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「ダウンスイングではクラブを立たせる」今はやっていないけど、昔やらされていたこと

石井良介のゴルフ・すべらない話:第14回

2024/03/06 ゴルフサプリ編集部

石井良介,奥嶋誠昭

石井良介の一面を一人語りという形でお届けする連載企画「石井良介のゴルフ・すべらない話」をどうぞ。第14回は、前回に引き続き奥嶋誠昭コーチとの対談です。テーマは「昔の練習」。

写真/ゴルフサプリ編集部

フックを打つようになってアンダーが出たのにスライスに戻された

奥嶋 スイングのことを学んできて思うのは、僕らが学生時代にやってたことは正しくなかったってこと。

石井 当時はそれが正しいと思ってやるしかなかったからね。

奥嶋 でも、ほとんどの人はいまだにやっているよ。

石井 「ワキを締めてクラブを立てて下ろす」とか?

奥嶋 やったね。上からヘッドをドーンと入れたらフィニッシュは惰性でいい、みたいな。そりゃ地面を刺すようなスイングになるよ。

石井 今はワキなんか締めないでしょ。必要な時に締まるから。

奥嶋 そうだね。

石井 僕は「フィニッシュが小さい」とも言われていた。

奥嶋 そりゃ大きくなるわけないでしょ。ワキを締めているんだから。

石井 でしょ。でも「フィニッシュを大きくしろ」って言われるから「どうすりゃいいの?」って。その先は「練習しろ」で終わり(笑)。「上から打ち込め」も良くないよね。

奥嶋 僕もそう習った。打ち込んで刺さって終わっちゃうから今ではあり得ない。

石井 当時は刺して終わりで良かったんだよ。「刺せ」とは言わないけど打ち込め。パンチショットみたいにドーンと落として終わり。あと「クラブを寝かすな」ね。今はシャローイングとか言ってるのに。そういえば学生時代に開眼してフッカーになった時があって、その時に人生初のアンダーが出た。「これで上手くなれるぞ!」と思ったら「そんなのダメだ。クラブは立てて下ろせ!」と言われてスライスに戻されたことがあった。

奥嶋 もともとはスライスだったの?

石井 そう。スライスに悩んでいて、試行錯誤してフックが出るようになったと思ったらスライスに戻された。

奥嶋 フックになったのはクラブを寝かせたから?

石井 寝ちゃったんだよね。戻されたら70台前半で回れていたのが80台に逆戻り。そういう時代だった。

奥嶋 「バンプしろ」とも言われたでしょ。

石井 そうそう、何なら左カカトなんてアウトステップしてた。

奥嶋 「左のカベを作れ」だね。カベを作っちゃうと腰が回らないんだけど(笑)。

石井 今や「カベって何?」という時代。ベタ足が流行ったり、ニーアクションもあった。

奥嶋 ニーアクション、確かに言われた。「ヒザを流して低く長いインパクトを作れ」って。だから左ヒザは曲げておけと習った。そのせいでダウンスイングで倒れるクセがついちゃったよ。腰が下がるから腰痛にもなりやすい。今は左ヒザは伸びるでしょ。こう見てくると、自分が気づかないだけで、どこかに昔の間違った常識がこびりついているかもしれないな。

石井 その時に一番練習していたからね。

奥嶋 そうそう、身についちゃっているだけに簡単には抜けない。考えたらずっとそれを剥がす作業をしてきた。今の知識が学生時代にあったらどれだけ楽だったかと思うよ。

コックのレッドベターとノーコックのブッチ・ハーモン。どっちが正しいの?

デイヴィッド・レッドベター

石井 雑誌とかは見てた?

奥嶋 めっちゃ見た。

石井 僕は学校に行く前に買っていた。当時載っていたことで、今でもやっていることもある。デイブ・ペルツのウエッジの3 X 3システムとかね。3本のウエッジで3種類の打ち方を作り、キャリーを測って自分の尺度を作る。「なるほど」と思って、それまで感覚でやっていたのをその方法にしてみた。あと、僕らの時代はレッドベターがバリバリだった。ニック・ファルドとニック・プライスが全盛で、その後にブッチ・ハーモンが出てきて、「コックしろ」と言うレッドベターと「ノーコックだ」というブッチ・ハーモンで「どっちなんだよ?」と思った。

奥嶋 僕はノーコック派。意図的にコックを入れると上手く振れなかった。

石井 スタンスの狭いレッドベターとワイドスタンスのブッチ・ハーモンでもあったよね。国内ではジャンボ軍団と丸山さんが強かった時代で、職人技みたいな領域が正解になっていた気がする。

奥嶋 結局どうしたらいいかわからないとそうなっちゃう。強い人が言ったら、それをやるしかない。何たって正解がないんだから。いずれにせよ、僕が当時のことで役立っていることがあるとすれば、それが反面教師になっていることくらいかな(笑)。

石井 でも、僕が習っていたシニアプロが、どう打っているのか知りたい欲求はあったよ。それを知るためにトラックマンを買った面もあるくらい。例えば誰が打っても転がっちゃう下りのアプローチで、そのプロだけは止められる。何が起きているんだろうと思って打ってもらったらボール初速がすごく遅い。あと、うちの親父が「ちょっとカット」と言うとアウトサイドイン1度、「もうちょっとカット」で2度、「もっとカット」で3度になった。フックも同じで1度単位で変わる。「何だ、この人」と思ったね。昔の人って言うこととやることが違ってた。すごいことをやっていたのに伝える語彙がなかったんだね。僕らはそういう時代のはざかい期にいた。道具にしてもそう。パーシモンは使った?

奥嶋 使った。でも、僕らは最後の方じゃないかな。そう考えると今の時代にゴルフをやる人はいい。情報量が違うから相当無駄が省ける。

石井 何をやればいいかが明確だよね。今の大学生は330~340ヤード飛んで当たり前になったでしょ。

「練習でできるから本番でできる」と思っていること自体がお門違い

奥嶋 でも、“何とか理論”とか言う人は減ってきた気がする。

石井 プレーヤーの感覚論と実際のスイングを照らし合わせられるようになったからね。でも感覚は感覚で、本人はそれで上手くいってるからいいわけで。

奥嶋 そうだね。感覚は大事だから否定できない。

石井 むしろ最後は感覚でしょ。昔、青木功さんに「フェードを打つ時はどんなことを考えるんですか?」と聞いたら「“フェード”って思うんだよ」と言われて妙に納得した。確かにその通りで、フェードと思えば構えもボール位置も変わるだろうから。要は「練習していればフェードって思えば出るようになる。打てなきゃもっと練習しろ」ってことだったんだと思う。ある意味、究極だよね。

奥嶋 とはいえ、アマチュアの人は何かしら基準がないと無法地帯になって、どこに戻ればいいかわからなくなるから、自分の中で基準は作っておいた方がいいと思う。

石井 ラウンドで基準に当てはめても当たらなそうだったら、当たりそうなところにボールを置くとかね。でも、基本的には練習しておかないといけない。そういえば、よくアマチュアの方に「練習では上手くいくのに実戦だとダメなのはどうして?」という質問を受けるけど、どう思う?

奥嶋 まあ、練習場みたいに平らなところばっかりで打っていてもラウンドでは上手くいかないよね。

練習場

石井 僕はそんな人に必ず聞くんだけど、例えば練習でPKを外すサッカー選手っていない。そんな選手が試合でPKを外した時に「練習ではできたんですけど」と言いますか?って。もし言ったとしても「もっと練習しろよ」と言われるだけ。なのにゴルファーは平気で「練習ではできるのに」と言って首を傾げる。そもそも、それを本番でどう発揮するかがスポーツで、練習でできるからって本番でできると思っていること自体がお門違い。練習でマン振りばっかりしても、マン振りできる平らなところはコースにほとんどない。だから平らじゃなくても打てる練習をしておかないといけない。本番でやることを練習しているの? って話なんだよ。

奥嶋 確かにみんなフルショットの練習しかしていないもんね。

石井 練習自体がドリル的なものにならないといけないんだと思う。

奥嶋 あとはひたすら意識し続けるしかないでしょ。「もっと飛ばしたい」とか「こうなりたい」という目標があるなら、我慢して意識して続けるしかないよ。何となくでも動きができれば、球なんて真っすぐ飛ぶんだから。

石井 ちゃんと練習していると時々プライムタイムがある。全部上手くいく時がくる。それをできるだけ多くしたいからもっと練習する。結局はそういうことなんだろうね。




石井良介

石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。





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