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パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |テーラーメイド ステルス【ギアモノ語り】

2022/02/04 ゴルフサプリ編集部

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

新作ではなくて、新しい時代―。1979年にテーラーメイドが世界初のメタルウッドを発売したことで、ドライバーの歴史は、パーシモンからメタルウッドの時代に突入。そして2022年、テーラーメイドはカーボンウッドを発表。ふたたび、ゴルフクラブの新しい時代を作ろうとしている。

GOLF TODAY本誌 No.597 81〜85ページより

22年前から極秘でカーボンの開発を続けていた

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

ただの新作ではないことは、開発期間からもわかる。『ステルス』の開発がはじまったのは2000年。テーラーメイドがまだ『300シリーズ』を発売していた時代から“ステルス”と呼ばれた極秘プロジェクトは動いていた。

「米国のテーラーメイド本社でも、その開発の詳細を知っていた者はほとんどいませんでした。一部の限られたメンバーで長年にわたって極秘裏に進めていた開発プロジェクト。その開発期間のコードネームが隠密とか、レーダーに探知されないことを意味する『ステルス』だったのです」

そう語ったのは現在、テーラーメイドゴルフ(株)でプロダクトディレクターを務める高橋伸忠氏。高橋氏が『ステルス』の存在を知ったのは、いつだったのか?

「2018年頃です。当時は『M5/M6』を発売していましたが、情報としてカーボンフェースが製品化できそうだということが入ってきました。しかし、今までのチタンフェースとは全く違う構造なので、量産体制もイチから作らないといけません。その生産が本格的にはじまったのが2020年以降です」

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】
テーラーメイド ゴルフ株式会社 ハードグッズプロダクトアジアディレクター 高橋 伸忠

過去にテーラーメイドからは2013年に『グローレリザーブ』などカーボンフェースのドライバーを発売しているが、あれはどういう位置付けだったのか?

「日本とアジア限定で発売した『グローレリザーブ』は、その時点では最高のものだと思っていましたが、そこがゴールではありませんでした。『グローレリザーブ』からもフィードバックを経て、さらに良いものを目指していました」

カーボンウッドの開発にはなぜ時間がかかったのか? 過去にはテーラーメイドだけではなく、他のメーカーもカーボンウッドに挑戦してきた。

「フェースにカーボン素材を使うことが難しかった理由の1つは、衝撃に弱かったことです。だから、ゴルフクラブの中ではカーボン素材をシャフトなどに使うことはできても、直接、ボールとコンタクトするフェースに使うのは難しかった。また水滴や雨で濡れたときに極端にスピン量が落ちてしまうこと、そして最大の課題は音でした」

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

22年間の開発期間を振り返ると、最初に取り組んでいたのは衝撃や水滴(ウェットコンディション)の課題をクリアすることだったようだ。

「前作の『SIM2』ではクラウン部分に6層、ソールに9層のカーボンシートを重ねていますが、それくらいではフェースにボールが当たる際の衝撃に耐えられません。だから『ステルス』では60層におよぶカーボンシートを精巧に組み合わせる構造によって耐久性を高めました。さらに水滴の問題に関しては60層のカーボンフェースの上からナノレベルの表面加工を施したポリウレタン樹脂をコーティングすることで、濡れたときでもスピン量を安定させることに成功しました。この樹脂をコーティングすることはカーボンウッド開発の大きなブレークスルーになったと思います」

最後は音の問題。歴代のカーボンウッドのドライバーだとどうしても「ポッコン」というようなカーボン素材特有の音が出てしまう。その課題はどうやってクリアしたのか?

「カーボンウッドの開発では打球音だけに特化したサウンドエンジニアリングチームを作って研究を続けていました。目指していたのはチタンヘッドに近い音ではなくて、チタンヘッドを超える音。そのためには数えきれないほどのプレーヤーズテストと改良を重ねてきました。だから、『ステルス』のプロトタイプが完成した後に契約プロがテストしたときは誰も音の違和感を覚えた選手はいませんでした」

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

持ち出し厳禁それでも、タイガー・ウッズは持って帰った

このテストも、もちろん極秘で行われていた。ダスティン・ジョンソンやコリン・モリカワというトップ選手は誰も『ステルス』の打球音に違和感を覚えなかったそうだ。

また、『ステルス』の完成度に絶対的な自信があった開発陣は選手に対しても「絶対に今日は持って帰らないで下さい」と事前に伝えていた。しかし、唯一それを破ったのがタイガー・ウッズだった。

「他の選手も『今日、欲しい』と言ってきましたが、すべて断ったそうです。でも、タイガーは持って帰ってしまっただけでなく、『復帰戦ですぐに使いたい』と言ってきました。だから、当初の予定よりも早くR&Aのコンフォーミングリストに登録することになったのです」

長年、タイガー・ウッズと仕事をしていた高橋氏は、「すごくクラブに対してシビアな選手で、なかなかクラブを変えませんし、新モデルをすぐに使うタイプの選手ではありません。そんなタイガーでも『ステルス』の恩恵は、はじめて打って感じたのでしょう」

実際に昨年12月の「PNCチャンピオンシップ」に出場したタイガーは、『ステルス プラス』のドライバーを使用。自動車事故の大怪我の影響もあり、まだ十分な練習もつめていなかったはずだが、『ステルス プラス』のドライバーで320ヤードを超える1打を打っていた。

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】
息子のチャーリー君と出場した『PNCチャンピオンシップ』では、『ステルス プラス』のドライバーを使用して、2位タイに入ったタイガー。

フェースを約5割も軽くできた革命的進化

過去にはカーボンウッドへの挑戦を断念した大手メーカーも多いが、テーラーメイドはなぜ22年という年月をかけてまで、カーボンウッドの開発を続けてきたのか? そこにはチタンにはない圧倒的な優位性があった。

宇宙工学や飛行機、さらに電気自動車など最先端の工業製品に使われているカーボンだが、チタンに比べてどこが優れていたのか?

「カーボンはチタンよりも圧倒的に軽くて、強度がある。だから衝撃への耐久性、ウェットやドライのコンディションでのスピン性能、そして音の問題をクリアすれば、チタンフェースのドライバーを遥かに超えるパフォーマンスが出せることはわかっていました。だから、22年間も諦めずに開発を続けてきたのです」

チタンなら約43gカーボンは約24g

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】
今回のフェース形状をチタン素材で作っていたら約43グラムになっていたが、カーボン素材にしたことで約24グラムまで軽量化。チタンフェースではなくなったことで溶接する必要もないので、接合部分にも余計な重量がかかっていない。

ドライバーの性能を驚異的に高めたのがフェースを約50%も軽くできたことだ。

「ここ何年もチタン素材のドライバーのフェースは45グラム前後でした。毎年、開発チームは最大限努力をして1グラム、2グラムと軽量化していました。その1グラム、2グラムを余剰重量として生かすことで重心位置を調整したり、ウェイトをつけたりしてドライバーを進化させてきたのです。しかし、今回はカーボンフェースにしたことで、一気に約20グラムも軽量化しています。だから、ヘッドを設計する自由度が桁違いに高くなりました。その進化は前作までとは比較になりません」

約20グラムを生かして、フェース面積は20%以上も大きくなり、重心も低くなったことで打ち出し角やスピン量も理想的な数字を出せるようになった。さらに、高橋氏は数字以上にフェースが軽くなったことの恩恵が大きいと語った。

「最近はドライバーのやさしさの指標として慣性モーメントが話題になります。慣性モーメントはミスヒットしたときのヘッドのブレにくさを示すと言われていますが、その数字はフェースにボールを当てて計測しているのではなく、計測装置の上でヘッドを回して測定した値。

つまり、ヘッドの中心部に対して、ミスヒットしたときのヘッドのブレにくさを計測しています。しかし、実際にボールが当たるのはフェースです。今回の『ステルス』はヘッドの構造的に前方(フェース側)が軽くて、後方(ボディ側)が重い。だから、ボールがヒール側に当たったときでもフェースより重いヘッド後方部分はブレにくいので、打球の曲がり幅を抑えられます。結果として従来の慣性モーメントでは測れない次元でミスヒットに対する強さがあるのです」

テーラーメイドが目指していた新しい素材の先にあるゴール

テーラーメイドが今後発売するドライバーは、すべてカーボンウッドになる

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

形状や編み方が異なるカーボンシートを60層も重ねることでカーボン素材の弱点であった耐久性を克服。またフェース面はツイストフェースを継承することで、ミスヒットしたときの曲がり幅を抑えている。

フェースが軽くて、ボディが重い構造はボールスピードアップにもつながっていた。

「慣性モーメントと同様に、ボール初速においても従来のチタンヘッドにはない特性がカーボンウッドにはあります。それはインパクトの瞬間に軽いフェース部分に対して重いボディ部分が押してくれるエネルギーが働くことです。

もちろん、ボール初速にはルール上の上限があるのですが、それも慣性モーメントと同様に実際にボールを当てて測定したものではありません。『ステルス』の構造は、前方と後方の重量差によって、後方から押す力が加わることで初速、飛距離を最大化できるようになっているのです」

またカーボンフェースはテーラーメイドの想定を超える製品精度の高さがあった。その結果、当初は使う予定だったスピードインジェクションが必要なくなったと語る。

「前作『SIM2』まで搭載していたスピードインジェクションは販売するすべてのヘッドに対して反発性能をルール上限ギリギリに調整するためのテクノロジーでしたが、カーボン素材ではその必要がないくらい精度が高いフェースが完成しました。だから完成品の『ステルス』にはスピードインジェクションをする予定だった小さい穴だけが残っています」

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】

『ステルス』シリーズのトゥ側にある小さい穴はスピードインジェクションの名残り。前作までは、この穴からジェルを流し込んで反発性能を調整していたが、カーボンフェースは精度が高かったために、その必要がなくなった。

飛距離、やさしさ、製品精度においてもチタンヘッドを遥かに凌駕するカーボンウッド。高橋氏は最後に、

「今後、テーラーメイドが発売する主要モデルのドライバーは、すべてカーボンウッドのカテゴリーになります。ここまで来るのは長かったですが、カーボンウッドが私たちのゴールというわけではありません。もしかするともっと長い間開発しているものもあるかも知れません。テーラーメイドは常にNEVER DONE(ネバーダーン)ということを言っているのですが、我々の仕事にゴールはない。常にPLAYERS BENEFIT(プレーヤーズベネフィット)を追求しているので、終わりはないのです」

長年、テーラーメイドを取材していて必ず言われるのがプレーヤーズベネフィットというキーワード。ゴルファーにいかに恩恵があるクラブを作れるのか。40年前にメタルヘッドを開発したときも、今年のカーボンウッドも、テーラーメイドは新しい素材を開発したいわけではない、常にゴルファーにとって恩恵のあるクラブを目指している。だから新しい時代を作れるのだ。

パーシモン、メタル、そしてカーボンウッドへ ~ドライバーの新しい時代がはじまる~ |Taylormade STEALTH【ギアモノ語り】
『ステルスシリーズ』のヘッドは3タイプ。飛距離、安定感、寛容性のバランスを重視した『ステルス』が最もスタンダードなタイプで、ソールにウェイト調整機能がある『ステルス プラス』はアスリート好み。ハイドローの意味がある『ステルス HD』はつかまった高弾道ボールが打ちやすい。

STEAL HD
●ヘッド体積/460㎤ ●長さ/45.75インチ ●ロフト角/9、10.5、12度 ●シャフト/TENSEI RED TM50 ●価格/8万6900円~

STEAL
●ヘッド体積/460㎤ ●長さ/45.75インチ ●ロフト角/9、10.5度、12度 ●シャフト/TENSEI RED TM50、ツアーAD UB6、スピーダーNX60、ディアマナ PD60 ●価格/8万6900円~

STEAL PLUS
●ヘッド体積/460㎤ ●長さ/45.75インチ ●ロフト角/9、10.5度 ●シャフト/TENSEI SILVER TM50 ●ツアーAD UB6、スピーダーNX60、ディアマナ PD60 ●価格/9万200円~


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