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ゴルフと噛み合わせ2|ゴルフの後は、アゴの筋肉をほぐしたほうがいいらしい

生涯スポーツ・ゴルフと健康「末長くゴルフを楽しむために」|第19回

2022/09/07 ゴルフサプリ編集部

「最近、奥歯のあたりが痛む」「ゴルフの後に顎がだる重い」と、気がかりなゴルファーの皆さん。もしかするとその痛みは、歯の噛み締めすぎによる顎関節症が原因かもしれません。ゴルフやデスクワークの後は噛みしめすぎた筋肉をケアし、いざコースに出たときこそしっかり噛みしめてボールに持てるパワーを伝えましょう。

ゴルファーは歯が命! バランスのいい噛み合わせと毎日のケアでボールを飛ばそう

顎関節症予防にはプレー後の顎のケアが必須

歯を噛み締めることはゴルフに大変重要な動作です。より力を出すことができるだけでなく、脳血流量がアップして判断力や集中力がよくなるからです。

とはいえ、咬筋の使いすぎが続くとアゴへの負担が増加し、顎関節症という病気になってしまうリスクが高まります。そうならないようにするには、

「ゴルフをした日はラウンド後にアゴの筋肉をケアして、顎関節症の予防をしっかりすることが大切です」

と鶴見大学歯学部で口腔顎顔面外科を専門とする石塚忠利先生は言います。

今回は、アゴの負担を軽くする方法、負担を溜めないためのマッサージやトレーニングについて教えていただきましょう。

歯が触れただけで筋肉は80%収縮している

「ホームケアのお話をする前にひとつ思い出してほしいのですが、仕事でパソコンに向かっているとき、ふと『歯と歯がちょっと当たっているな』と感じることはありませんか? 実は、それがすでに筋肉に負担がかかっている状態です。パソコンのキーボードを打っているときは思い切り歯を食いしばっている状態ではないでしょうが、歯と歯は意外とカチっと当たっている場合が多いのです。筋電図解析によると、意識的に歯を噛みしめると筋肉は100%収縮します。一方、歯と歯が一点だけ触れあっただけでも80%くらい収縮しているんです」。

噛み締めているわけではないけれど、歯と歯が接触していれば筋肉はずっと使われているといいます。

TCHに気づいたら肩を落として脱力しよう

顎に負担をかけているのはゴルフやスポーツだけではありません。日常生活では、自分でも気づかないうちに歯を噛み締める動作を続けていることが少なくないようです。

特にデスクワークやパソコンの作業中は、集中しているため筋肉が収縮しやすく、凝りや負担が蓄積した状態に陥ります。石塚先生は、そういうときの対処法を紹介してくれました。

「歯と歯が接触してしまうことを専門用語で『歯列接触癖(tooth contact habit)』、頭文字をとってTCHといい、かなり多くの人がTCHによって筋肉が使われた状態を続けてしまっています。そこで、例えばパソコンに向かっていて『あ、歯と歯が当たっているな』と認識したら、一度パソコンから目を離してドン!と両肩を落としましょう。そうすると歯と歯は必ず離れます。その位置がアゴの筋肉が最も休まり、筋肉が最も脱力できているアゴの位置です。肩から力を抜くことでアゴも首も一気に脱力させる。それを仕事の合間、気づいた時に1日数回行なうと、顎への負担をかなり軽減できます」。

実際にこのやり方で脱力しようとすると、まず自分の怒り肩の姿勢に驚き、肩をドン! と落としたときはアゴ、首、肩から力が抜けて、肩凝りまでほぐれるような感じがします。ラウンド中、ティーイングエリアで緊張した時にも有効かもしれません。

シニアだけでなく噛む力が強い若者も要注意

「はじめは咀嚼筋の筋肉痛。その状態で生活しているうち顎関節に負担がかかり、負担が溜まって痛くなったり変形したり、顎関節症の重症化へつながります。口を開け閉めするだけで痛いと言って病院に来る人の中には、骨がすり減ったり削れたりしてザラザラになっていることも珍しくありません。歯のトラブルは一般的に高齢者に多いイメージがあるかもしれませんが、若い人は噛む力が強い。それを受け止める歯や顎にかかる負担は、咀嚼力に比例して若い人の方が強いと言えます。ですから、30代、40代の人はゴルフパフォーマンスを低下させないために、50代、60代の人は長くゴルフを楽しむために、マッサージやストレッチなどのホームケアを取り入れるといいでしょう」。

ゴルフで持っている力を出すには、バランスの良い噛み合わせでしっかり噛み締めることが大切です。しっかりした歯がなければバランスのいい噛み合わせは得られず、十分に噛み締めることができません。これでは飛距離が落ちてもやむを得ません。

一方で歯を噛み締めることは筋肉の酷使につながります。ほかにもさまざまな要因が積み重なると若い人でも顎関節症になりやすく、痛みや変形が表れます。そうならないためにも顎の筋肉のマッサージとストレッチをしっかりすることが大事です。重大な症状を引き起こさないようケアしましょう。

石塚先生は最後に、ゴルフサプリ読者の皆さんへ効果的なマッサージとストレッチのしかたを教えてくれました。特に噛み締めが強い人は顎関節症になりやすいので、予防として早めにケアを始めるのがよさそうです。

プレー後だけでなく朝晩の日課にオススメ

ゴルフをした日は噛み締めによって顎を酷使しているので、家に帰ったらマッサージやストレッチをしましょう。バスタブに浸かっているときやソファーでくつろいでいるときなど、リラックスして行ないましょう。朝晩の日課にするのもオススメです。ただし、痛みや違和感を感じたら直ちに中止して口腔外科を受診するようにしてください。

【側頭筋と咬筋のマッサージ】

イラストの印付近のツボを指先で探します。小さなストロークで、「イタ気持ちいい」程度の強さで、指先を揺らしてマッサージをします。1カ所につき10回くらいずつ行ないます。ただし、頬の骨には触らないようにしましょう。

側頭筋…歯をカチカチ噛み締めたとき、耳の上一帯がビクビクッと動きます。そのあたりが側頭筋です。

咬筋…歯を噛み締めると動きます。耳の前でエラの少し上にあります。

【ストレッチ】

マッサージの後に行ないます。口を真っすぐ大きく開けて10秒キープします。できれば鏡を見て2〜3回ストレッチをしましょう。

【噛み合わせのまとめ】
〈筋肉が使われる割合〉
・歯を噛みしめると筋肉は100%収縮
・歯と歯が当たっていても80%収縮

〈アゴの脱力のしかた〉
噛み締めに気づく

肩をドン!と落とす

顎、首、肩の力が抜ける

〈顎関節症になると〉
・筋肉が炎症を起こす
・口を開け閉めするだけで痛む、雑音(カクッ、ザラザラ)
・骨がすり減ったり削れたりする

〈ホームケアのポイント〉
・ゴルフの後、家に帰って行なう
・側頭筋と咬筋の二箇所にアプローチ
・バスタブやソファーでリラックスしているときに行なう
・朝晩の日課にするのがオススメ
・痛みや違和感を感じたら直ちに中止する

〈ホームケアを行なうと〉
・ゴルフパフォーマンスの低下を防げる
・顎関節症の予防になる
・長くゴルフを楽しめる

取材・文/野上雅子

石塚忠利
(鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座 学部助手、医療法人社団恒成会 石塚歯科クリニック非常勤医)
2014年草加市立病院歯科口腔外科臨床研修医を経て、2015年鶴見大学歯学部 口腔顎顔面外科学講座に入局。2016年横浜労災病院での麻酔科研修を経て、2017年より鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座学部助手として口腔外科臨床および学術研究に従事する。ゴルフの造詣も深い。


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