アメリカチーム圧勝のライダーカップ。タイガー、ミケルソンがいた時との違いとは!?
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第11回
初日からアメリカチームがぐいぐいとポイントを稼いで、その勢いが最後まで止まらなかった今年のライダーカップ。両チームとも名誉をかけて戦ったキャプテンと選手たちの熱い思いはプレー中はもちろん、試合の決着が決まった後のインタビューからも強く伝わってきた。やはりライダーカップは別物だ。
今回のアメリカ圧勝の勝因を、米国在住のレックス倉本氏が分析した。
タイガー&ミケルソン時代は、アメリカチームがボロ負けの歴史だった
誰にもわかりやすいところで、今回のアメリカチームは今まではありえないくらいの最強の布陣を敷いていました。平均年齢が29歳と若いチームではあったものの、今回の12人の世界ランキングの平均が8.9位!そして、初日のフォーサムの午前中の対戦で勝った方が勝利へのアドバンテージが取れると前回のプレビューで話しましたが、その対戦をアメリカチームが3対1で勝ち、地元開催ということでギャラリーの大声援を受け、そこからアメリカチームの独走が始まりました。
次に、ダスティン・ジョンソンが今回のチームでは最年長者で、過去のタイガーやミケルソンの立場とは微妙に違うリーダーシップが取れていたこと。そのジョンソンは5勝0敗の大活躍。過去アメリカチームで5勝0敗した選手はラリー・ネルソンやアーノルド・パーマーら数人しかいないというくらいの快挙。結果的にジョンソンは他のチームメイトらを変に威圧することのない、若い選手に慕われながらもからかわれるようなタイプで皆が一目置くような立場だったことで、若返りしたアメリカチームのリーダーシップがうまく取れていたんだと思います。
ここで少し過去のライダーカップを見てみると、アメリカゴルフの歴史上絶対的な強さと地位にいるミケルソンとタイガーを中心にしたチーム編成だったと言ってもいいと思うのですが、意外なことにタイガー&ミケルソン時代のライダーカップはアメリカチームがボロ負けの歴史だったんです。ミケルソンは過去12回ライダーカップに出ていてその間アメリカチームは3勝9敗。タイガーは過去8回出場でアメリカチームは1勝7敗です。
このふたりが中心となって強くあるべきアメリカチームがライダーカップに勝てないひとつの要因は彼らが偉大すぎるということ。ライダーカップの初日、2日目のフォーサムとフォーボールのチーム戦でこのふたりは主力なのでほぼほぼ全てのマッチに出場したのですが、彼らが偉大すぎるので一緒にペアを組む選手が萎縮してしまうんです。実力が違いすぎてベストパートナーが作れない。キャプテンも色々と工夫はすれどもなかなか機能しない。例えば、タイガーのフォーサムでの過去の記録は4勝9敗1分け。フォーボールでは5勝10敗6分け。ミケルソンは、フォーサムでは5勝8敗4分け。フォーボールでは8勝8敗2分けでやっと五分。この歴史に残るふたりがいて強いはずの初日2日目のチームマッチでポイントを取れないとアメリカチームの士気も下がり、アメリカチームが大きく負け越しているという歴史が続いていたのです。そして、今回このふたりがいろんな意味で出場することができずアメリカチームが若返りました。ジョンソンがタイガー、ミケルソンとは微妙に違った立場でリーダーシップを取ることができ、今回ストリッカーがザンダー、モリカワとペアを組ませることでジョンソンが5勝0敗の記録を達成しました。
さらに、ストリッカーは、若い12人のチームを地域ごとのグリープに分けました。例えば西海岸のザンダー、モリカワ、キャントレー。テキサスつながりのデシャンボーとシャフラー。南部つながりのトーマスとスピース。これはジュニア時代から一緒に戦って仲の良い選手同士なので気心がしれていてペアとしては最高の組み合わせができ、それが今回はめちゃくちゃうまく機能したと言ってもいいでしょう。
とにかく今回はいろんなことがパーフェクトストームのようにアメリカチーム勝利へとうまくハマりました。キャプテン・ストリッカーの勝利への工夫はもちろんのこと、テレビに極力自分が映ることを避け前面に出ることなく、徹底して選手がやりやすいように選手を中心に試合を進めるという選手への気遣いも感じられる試合でした。それが今回のアメリカチームの結束力をうまく引き出したのではないかと私は感じます。これでは戦う欧州連合も辛かったに違いありません。
ここに書けなかったキャプテンがキャプテンピックでリードではなくバーガーを選んだ理由や開催地とアメリカチームの選手たちとの関係などなど、さらに詳しいライダーカップの分析の続きは、下記「レックス倉本のBYTC GOLF」のYouTube音声動画で引き続きお楽しみ下さい。Podcast、Himalayaでも配信中。「レックス倉本」で検索してください。
▼レックス倉本 プロフィール
本名は倉本泰信(くらもとやすのぶ)。1991年プロゴルファーに転向/コメンテーター歴14年広島出身。広島カープの大ファン。毎朝、目覚めとともにカープの試合状況をチェックするのが日課。大学時代をアメリカで過ごしたとき、唯一日本のブリヂストンのボール”Rexter”を使っていたのでゴルフ部のチームメイトから”REX”(レックス)と呼ばれるようになる。アマチュアゴルファー時代は、広島県の瀬戸内高校ゴルフ部からアメリカのオクラホマ州立大学を経てイーストテネシー州立大学ゴルフ部で腕を磨く。在学中には2度オールアメリカンに選出され、1990年に日本アマチュア選手権優勝、全英オープン出場を果たす。大学卒業後、1991年に日本のプロテストを合格しプロデビュー。その後、ヨーロピアンツアー、カナダツアー、アジアツアー、日本国内ツアー(1995年2部ツアーの賞金王に輝く)に参戦。2007年より米国ゴルフチャンネルでUS PGA Tour 、European Tour、US LPGA Tourなどのコメンテーターとして活躍。現在はフリーランスとしてGOLF TVでの解説のほか、 NHK、WOWOWでUS PGA Tour、US LPGA TOURの現地レポーターとしても活躍中。