアドレスがつくれます。バックスイングでも左肩がアゴの下まで深く入りやすくなり、ダウンスイング以降でもクラブを正しい軌道に乗せやすくなります。両手のグリッププレッシャー次第でアドレスが変わりますし、カラダの動きやスイングの軌道に大きく影響するということを頭に入れてください。
トップのポジションでクラブを右回りに動かせるかどうかをテストしてみよう
では、両手をどのくらいの強さで握ればいいかというと、これには個人差があります。一般的にいって右利きの人が多いですから、右手に余分な力が入りやすい方が多いことと思います。そうした意味で両手の力配分のバランスからいえば左手6、右手4くらいがいいといえるけれど、人によっては左右均等の握り圧のほうがクラブを振りやすいという人もいます。クラブをスピーディに動かせるようなグリップが大事ですから、自分自身でクラブを動かしやすい握り圧を見つけるのがいいでしょう。
全力を10とすれば3〜4くらいの力感でもいいですし、5〜6でも構いません。強く握りすぎると手首が硬くなりやすいので、手首を自然に稼働できるような力加減が理想的。クラブを両手で持ち、グルグル回すように素振りして自分の感覚にマッチしたグリッププレッシャーをつかむのもいいですが、ぜひテストしてもらいたい方法をお教えしましょう。トップの位置にクラブを上げたところで、クラブヘッドを自分から見て右回りに小さく回してください。このときにクラブをスムーズに回せるような力加減がベストといえます。
左手の小指側の3本が緩むことがない。強すぎてもいないし、弱すぎてもいない力感。しかもヘッドの動きを手のヒラで感知しやすいグリッププレッシャー。これが大事です。トップでクラブを小さく右回りできるということは、ダウンスイングでクラブをインサイドから正しい軌道で振り下ろしやすくなることに通じます。両手を強く握りすぎると手首が硬くなるため、トップでクラブを右回りに動かしにくく、左回りになりやすいですから注意が必要です。
オーバーラッピングやインターロッキングなどの握り方にはそれぞれの長所がある
今度はグリップの種類について説明しましょう。両手の握り方には右手の小指を左手の人さし指に重ねるオーバーラッピンググリップ、右手の小指と左手の人差し指を絡めるインターロッキンググリップ、左手の親指をグリップの真上に乗せるだけで両手を分離させるベースボールグリップの3つがあります。野球の経験のある人や、初心者の方はベースボールグリップで握ることにあまり違和感はないでしょう。右手の力を活かしやすい利点もあるので、力があまりなくてクラブを速く振れない人や女性ゴルファーにもオススメです。
手の小さい人や指の短い人、力のない人はインターロッキンググリップで握るのがいいという説もありますが、そうともいい切れません。タイガー・ウッズのようなパワーヒッターでもインターロッキングに握るプレーヤーも多く見られます。インターロッキンググリップは両手を詰めて握るので両手の一体感やが生まれやすく、両手のパワーを均等に保ちやすいのが長所です。
もっとも多くのゴルファーに採用されているのがオーバーラッピンググリップで、これはインターロッキンググリップよりも両手を少し離すことで右手のパワーを生かしやすくなります。ベースボールグリップに握るよりは右手のパワーがセーブされるので、そこに両手のバランス感覚を求めるゴルファーが多数派といえます。最初はベースボールグリップに握っていても、経験を積むうちに握り方を変えるのも自然な成り行きだと思います。
いろいろなグリップを自分で試してみて、握ったときの感覚や感触、トップの位置でクラブを小さく右回りに動かしたときの感覚などもチェックして、自分にとってのベストのグリップを見つけ出してください。
最後に動画でチェック!
手首を自然に稼動できる握り圧がベスト
※動画はショット音が流れますので音量にご注意ください。
取材・文/三代 崇
写真/渡辺義孝
協力/船橋カントリークラブ
大西翔太
おおにし・しょうた/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアの育成に尽力する一方で、青木瀬令奈のコーチもつとめる。メンタルやフィジカルの知識も豊富。女子ツアープロの大西葵は実妹。