ゴルフのスタート時間、何時で予約するのがいい?
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第36回
<画像提供>篠原嗣典
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。
四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
スタート時間のゴールデンタイムって何なの?
夏場は早朝スタートでプレーするのが、僕の夏ゴルフのスタイルでしたが、9月に入って通常のスタート時間に戻りました。通っているコースの春秋シーズンのトップスタートは6時57分です。
「ゴールデンタイムのスタートを予約してって言ったのに、7時台は早すぎるって」
先日、練習グリーンで、50代と思われる男性が、挨拶もそこそこに、若い男性に文句を言っていました。「この時間しか、空いていなかったんですよ。でも、少しだけ割引があるみたいので…」若い男性は、説明をしていました。
久しぶりに、ゴールデンタイムのスタートという言葉を耳にしました。昭和の頃は、よく耳にしていましたから、懐かしかったのです。ゴールデンタイムは、コースやエリアによっても違いましたが、おおよそ9時前後30分間のスタート時間を指す言葉でした。
諸説ありますが、一部の名門コースで“メンバー専用のスタート枠”があったことが、ゴールデンタイムの始まりだったという話が説得力があります。「オレもメンバーになって、あの時間にスタートできる身分になりたいよ」という憧れが、伝聞されていく中で、特別なスタート時間=ゴールデンタイムになったというわけです。
8時〜10時半という時間帯がスタート枠になっているコースが多く、9時台のスタートは真ん中ということで、早すぎず、遅すぎずちょうど良いということもあったと思います。今でも、ゴルフコンペの名幹事は、9時前後のスタートを取ることにこだわる傾向がありますが、同じ理由からだと思われます。
あなたの好みのゴールデンタイムは何時スタート?
色々書きましたが、僕にとってのゴールデンタイムは、誰が何と言ってもトップスタートです。
誰もプレーしていないコースを突き進む新鮮さもありますし、素早くプレーするペースを作れる気持ち良さもあります。
それだけではなく、バブル期のゴルフコースでは、トップスタートはプレーが速いという信頼を得ているゴルファーだけが予約を許される特別なスタート枠だったのです。今では、そんな資格は問われませんが、あくまでも、個人的なこだわりとして、トップスタートは、信頼に応える責務を感じて、背筋が伸びるのです。
とはいえ「時間が早すぎるとか」とか「ハーフターンの待ち時間が長い」とかで、早い時間のスタートは、バッドタイムだと嫌うゴルファーもいます。先程の例で考えると、8時にスタートして、1時間半でプレーして9時半にハーフを終えても、10時半までは通常のスタートがあるので、それまで待たなければならず、待ち時間が長い、というわけです。
ワンハーフしたいから、という理由で、トップスタートを好む若いゴルファーも増えてきていますが、ハイシーズンには、ワンハーフ禁止としているコースもありますので注意が必要です。
昭和の時代に崇められたゴールデンタイムのスタートは、現在では、ほぼ死語になっています。
ゴルファーの数だけ、好みのゴールデンタイムがあっても良い時代になりつつあります。
スタート時間でよくある誤解を正す
生まれて初めてのティーショットを打った13歳の夏の朝。ティーの周辺には20人ぐらいの大人たちがいました。全て知らないオジさんたちです。「子供がどんなゴルフをするのか?見てやろう」という好奇の目と「子供がゴルフをするなんて非常識」という嫉妬絡みの目に囲まれた第一打は、フェアウェイのど真ん中に飛んでいったナイスショットでした…
この話をすると、どうして20人ものゴルファーが見物していたのか?という疑問を抱いて、僕が話を盛っていると疑う人がいますが、昭和からゴルフをしているゴルファーは、当時は、そういうシーンが日常茶飯事だったね、と懐かしそうに言ってくれます。
昭和の時代は、多くの人が、個人ではなく、企業人としてゴルフをしている空気がありましたので、トラブルがあれば、「○○の課長がさ…」という感じですぐに噂になりました。会社の顔に泥を塗るわけにはいかないという緊張感が、エチケットマナーを厳守する慣習を支えていたのです。
スタート1時間前にはコースに着くのが理想的。最低でもスタート10分前にはスタートホールのティーの近くでスタートの準備をする。というような感じだったのです。
1時間あれば、コースに来る道中で、事故渋滞があってもどうにかなります。ギリギリの時間を狙って出発して、途中にトラブルがあって遅刻すれば、自己管理ができない人間というレッテルを貼られました。時間前に行動してこそ、オンタイムでスタートできるというわけです。
ゴルフの密度も雰囲気も純粋で良い時代だった
当時のクラブハウスは、朝から大賑わいです。フロントはトップスタート1時間前にはオープンしましたし、レストランも当たり前のように同時にオープンしていました。時間がありますので、ゆったりと朝食を食べる優雅な時間があるのは当たり前、スタート前から宴会が始まることも珍しくはなかったのです。
子供がスタートするから見に行こうという野次馬もいるでしょうし、早めにスタートの準備をするゴルファーも多かったので、あっという間に20人ぐらいのギャラリーになるのです。
「酷い時代だったんですね」なんて言われることもありますが、ゴルフの密度というか、みんなで協力し合う雰囲気は、純粋で良い時代だった、と個人的には考えてしまうのです。
平成時代に生まれたゴルファーは、企業人の緊張感とは無縁になったので、伝聞が上手く機能せずに、色々な誤解をしているケースがあります。気になることの一つが、スタート時間の概念です。
8時スタートだから、8時にカートに乗り込んで、スタートホールに向かえば、セーフだと思い込んでるゴルファーがたまにいますが、大間違いです。
8時スタートは、8時ジャストに、その組の1番目のプレーヤーがスタートホールの第1打目を打つ順番になるという意味です。昭和の頃の話で書いたスタート時間の10分前にはティーの近くに行って準備を始める、というのは、令和でも有効な立ち振る舞いなのです。
前の組が、まだ前にいるから、という言い訳をする人がいますが、人は関係ありません。自分がどうするかが、ゴルフであり、ゴルファー自らが審判であるという絶対条件の範囲内なのです。
早起きと遠出はゴルフの腕前の一部だと心得よ!
「早起きがダメなので、もっぱら、午後スタートでゴルフをしています」そういう話を耳にするたびに、良い時代になったのだとしみじみします。
ゴルフコースデビュー直前に、叔父に言われたゴルファーになるための絶対条件は以下のものでした。
「早起き。早飯。早糞」三つとも、自信がありました。ある意味で、ラッキーで、どれにも苦痛を感じたことは一度もありません。
ゴルフ仲間から聞かれたことがあります。「ゴルフの前夜に興奮して眠れないので、毎回、コースの近くのサービスエリアに夜中に行って、そこで目覚ましをかけて、車の中でウトウトしているんです。どうやったら眠れますか?」
僕も、若い頃は、興奮してなかなか眠れなかった一人ですが、無理に寝ないでもイイや、と考えるようになってから眠れるようになりました。早起きだから、早く寝ないと、という考え方をやめて、普段の夜と同じようにしたのです。そのようにアドバイスしましたが、残念ながら、効果はなかったそうです。
早起きが辛い人には同情します。ゴルフの才能の一つが欠けているハンディになるからです。ゴルフが大好きで、ワクワクして寝られない、というのも困りものですが、ゴルフをしていく内に慣れますし、早起きも、ゴルフのときだけは大丈夫、というようになればしめたものです。才能を努力で手に入れたのだと、素直に喜んで良いと思います。
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「コースが遠いから、早起きが必要なのだ」と怒っている人もいます。
この国の関東以外のエリアでゴルフをしていると、ほとんどのケースで、高速道路を使わない下道でも行けるコースがあり、地元のコースとして慣れ親しめるものですが、関東のゴルフシーンでは、高速道路を使用して、片道1時間以上かかってコースに行くのが、当たり前なのです。
片道2時間までは許容範囲、という人が過半数だと思います。都会の周辺にはゴルフコースを作る土地がないという事情と、国内のゴルフコースの約半数が関東にあるのですが、ゴルファーの数も国内の7割弱が関東に住んでいるという統計もありますから、需要と供給のバランスという意味でも仕方がないのです。
個人的な判断基準ですが、家からコースが遠いという理由でゴルフを断る人とは、徐々に距離を取って、お付き合いを継続しないようにしています。それをゴルフが大好きだという熱量のバロメーターの一つだと考えているからで、ゴルフが好きな人と仲良くしたいと願っているからです。
ゴルファーの好みは自由です。好きなスタート時間も十人十色です。
ただ、早起きと遠出はゴルフの腕前の一部だと考えてしまえば、案外とスムーズに苦手意識は消えていくものだということも事実なのです。
僕の場合は、自分で手配するときには基本はトップスタートです。それを苦痛に感じない仲間がいることに感謝です。早起きは三文の徳、と言います。早い時間のスタートにもたくさんの得がありますが、あまり推奨すると、トップスタートの取り合いになってしまうので、この辺りでやめておくことにします。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。
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