クラブフィッティングをなぜ不要と感じるのか?
重箱の隅、つつかせていただきます|第19回
スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
GOLF TODAY本誌 No.597/70ページより
戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。
クラブフィッティングをなぜ不要と感じるのか?
ゴルフクラブの〝フィッティング〟と〝チューニング〟はよく似ているが、私はまったくの別物としてとらえている。
クラブのスペックを使い手に合わせて〝見繕う〟のが〝フィッティング〟であり、その使い勝手のギャップを埋める〝改修〟を行うのが〝チューニング〟だ。いずれも経験値とともに繰り返され、変更しなければならないところは、楽器に近い気もする。
ただ、一般ユーザーが有識者に頼る〝フィッティング〟のニーズは非常に少ないようだ。
他のスポーツ用具と同様、市販されているものは、一般ユーザーが使用不可能なスペックはありえない。体格、体力から想定されるスペックを、既存のバリエーションから選択するだけでいい。
本来なら、この段階でフィッティングし、厳密にシャフトフレックスやライ角も合わせたいところだが、やらない。
というのも、人間は調整能力が高いので、多少ズレたスペックでも〝打ててしまう〟からだ。
フレックスがXでもRでも、重すぎなければ普通に打てる。昔の「Xはパワーヒッター用」というのは、硬くするために重くしていたから、非力だと振り切れなかっただけだ。
つまり、シャフトは重量選びを間違えなければいいだけ。フレックスはSかRを選んでおけば、メーカーがすでに厳選しているためか、打ちにくいものにはほとんど出会わない。
ライ角も、標準的な設定のままでもそこそこ打ててしまうから、調整の必要性すら感じないというのが本当のところだろう。
というわけで、私も一般ユーザーがネット通販で、ほぼシャフト選びだけでクラブを購入することは、問題がないと思う。ただし、それとは別に、大切にしてほしいのが〝チューニング〟だ。
〝チューニング〟というと、シャフト交換やグリップ交換といったパーツ変更を思い浮かべるかもしれないが、ヘッドの「鉛貼り」も立派なチューン方法になる。
私は〝チューニング〟の目的を振りやすさや飛距離アップに置くのは間違っていると思う。それらは購入(フィッティング)の段階で考慮すべきものだ。その意味では、昨今の各メーカーによる「飛ぶから替えろ」的な新製品戦略に、あえて踊らされるのもアリだと思っている。
〝チューニング〟で求めるべきは〝フェースコントロール〟に尽きると思う。気持ちよく振り抜いた時に、思った所に打ち出せるようにフェースの動きを調整する。
たとえ〝フィッティング〟で選んだスペックでも、番手ごとのつかまり具合は異なる。また、同じモデルでも違うロットなら、微妙に重心位置や慣性モーメントが異なり、同じように振っても方向性の違いは生じる。
プロなら、メーカーのスタッフとともに様々に調整できるが、一般ユーザーはそうはいかない。だから「鉛貼り」は有効なのだ。
200g以上もある鉄の塊(ヘッド)に、たかが1g弱の鉛で効果があるのか、というと、実際にある。自動車のホイールバランスと同じで、ヘッドの回転動作を鈍らせたり、スムーズにしたりすることができるからだ。スイングが安定する(コンスタントに球に当たる)アベレージクラスから、このチューンは可能だと思う。ただ、やらなくてもそこそこ〝打ててしまう〟からやらないのだろうが。
本当は、ライ角調整と両輪で進めるのが理想的だ。ライ角をいじると、重心位置も変わる。ヘッドの動きも変わると、手元からヘッド重心までの距離も微妙に変わり、両方が整い、狙った所にドンピシャ打球が飛んでいく様は、ゴルファーなら絶対に愉しめるはずなのだが。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
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