スパイダーとトラスが融合して、足し算ではなくかけ算になったテーラーメイドのパターが出現!
テーラーメイドの『スパイダー GT TM1 パター』をコースに持ち込み、ロマン派ゴルフ作家が検証する!
テーラーメイドの『スパイダー GT TM1 パター』
『スパイダー GT TM1 パター』は、トラスホーゼルとスパイダーの融合でどんな効果があるのか? コースに持ち込んで、その謎を紐解き、レポートする。
撮影/篠原嗣典
トラスホーゼルとスパイダーが合体する効果は?
テーラーメイドは、2022年7月上旬に『スパイダー GT TM1 パター』を発売する。
“Spider と TRUSS がついに融合!”と“Spider GT からツアーで圧倒的支持を得るトラスホーゼル搭載モデルが誕生”というのがコピーである。
今年の3月に発売された『スパイダー GT パター』は、スパイダーの最新モデルとして、もはやスパイダーとは言えない進化をしたパターとして素晴らしかった。
ヘッドの両サイドに、90g(片側)のウェイトを搭載して、総重量の約82%を左右に配置した重量配分。中央部はアルミニウム。広いスイートエリアが特徴だが、実際に打ってみると、それだけではない、操作性の高さも十分に感じさせるパターだった。
『スパイダー GT TM1 パター』は、その『スパイダー GT パター』の追加バージョンである。
そして「トラスホーゼル」は、国内女子ツアーで大人気だ。
三角形のホーゼルは、それだけで目立つ。「トラスホーゼル」が登場したときに、違反じゃないの? という声が上がった。ゴルフ規則で、ネックは1本と決められており、わかりづらいが、「トラスホーゼル」は、2本のネックを板で繋ぐような構造になっていて、2本のネックと裁定されれば違反になることを心配されたわけだ。
テーラーメイドは、その辺りは、全てクリアして市場に出したわけで、一体ネックとして規則上も問題なしとなって今日に至るのだ。
「トラスホーゼル」の強みは、フェースを安定させて、ブレさせないことだ。これは、テークバックを始めとするストローク中のヘッドの挙動制御は当たり前で、インパクト時にミスヒットしても当たり負けせずに狙い通りのフェースの向きを維持できる機能としても優秀さを認められてきた。
スパイダーの最先端モデルとトラス構造ネックの融合だ。
良いところ取りで、1+1=2ではなく、1+1=3になるような期待をさせるのが『スパイダー GT TM1 パター』である。
カミングアウトすると、僕の祖父が生前、特別に作った2本ネックのパターを使っていて、違反であることは知っていたので、違反ではないパターに戻そうと四苦八苦しながら、結局亡くなるまで、違反のパターを使い続けていた。「トラスホーゼル」が出たときに、こういう構造にすれば、祖父が苦しまずに済んだのかもしれない、と思って悔しかったのだ。
祖父の苦しみを思いだすのが嫌だったので、「トラスホーゼル」のパターの試打を避けてきた。
そういうことがあったのに、『スパイダー GT TM1 パター』は、リリースを見た瞬間に、打ちたい、と直感的に思ったのだ。
つまり、「トラスホーゼル」のパターを初めて打つことになった、のである。
『スパイダー GT TM1 パター』は、理屈ではなく、実際に触れてみると、素振りだけでも十分に特別なことがわかる。アドレス時に、「トラスホーゼル」は目立つことなく、違和感もゼロだ。
しかし、動かしてみると、経験したことがないほどヘッドが安定しているのだ。
コースに持ち込む前に、惚れてしまいそうだった。
安心して打てるという機能が飛び抜けている『スパイダー GT TM1 パター』
『スパイダー GT TM1 パター』の打音は、音量は控えめ、音質は硬質な高音で、響きもある。良い音で、気持ちが良い。
打ち応えはしっかりしていて、フィードバックも敏感。マレットとは思えないほど敏感さが際立つのは、スパイダーらしさである。
基本性能は、『スパイダー GT』だと考えて間違いない。
ボールは、よれたりはせず、きれいに転がるが、タッチはしっかり打っても飛びすぎないように抑えめで、しっかり打っても転がらないという印象を持つゴルファーもいるかもしれないが、それに慣れれば、距離感も作りやすいパターである。
『スパイダー GT パター』も、素晴らしいと評価したが、『スパイダー GT TM1 パター』は、更にその上をいくパターだと言える。
「トラスホーゼル」が、凄いのだ。
2本ネックが違反になる理由を今更ながら知った。ストローク中も、インパクト時も、全くフェースがブレない。力を入れていないのに、力強いのだ。
ソールを見るとわかるが、2つのネックホールがある。「トラスホーゼル」は、三角形の構造でありながら、骨というか、柱は2本で、2本のネックのパターと同じなのだ。
試打ラウンドの3ホール目で、降参した。
『スパイダー GT TM1 パター』は、狙い通りに打つための「トラスホーゼル」が機能していて、打ったことがないほどに思い通りに打てるパターだったからだ。
僕は、少し前まで、3年間、スパイダーを2代に渡って使っていたので、スパイダーの使い方の処方箋を持っているから、その部分は差し引いても、本当に楽に狙い通りに打てた。
ストローク中、または、インパクトのときに、フェースが揺れたり、ブレたりすることに悩んでいるゴルファーには、『スパイダー GT TM1 パター』をオススメする。
また、『スパイダー GT TM1 パター』は、アンサー型を中心とするブレードタイプのパターと使用感が似ているので、乗り換えたいと考えているゴルファーにもオススメだ。
同時に発売される『スパイダー GT TM2 パター』は、「トラスホーゼル」がセンターシャフト仕様になっているので、別物だと考えると良い。
基本的には、センターシャフトと、センターシャフトではないのと、大胆に分けて、好みに合わせれば、選択で迷うことはない。
『スパイダー GT TM1 パター』は、「トラスホーゼル」と融合することで、1+1=3になるかもしれないと、予想をしていたが、それは大間違いだった。
足し算ではなく、かけ算だと考えるべきパターだったのである。
過去に打ったどのパターとも違う独特の安定感がある。少し危険ではあるが、それは、やさしさと、ほぼイコールだと言える。
ブレないという意味で、怖いぐらいに安定している。実際に、試打ラウンドを終えて、自分のパターを使ったときに、あまりの不安定さに驚いたぐらいだ。
スパイダーは、マレット型のパターとしては、テクニカルな部分を活かせる面白さが、一般的にはむずかしさになっているところが特徴のパターだが、それさえ、クリアできる自信があれば、『スパイダー GT TM1 パター』は、特別なパッティングをさせてくれる今のところ唯一のパターになる可能性がある。
試打を終えて、もう“スパイダー使い”には、戻らない、と思っていた自分のゴルフ史が変わるかもしれない、と思った。もう十分だと、思って、お別れしたのに……
特許などの縛りがどのくらいあるのかはわからないけれど、もし、ないのであれば、数年後には、他メーカーの多くのパターのネックのバージョンに、当たり前のように「トラス型」が入っていると思う。
パターを替えたくない、と頑なに決めている人は、決して『スパイダー GT TM1 パター』を打ってはならない。
そうではなく、貪欲にパットのスタッツを上げたいと考えているのであれば、『スパイダー GT TM1 パター』を打たないのは愚かである。
篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてでビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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