青木瀬令奈の「ラインで打ち分けるパットテクニック」がスゴイ!
人気コーチ、大西翔太は見た! この女子プロのココがスゴイ!|VOL.6
プロコーチであり帯同キャディとしても青木瀬令奈をサポートする大西翔太コーチ。その大西コーチが22年のシーズンを通して鮮明に記憶に残ったシーンを紹介するシリーズ。間近に見てきたライバルたちのスイングやプレーぶりを、連続写真を使ってわかりやすく解説。最終回は青木のスゴいところを大いに語ってもらった。
取材・文/三代 崇 写真/相田克己、山之内博章、渡辺義孝
取材トーナメント/NEC軽井沢72ゴルフトーナメント、TOTOジャパンクラシック、JLPGA選手権リコーカップ
パットに自信が持てるプレーヤーは必ず勝てることを実証した青木
青木瀬令奈選手は、ショートゲームのうまさに定評のあるプレーヤーです。
22年のスタッツを見てもリカバリー率4位はアプローチのレベルの高さの証明ですし、平均パットもトップクラス。パーオンホールの平均パット数は1.7702で9位ですが、1ラウンドあたりの平均パット数は28.1207で2年連続1位でした。
フェアウェイキープ率は2位で、78.5099と高い数値を記録した反面、ドライビングディスタンス部門は219.78ヤードで96位。飛ばない方ですから届かないホールが割合多く、パーオン率も61.6858の86位。パワー不足をアプローチとパットでカバーしてスコアを作るのが青木選手のプレースタイルです。
ボクが青木選手と初めて会ったのは2015年のことです。当時からアプローチとパットはとてもうまかったのですが、ショットに難がありました。
そこでボクがスイングをこうしたらどうかとアドバイスしたら効果てきめんで、飛距離が20ヤードもアップしたのです。それをキッカケに青木選手からコーチの依頼を受け、ツアーに帯同して専属キャディも務めるようになりました。
ボクが常に青木選手に言い聞かせていたのは、「パットとアプローチが優れているプレーヤーは必ず勝てるプレーヤーになれる!」ということでした。
そして17年のヨネックスレディスで悲願のツアー初優勝です。ところが2勝目までが長かった。21年のシーズンは開幕から調子が上がらず予選落ちが続いてついに自信を失ってしまい、「ツアープロを辞めたい」と青木選手が口にしたのです。
このときは2人でじっくり話し合って、ボクは「諦めるのはいつでもできる。でも今は諦めるときではない」と諭しました。そして青木選手は立ち直って、同年の宮里藍サントリーレディスで2勝目を達成。
青木選手の「諦めることを諦めさせてくれてありがとう」の言葉にボクも目の前が霞んできました。この4日間大会で勝てたのは大きな自信となり、22年には、戸塚カントリー倶楽部で開催された資生堂レディスオープンで、ツアー3勝目を飾ることができました。
資生堂レディスオープンも4日間の長丁場ですが、初日68で9位タイ、2日目69で4位タイ、3日目は68で通算11アンダーの単独トップ。1打差の2位タイに吉田優利選手とユン・チェヨン選手。
そして青木選手は最終日もパットが冴えて69。吉田選手たちと2打差の通算14アンダーで優勝。ただ一人4日間60台のスコアでした。初日26パット、2日目29パット、3日目30パット、最終日27パット。3パットは3日目に唯一のボギーを叩いた16番パー5ホールだけでした。
- ③いつも同じストロークをしているように見えるが、ラインによってアドレスやストロークを変えて打つのが青木のパット。
ラインに寄り添って毎回打ち方を変えるのが青木流パッティング
前置きが長くなってしまいましたが、青木選手のパットを見ていてスゴイ!と思うのは毎回打ち方が違うことです。たとえば、フックラインでしたらフェース面のトゥ寄りで打ったり、スライスラインならヒール寄りで打ったり。
上りのラインはフェースの刃の近くで打つとか、下りのラインならフェースの上の方に当てるといった具合。これは、ボクが青木選手のコーチになる前からやっていたことですべて本人の感覚です。パットの技術面で話し合うこともありますが、そのラインに寄り添ってパットを打つ典型なのです。
そのときに応じて毎回打ち方を変える。これが異常なくらい入るのが青木選手の凄さです。真っすぐなラインをアウトサイドインのカット軌道で打つこともあれば、逆にインサイドアウトの軌道っぽく打つこともある。
スライスラインでワザと球をつかまえにいって、真っすぐコロがすとか、本当はフックラインなのにカット気味に当てて曲がりを相殺させるということもします。だからスタンス幅も広くしたり狭くしたりで、アドレスもストロークも毎回違います。
遠目にはいつも同じスタイルを通しているように見えるかもしれませんが、実は同じではない。微妙な違いではありますが、青木選手の一番近くで見ているボクだからこそ、その違いがよく分かるんです。
青木選手のパットのグリップはクロスハンドです。両手を逆にして持つことで、アドレスで両肩の高さが揃いやすい、ストローク中に手首の角度をキープしやすい、フォロースルーでパターヘッドを低く長く出しやすいなどの利点があります。
稲見萌寧選手や西郷真央選手のようにクロスハンドグリップに握るプレーヤーは割合多いのですが、同じクロスハンドでも握り方はプレーヤーによって違います。青木選手の場合は左手の人さし指を伸ばしてグリップに添えるタイプです。
そして、左手の人さし指を常に下を向けたままでストローク。これを意識することでストローク中にパターヘッドが静かに動きます。だからどんなときもフェースの向きが狂わない。ラインに寄り添ったストロークができる。これが青木選手の強さの秘密です。
アプローチショットにも同じことがいえます。青木選手のアプローチは右手の親指が常に下を向いている。これが何を意味するかというと、手元とカラダの間隔が変わらず静かにスイングできる。静かに動ける人はパットやアプローチが絶対的にうまいのです。アマチュアの方々もそれをぜひ参考にしてください。
- ③アプローチは右手の親指を下に向けたままでスイング。クラブを静かに振れるからインパクトの精度が高い。
さて、23年シーズンも開幕戦のダイキンオーキッドレディスを皮切りに3月2日からスタートします。今シーズンの青木選手の目標は、ツアー通算4勝目と複数優勝です。
ボクもこれまで同様、青木選手のサポート役として尽力していく決意です。最後になりましたが、青木選手をはじめ、頑張っている女子プロたちを後押しして頂けるような熱い応援を宜しくお願い致します。
青木瀬令奈
あおき・せれな(リシャール・ミル)1993年2月8日生まれ、群馬県出身。153㎝。22年資生堂レディスオープンでツアー3勝目を飾った。その他ワールドレディスサロンパスカップ2位などの好成績でメルセデスランク11位。賞金ランクは16位。
大西翔太
おおにし・しょうた/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアゴルファーの育成に尽力する一方、青木瀬令奈のコーチもつとめる。メンタルやフィジカルの知識も豊富でメディアでも幅広く活躍中。
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