ベン・ホーガンは「決め球」と「曲げ技」を分けて考える
アイアンが際立つ!強い”決め球”の作り方[第10回]
“決め球”はプレッシャー下でも逆球を出さない技術。インテンショナルなスライスやフックの“曲げ技”とは別物と考えてマスターするのが正解、と森プロ。「アドレスとフェース向きの意識から違います」
GOLF TODAY本誌 No.600 97〜101ページより
“曲げ技”は曲がり幅優先で圧をかけずにインパクト
必要なのは曲げる幅を計算できること
〝決め球〟が一定の曲がり幅に収まるのに対して、インテンショナルな〝曲げ球〟は状況に合わせて曲げ幅の大小を調節できることが大切、と森プロ。
「そのためにはフェースターンを抑えて、ヘッド軌道に対してフェース向きを調節した状態で当てるようにします。〝決め球〟のようにフェースのタテ回転で圧をかけるインパクトではなく、手元とヘッドを等速で押し込むようにすると、ボールに的確なサイドスピンがかかりやすくなります」
曲げる幅が大きくなるほど、飛距離は落ちて正解。
「ただしフック系はロフトが立って弾道が低くなり、ランも多く出るので逆に遠くまで運べることがあります。ここがバックスピンをベースとする〝決め球〟の止まるドローとは異なるところです」
スライスも、フェースを開くために高く上がるぶん、フェードのようには飛距離が出せない。
“曲げ球”の基本テクニック
ボール位置、ヘッド軌道はそのままで、フェースを開いてスライス(上)、フェースを閉じてフック(下)をかける。そのため、スライスはロフトが増えて高く上がり、飛距離は落ちる。フックは逆にロフトが減り、低く出てランが伸びるようになる。着地点への注意が必要となる。
曲げる幅のぶん、打ち出し方向に合わせてスタンスの向きを変える。その際、ボール位置を軸にして回り込むようにスタンス位置を変えるのが正解。アドレスの体勢に対して、ボール位置がズレてしまうと、ヘッド軌道が変わって打ち出し方向も曲がり幅もチグハグになってしまう。
“曲げ技”を持ち球のベースにするニクラス型のプロも多い
ジャック・ニクラス|ベン・ホーガン
ストレートに近いほど強弾道だが逆球リスクも
「メジャー18勝のジャック・ニクラスは“曲げ技”の基本に沿ってフェードとドロー(厳密にいえば曲がり幅の少ないスライスとフック)を打ち分けてコントロールしていました。ですが、この方法はプレッシャーがかると逆球が出やすい。ホーガン型の“圧をかけてタテ回転”のフェードとドローのほうが安定します」
インテンショナルな“曲げ技”をこなすコツとは?
<フェースターンを抑える>スナップ動作のリリースを抑えて体のターンで振る
あえてスナップを抑える
右手のスナップ動作でヘッドを走らせるのではなく(上)、上体のターンに合わせて手元とヘッドを等速のイメージで振り抜く(下)。アドレスで決めたフェース向きをキープするよう心掛ける。
アレンジアドレスに慣れる
いざコースに出てからフェース向きと立ち位置をアレンジしても、違和感が生じて上手くいかない。練習時に、ボール位置とスタンス向き、フェース向きがしっくりくるまでいろいろ試すのがベターだ。
ヘッド重心に惑わされず手元とヘッドをそろえる
右手首の角度をキープしたままインパクト
「普段の〝持ち球〟や〝決め球〟と異なり、曲げる幅を優先するわけですから、いつものショットの延長でイメージしてはいけません。特にスナップ動作でヘッドをリリースするのはNGです」
ヘッドをリリースすると、フェースは確実にターンする。「ヘッドがターンすると、意図したフェース向きと変わってしまいやすく、曲がり幅も変わってしまいます。スライスの想定がヒッカケのミスになったり、右からフックにつもりがチーピンになったりする危険性があります。
基本的にはスリークォーターのイメージで、右手首の角度をキープしたままボディターンで振り抜きます。手首の動きを抑えると、当てて終わりのスイングになりがちですが、それではヘッドの動きが悪くなり、ミスになります。左手甲とフェース向きの角度を変えずに上体のターンで一気に振り抜いてください」
ヘッド重心と左手甲の位置関係を崩さない
「アドレス時の左手甲の向きと、開閉したヘッド重心の位置は普段と異なります。このズレている感覚をスイング中保ち、崩さないこと。インパクトまでにヘッドをリリースしてしまうと、重心アングルなりにヘッドが返ってしまうのでNG。ワッグルで、事前にヘッドの動きを確認する(下)のがベターです」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173㎝、体重68㎏。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガン アナリスト
森 守洋(1912~1997)
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
【アイアンが際立つ!強いスイングの作り方】
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