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シャフト沼にハマってない? ちゃんと知ると、シャフトは文字通り「鬼に金棒」となる

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第37回

2022/09/28 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

ゴルフクラブ

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。
大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

シャフトがなければクラブにならない。大事なパーツなのに知らないことばかり

篠原嗣典氏のスイングショット

<画像提供>篠原嗣典

ゴルフはクラブがなければボールを打てないので、ゴルフが生まれたときにクラブも生まれた、と考えられています。羊飼いが、棒切れで石ころを打ったのがゴルフの始まり、というお話は、現在ではゴルフの黎明期の分布の道筋などから発祥とは無関係なお伽噺だと断定されていますが、棒切れ=シャフトで、最初のゴルフクラブはシャフトだった、と信じている人たちもいます。

2022年現在のゴルフルールでは、ゴルフクラブは、一つのヘッドと一本のシャフトでできていて、一つのグリップを付けることが許されているもの、というように定められています。シャフトがないゴルフクラブは認められません。

そのシャフトも、ザックリと書くと、断面が円形であること、真っ直ぐであること、すべての方向に同じようにたわみ、ねじれること、というような決まりがあります。
クラブの長さは、18インチ(0.457メートル)以上、パターを除いて48インチ(1.219メートル)を越えてはならないというルールもあります。

ホットな話題としては、長さの上限を46インチに変更しようという動きがあって、激論が交わされています。
クラブが進化して、飛距離が伸びすぎると、ゴルフコースの長さを合わせることが現実的にむずかしく、結果として、ゴルフの面白さが変わってしまったり、安全性を確保できなくなってしまう可能性を考慮して、ゴルフ用具は時々、飛びすぎないようにルール改正があるのです。

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知っていましたか?シャフトの硬さの基準とは

逆に考えると、シャフトは長い方が飛ぶ、という物理的な法則があるというわけです。
ゴルフクラブは、人類の科学力の結晶と言えます。最先端の素材や製造技術を貪欲に取り入れてきた歴史があり、シャフトも同様です。そんな重要なシャフトなのに、案外と知らないことばかりだったりするのです。

シャフトの硬さを表す「Rフレックス」とか、「Sフレックス」は、誰でも参考にします。「R」は普通で、「S」は硬い、という認識はゴルファーの常識です。若くて力があるから、「S」じゃなければダメだよ、とかいう感じで、普通に使われます。

信じられないことですが、このフレックス表記は、目安に過ぎないのです。
例えば、A社の「S」シャフトは、B社の「R」シャフトと同じ硬さだったりすることが、当たり前のようにあるのです。

シャフトの硬さには、工業的な統一基準がないのです。硬さの表記は、いわゆる「自称」なのです。
メーカー内では統一しているケースもありますが、ブランドごとに違うメーカーもあります。

ゴルフクラブは、繊細に作られている精密なギアなのですが、シャフトの硬さが、言った者勝ちになっているのは、ビックリです。過去に何度も、統一基準に使用という働きかけがあったのですが、物別れに終わってしまいました。

シャフトは、統一基準もなくいい加減なパーツなのかというと、そんなことはなく、最先端のテクノロジーが詰め込まれたパーツであるところが、ゴルフの面白さの一つなのです。

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シャフト沼は厄介な底なし沼なので注意が必要

篠原嗣典氏のスイングショット
<画像提供>篠原嗣典

ゴルフの楽しみ方は、実に色々です。クラブが大好きになって、マニアックにハマるゴルファーもいます。その中の一つが、シャフトマニアです。

シャフトは、一昔前までは、あまり種類もなく、マニアが生まれにくい分野だったのですが、21世紀になってからシャフトメーカーが、シャフトをメーカー以外にも個別に販売するようになって、どんどん種類が増えました。
そして、生まれた言葉が「シャフト沼」です。

○○沼というネットスラングは、○○にどっぷりとハマってしまって、抜け出せなくなる状態を意味します。シャフト沼は、シャフトにハマってしまうことです。

僕は試打をする際に、シャフトのリクエストは一切しません。純正シャフトで、メーカーが最も売りたいものを打つようにしています。インプレッションを参考にして購入を検討するゴルファーの参考になりやすいと考えているからです。

また、メーカーがクラブを開発する際に、ベースにするシャフトに合わせてヘッドやフェースのチューニングをしていることも大きいのです。シャフトの個性を含んでしまうと、ヘッドが持っている性能がわかりづらくなってしまいます。

自分の好みや、スペックもわかりますので、試打をしながら、あのシャフトなら違う結果になる、と想像することもあります。しかし、それをインプレションに書くことは、基本的にはしません。それはクラブのインプレションではなく、シャフトのインプレションになってしまうからです。

シャフト沼にハマっている人から、そういう僕の姿勢について、間違っているという意見が届くこともあります。彼らは、シャフトが万能だと信じているので、純正シャフトでの試打をすることが信じられないのです。

シャフト沼にハマる危険が、ここにあるのです。シャフトは、弾道に影響しますが、万能ではありません。装着するヘッドによって性能も変わります。面倒臭いことは、それが一筋縄ではなく、本当に複雑なのです。

ときには、シャフトメーカーでも説明ができない結果が生まれることがあるのです。ヘッドとシャフトの相乗効果だとも言えます。良い結果だけなら良いのですが、悪い結果も出てしまいます。

ゴルフの楽しみ方として、シャフト沼を否定はしませんが、なんでもできると過信しないような注意は必要なのです。

信じられるシャフトがあれば鬼に金棒!

篠原嗣典氏のスイングショット

<画像提供>篠原嗣典

シャフトには、素材も色々ありますし、重さの違いもあります。基礎体力を基準に、ハードに振れる人は重いシャフトとか、体力に自信がなければ軽いシャフトとかいうのがセオリーになっていますが、純正シャフトの重さを基準にすると、元々のクラブの開発したターゲットがわかるので、参考になるはずです。

シャフトは弾道に影響すると書きましたが、長いクラブほど大きく影響します。

それは主に、ボールの打ち出しの高低と、ボールをとらえる挙動の大小として、具現化されます。ちょっと乱暴ではありますが、強いて極端に書くと、ボールを高く上げたいゴルファーには、この系統のシャフトが合うとか、逆に上がり過ぎてしまうゴルファーには、こちらの系統のシャフトが合うというようなことや、右に飛びにくくしたり、左に行きにくくするというようなことも、シャフト選びである程度は可能になります。

自分に合っているシャフトがあるとも言えますし、自分とヘッドとシャフトの複合技で結果が出やすくなるとも言えます。ただ、ゴルフクラブの面白さでもあり、怖さでもあるのですけれど、心配をし出せばキリがないのです。
最も良くなるはずだと考えて、沼にハマっていく悲劇もたくさんあります。

個人的には、打ち手がいてのクラブだと思っています。打ち手の腕前だけでできることには限界があります。同じようにクラブだけでできることにも限界があるのです。双方に足りないところを補っていく関係が、1+1が2ではなく、3にも、4にもするのです。

そして、自分のバッグの中にそのクラブを入れたら、徹底的に信じる努力をすることも、クラブを使い熟すコツなのです。自分に合っているかどうかは、使えているかどうか?という一点で一目瞭然です。

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大切なのは「ちゃんと知ること」

そういう経験を積み重ねていく中で、シャフトについても徐々にわかっていくものです。慣れているものが一番良いという考え方も正解の一つなのです。自分に合っているシャフトを知っていれば、鬼に金棒です。

硬さの統一基準すらないシャフトは、最終的には、打ってみなければわかりません。また、ヘッドが違っても、結果が変わります。何通りもあることを考えると、現実に絶望しそうですが…

ゴルフはクラブを使わなければ、成立しません。クラブはシャフトなしでは機能しません。
まずは、自分が使っているシャフトについて、ちゃんと知ることが、自分のゴルフの未来を明るくするのです。

シャフトは、単なる棒ではありません。上手に使えば、魔法の杖として、ゴルファーを夢の世界に連れて行ってくれるのです。信じるか信じないかは、自分次第です。




篠原嗣典

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


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