初心者向けアプローチショットの基本的な打ち方
人気プロコーチ・大西翔太がわかりやすく解説!
アプローチショットのような小さいスイングならボールに当てやすいと思いがちだが、これがなかなか難しいもの。「アプローチのスイングにはゴルフの基本が詰まっているんです。この基本を先にマスターしておけばドライバーやアイアンも必ずうまくなりますよ」と大西翔太コーチ。初心者向けのアプローチの基本的な打ち方をしっかり学習して上達に役立てよう。
初心者向けアプローチショットの基本的な打ち方
初心者向けアプローチショットの基本とは
最初にアプローチショットの基本から説明しましょう。どんなショットでもそうですが、アプローチのような振り幅の小さいスイングほど再現性や反復性が求められます。つまり、クラブを何回振っても同じ軌道で振れて、同じ打点でインパクトできるようなスイングです。それを実現するのはとても難しいことですが、複雑な動きをできるだけ省いてシンプルなスイングを目指せばアプローチショットの基本が早く身につきます。
まず両足を軽くそろえるくらいに狭いスタンスで立ち、体重を左右均等に乗せてボールをカラダの中心線の前にセットします。右ツマ先は真正面に向けますが、左ツマ先は軽く開きましょう。これはインパクト以降の腰の回転を促して、フォロースルーをスムーズに出すためです。両手をグリップする位置もカラダの中心線の前。真正面から見ればクラブのシャフトが地面に対してほぼ垂直となる体勢となります。両腕とシャフトが大文字のYに見えるようなアドレスです。
そしてお腹を引き締め、骨盤を前傾させて、両ヒザを軽く曲げます。背中からお尻にかけてのラインがほぼ真っすぐとなるように構えるのが理想のアドレスです。ボールとカラダの間隔は、お腹とグリップエンドの間に握りコブシが1つ半から2つ入るくらいのスペースを作るのが目安です。
アドレスで注意したいのはクラブのソールを芝に均等につけて、ロフト角どおりに構えること。前傾角度が深くて手元が引くすぎるハンドダウンの構えでは、クラブヘッドのトゥ(先側)が浮いてフェースがかぶって目標の左を向きます。前傾角度が浅くて手元が高すぎるハンドアップの構えになると、クラブヘッドのヒール(ネック側)が浮いてフェースが開いて目標の右を向いてしまいます。また両手が右モモの前のハンドレートの構えはクラブフェースが寝てしまいますし、両手を目標側に突き出しすぎた極端なハンドファーストの構えではフェースが立ちすぎてしまうことになります。
アプローチに使うクラブは何がいいかというと、サンドウェッジが断然オススメです。ピッチングウェッジやアプローチウェッジでも構いませんし、初心者のうちはサンドウェッジは難しすぎると思う人も多いことでしょう。でもサンドウェッジのソールの出っ張った部分をバウンスというのですが、このバウンスを使って打つコツを最初につかんでおけばアプローチショットの基本が早く身につきますし、アプローチのバリエーションを広げることができます。さらに多くのゴルファーが苦手意識を持っているバンカーショットだってすぐにうまくなります。
初心者向けアプローチショットの打ち方
バウンスを使って打つのは難しいと思われがちですが、案外そうでもありません。バウンスがうまく使えないとしたら、アドレスが一番の原因です。前述したようにハンドダウンやハンドアップの構えや、ハンドレートや極端なハンドファーストな構えではバウンスが使えません。それ以前にバランスがとれていないアドレスでは、スイング中に腕や手が余分な動きをしやすく、スイングの再現性や反復性がなくなってインパクトの打点が安定しないのです。真正面からシャフトが地面と垂直に見えるような体勢を作り、ボールとカラダの適切な間隔を保ってソールの全体を芝につけて構えることが大前提なのです。
アドレスが決まれば、あとは構えたときのグリップエンドとお腹の間隔をキープしてスイングするだけでOK。手先だけでクラブを振り上げたり、インパクトで手首をコネたりしてはいけません。腕や手に頼らずに、お腹の回転主体でスイングすることが重要なポイントです。腕やクラブをカラダの真正面にセットしたままで、お腹を右に回してテークバック。そして、お腹を元に戻してインパクトし、お腹を左に向けてフォロースルーへと振り抜きましょう。このようにアドレスのグリップエンドとお腹の間隔をキープしてスイングすればスイングがとてもシンプルになりますし、バウンスが自然に使えるようになります。
スイングの振り幅としては、テークバックもフォロースルーもクラブが水平の高さが目安と考えてください。時計盤でいえば9時くらいの高さまで上げて、3時くらいの高さまで振り抜くイメージですが、それよりもやや大きい10時から2時の振り幅となっても構いません。とにかくグリップエンドとお腹の間隔を変えずに、お腹の回転でスイングすることを第一に考えてください。テークバックでワキが大きく開いたり、インパクトで腕をネジったり、下半身が止まって手打ちになったりするのはNGです。
アプローチのスイングがしっかりしている人は、スイング全体がしっかりしています。3時から9時までの小さいスイングの練習は、安定したインパクトゾーンを作る上でとても有効です。このスイングの軌道が安定すれば、インパクトの打点の正確性もアップしてアプローチがどんどん上達します。フルショットでも球が曲がりにくくなりますから、プレッシャーに強いスイングを実践できるわけです。初心者の方こそ、アプローチショットの基本的な打ち方の練習を多く積んでください。
初心者向けアプローチショットのドリル
初心者向けアプローチショットの基本的な打ち方を早くマスターできるオススメの練習法を2つ紹介しましょう。一つ目はグリップエンドがお腹につくまでクラブを短く持って構え、9時から3時までの振り幅で素振りを繰り返す練習です。大事なポイントは腕や手を一切使わず、グリップエンドがお腹から離れないようにスイングすること。スイング中にワキがあいたり、腕をネジったり、手首をコネたりするとグリップエンドがお腹から離れてしまいます。
もう1つは地面の上にスポーツタオルを敷いて、素振りする練習です。タオルの上にボールを置いて実際に打っても構いません。9時から3時までの振り幅よりももう少し小さい8時から4時までの振り幅で、バウンスをタオルの上で軽く滑らせてスイングしましょう。タオルを空港の滑走路にたとえれば飛行機の着陸のイメージでクラブヘッドを鈍角に入れて、バウンスを軽く滑らせた後は飛行機の離陸のイメージでクラブヘッドを鈍角に振り抜きます。上から打ち込んだり、下からすくったりするとタオルが大きくめくれてしまいます。タオルが少し飛んでも、ひどくめくれなければ合格です。
〈初心者向けアプローチショットの基本的な打ち方のまとめ〉
・狭いスタンスで立ち、両腕とクラブが大文字のY字に見える体勢で構える
・サンドウェッジを使ってバウンスを使って打つコツを先に覚えよう
・グリップエンドとお腹の間隔をキープし、お腹の回転主体でスイング
・9時から3時までの振り幅で、安定した軌道をマスターする
初心者はシンプルなアプローチからマスターしよう。
Y字のアドレスを作り、お腹の回転主体で9時〜3時の振り幅でスイング。
※動画はショット音が流れますので音量にご注意ください。
取材・文/三代 崇
写真/渡辺義孝
協力/静ヒルズカントリークラブ
大西翔太
大西・翔太/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアの育成に尽力する一方で、青木瀬令奈のコーチもつとめる。21年は宮里藍 サントリーレディスオープンで、青木の4年振りツアー2勝目に貢献した。メンタルやフィジカルの知識も豊富。女子ツアープロの大西葵は実妹。
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