そもそもウッドではないけれど、ウッドの愛称が愛される理由!
「木の5番と、鉄の4番を持ってきて」ひと昔前までは、ゴルフコースでこんなセリフをよく耳にしたものです。キャディバッグの中にはウッドとアイアンとパターしかありませんでしたから、単純だったのです。
現在はユーティリティを入れるのが普通になって、ウェッジもPWとSW以外のクラブが入っているのが当たり前になりました。例えば5番は、ウッドもアイアンもユーティリティも入っているケースがあり得ます。
ウッドは、3番ウッドのように番手で呼んでも十分に通じますが、同じ番手の別のクラブがある場合は、聞き間違いや言い間違いが出やすいのも事実です。アイアンは番手を数字で呼び、ウッドは愛称で呼べば間違いが起きにくい、と考えたゴルファーが徐々に増えながら、令和の時代になりました。
昭和の時代までは、ウッドのヘッドは木製だったので、ウッドは本当にウッドでした。1980年代の後半から一気にヘッドのメタル化が進んで、当初はメタルの3番とか、違う名称を使う試みもあったのですが、結局ウッドは区分としてそのまま使われています。
そもそも、ゴルフクラブはウッドのクラブが初めに作られて広まっていきました。遠くにボールを”drive=運ぶ”ことができる『ドライバー』は、最も広く使用されている愛称です。
そして、ドライバーはほぼ全てのゴルファーが持っているクラブです。昭和の時代のキザなゴルファーでさえ、木の1番とは言わずにドライバーだけは、ドライバーだったのです。
消えゆく偶数番手と日本独自の誤解の拡散という真実!
20世紀の中頃が、パーシモンという木材を使った本当のウッドクラブの全盛期でした。当時のウッドは4本組みで作られました。ドライバーを筆頭に、2番、3番、4番のセットです。
ブラッシー
現在ではほぼ見ることがない2番は、ブラッシーという愛称です。職人がクラブを作っていた時代の初期は、ソールが使用により摩耗で削れてしまうので、ソールに象牙をはめたりして、耐久性を上げる工夫をしていました。しかしあるとき、それを真鍮の板で代用したのです。
そのクラブは結果として低重心になり、象牙より耐久性も上でした。ボールが上がるし飛ぶし、コスパもいいということで、真鍮ソールは一気に広まりました。真鍮=Brassで、ブラッシーという愛称になったのです。
3番ウッドのスプーン
職人がクラブを作っていた時代、3番ウッドに相当するウッドクラブはフェースを凹面にしていたことが愛称の語源です。これにより、フェース下部のロフトが増えてボールを上げやすくなり、打ちやすくなったからです(現在は規則で凹面は禁止)。
この凹面フェースが、食器のスプーンに似ていたからスプーンと呼ばれました。
バッフィー
4番はバッフィーと呼びます、という紹介をするのが普通なのですが、この愛称は日本独自です。欧米ではスプーンより下の番手の愛称は曖昧で、5番ウッドの愛称がバッフィーだと紹介する文献が多いのです(4番ウッドはその中間だから、スプーンバフィーという説もあります)。
バフィーの語源は諸説あって、スコットランド語で地面を打つという意味の「baff」が転じたという説と、擦るという意味の英語の「buff」が転じたという説が有名です。
「いやいや、5番ウッドはクリークですよ」という声も聞こえますが、クリークは欧米ではロングアイアンの愛称です。クリークが5番ウッドだと誤用されたのは、1938年にウイルソン社が5番ウッド相当の商品名を「ファイブクリーク」として販売し、大ヒットしたことが原因だとされています。舶来の大メーカーが名称に使用しているのだから、5番=クリークで間違いない、と広まったのです。
ちなみにクリークは、鍵をかけるときに出る音の「click」が語源です。金属音なのでやはりロングアイアンですね。
ドライバーという愛称があるのは、ゴルファーに愛されている証拠
令和になったゴルフクラブ市場では、ウッドは1番、3番、5番が主流になって、偶数番手はほとんど見かけなくなりました。3番と5番はネックの近くなどに数字がプリントされていたりしますが、ドライバーはロフトが表記されています。1番という番手の数字は見ることがありません。ドライバーという愛称が愛されている証拠です。
長い距離を打つクラブは、コースで使った1発目で全てが決まる、という考え方があります。もしくは、構えた瞬間に決まる、打つ前にわかるという考え方もあります。いわゆる相性の良さがなければ結果を出し続けるような信頼関係は築けない、ということで、木製のウッドではなくなった現在でも、プロはいうまでもなく多くの上級者も異口同音に相性の大切さを訴えています。
ウッドが苦手なゴルファーは、相性の良いウッドに出逢えていないだけ、という考え方に完全に同意します。ウッドはある程度までは練習で上手くなりますが、ハイレベルになればなるほど、自分に合っているクラブでなければ打てなくなるモノだからです。
相性が悪いウッドは、チェンジです。それを繰り返さないと、相性の良いウッドには出逢えません。素早く行動せず時間を無駄にしていると、一発目説やアドレス説が説得力を増すわけです。
相性が良い運命のクラブのために、愛称があると思うことがあります。愛しさを込めて呼ぶ愛称は、特別なものなのです。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。




