短く切ったクラブを使ったり、片手打ちをしたり…プロもいろんな工夫をして練習しているのだ
ジャンボに聞け!ジュニアゴルファーの育て方 VOL.18
ジャンボが独自に作成したミニクラブを使って、台の上にティアップしたボールを片手で打つトレーニングは定番と言えた。
いよいよこの連載もあと2回を残すのみ。そこで今回は見過ごされがちなポイントであるグリップについて掘り下げてみよう。ジャンボ尾崎の愛弟子であり「誰も書けなかったジャンボ尾崎」(主婦の友社刊)の著者である金子柱憲プロは「クラブと体の唯一の接点であるグリップはもちろん重要」としたうえで、ジュニアゴルファーが取り組むべき㊙練習法を明かしてくれた。
GOLF TODAY本誌 No.618/110〜111ページより
取材・構成/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗
撮影/相田克己
体とクラブを繋ぐ唯一の接点、グリップは特に重要
小指、薬指、中指でしっかり握ってフォローでクラブは立てるように!
グリップの重要性をジャンボ軍団にも説いていた尾崎将司。
「お前ちょっと、左手弱いのと違う?」。
ジャンボ軍団の合同キャンプで、各選手の練習を見ながら、ジャンボがよく口にしていたのがこの言葉だという。金子はその頃を思い出したのか、おもむろに左手1本の素振りを始め、こう言った。
金子の独白 「言われた方はプロだからピンと来ますよ。小指、中指、薬指。左の指3本が、最も重要ですからね」。そう言いながら、金子はクラブをグイッと突き立てた。
ジャンボ軍団のトレーニングで、定番となっていたのが短く切った「ミニクラブ」を片腕で握り、台の上にティアップされたボールを打っていくトレーニング。
トレーニング内容とは
(1)グリップではまず左手の小指、薬指、中指が最も重要という金子プロ。
金子が「この時に大事なのが、まず左指の3本でしっかり握ること」(左・写真1)と言いながらボールを打って見せた。フィニッシュでクラブが立つようにすることも、大事だという。
金子の独白 「こんな風にクラブが斜めになったり、横に倒れるのはダメ。面(クラブフェース)が被っちゃうから。
クラブを立てるようにすることで、フェース面が変わりにくくなる。押す動作ができるわけ。手首をリリース、すなわち返す時にフェースの開閉を抑えるには、この方法しかないです」。
そのうえで、一段階上のトレーニングについて、金子は明かした
(2)左手片手打ちで、フォローではクラブが立ってくるのが正しいフォーム。(3)フォローでクラブが寝てしまうのは、フェース面が被ってミスになる。
金子の独白 「インパクト後に、ヘッドを右方向に出していく。この動きはきついですよ。筋力がいる。その後フィニッシュで、クラブをこう立てる」(写真2)。
「このときもダメなのは、クラブが寝てしまう形です」(写真3)
左指の3本でしっかりグリップし、テークバック。フィニッシュまでしっかり振り抜き、クラブを立てる。
「この場合、アウトサイドインの軌道で振れば、簡単にクラブは立てられる。でもインサイドアウトに振るとクラブを立てるのは本当にきついのです」
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さらに金子は、こう続けた。
金子の独白 「この動きができるようになるには、左の小指からヒジまで走る筋肉が、強靭でなければならない。一朝一夕ではできません。特にジュニアにはね」。
ではジュニアがこのスイングを身につけるには、どうしたらいいのか。金子は言う。
「こういうテクニックは1日や2日ではマスターできません。コツコツ練習していくしかないです。努力を続けて行けば、時間はかかるけれどいずれはできるようになります」。
上達するためには練習の工夫が必要
一方、右手1本の練習にはどのような効果があるのか。「右手は、ムチみたいに使う。自然に『ためる』という、強さの中にも柔らかさを身につける。右手はそういう『タメ』が重要になる。左手はやっぱり下(下半身)で引っ張ってくる強さが肝心」。
左打ちで打面の開閉が少なくするには、下半身のリードで押し込む動きも必要になってくるわけだ。
「ジュニアはやっぱり、自分で研究して結果的にそういう動作になればいい。それぞれに感性も違うし、スイングも違うのだから。プロゴルファーでも様々なスイングがあるけども、やはりこういう部分では同じ動き。共通する動きになるわけです」
その練習の中で求めるべきものを、金子は明かした。
金子の独白 「遠くに飛ばして、なおかつその枠の中に飛ばす。これが一番難しいわけですよ。それにはワンピースのスイングが一番いい。加速していって、フィニッシュまで一気に振り抜く。言うのは簡単で、やるのはすごく大変。普通はこれができない」。
極限まで飛ばし、しかも狙ったところに落とす。究極のテーマは、ゴルファーすべてに共通する。
「だからトッププロも、やはりそこを目指しています。一気にフィニッシュまで振り抜くっていうね。だから日々の反復練習が必要になってくる。こういうのって、練習で打ってその時はできても、体に染み込ませるのは大変。悪いクセを治したくても、漠然と打ってるだけでは、なかなか治らない。基本の動作と繰り返しという、一つ一つした部分が必要になってくる」
その道は、やはり楽なものではない。
「ジュニアの子たちにとっては、楽しくない。だからこそ、やはり工夫が必要なんだよね。いかにあきないように、様々な工夫をして、(スイングを)直していくという」。
だからこそジャンボも、短いクラブなど、あらゆる道具を生み出した。ジュニアたちにも、上達のために変化に満ちた練習を工夫する必要が、ありそうだ。これもまた、ジャンボの教えだ。
金子プロからジュニアへのワンポイントアドバイス
グローブのサイズは少し小さめにして使っていくうちになじむように!
グリップを語るとき、外せないのがグローブ選び。金子自身は「手汗をかく方なので、革製ではなく、全天候型のグローブを使っていた」という。サイズについても「小さめのものをつけ、使っているうちにちょうど良くなるものを使っていた。ジュニアの場合もグリップが滑らないように、サイズの合ったものをしっかり選んだ方がいい」(金子)。
金子柱憲(かねこ・よしのり)
1961年3月4日生まれ。東京都出身。日大卒。
14歳でゴルフを始め、アマチュア時代は日本オープンベストアマ、関東学生優勝。1982年の韓国オープンではプロを抑えて優勝。1983年プロ入り後、ジャンボ軍団入り。91年に関東オープンで初優勝。ツアー通算6勝。
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