どれも慣性モーメントは最大級!Qi10やG430など「MAXドライバー11機種」の違いはどこにある?
気になるギア|MAXだらけの最新ドライバーみんな同じ名前だけどどこが違う?
2024NEWモデルドライバーを見渡すと「MAX」という名が妙に多いことに気が付く。ここ数年、高初速エリアとスイートエリアの拡大競争が続いていたから、この2つが最大ということなのか? メーカーが違ってもどれも似たり寄ったりなのか? そこで、クラブ分析のプロに各モデルの性格診断をしてもらった。
GOLF TODAY本誌 No.624 135〜137ページより
構成・文/大塚賢二 協力/二木ゴルフ
MAXドライバー11機種 軸周り慣性モーメントと重心アングル計測で性格診断
もともとメーカーごとにクラブの性格に傾向がある
「2024モデルのMAXドラバー11機種を計測しましたが、共通しているのは各社の前作より軸周り慣性モーメントが拡大していて、ヘッドの直進性が上がっています。」と言うのは、今回計測を依頼した、二木ゴルフの杉山公平氏。
「クラブの設計には、各社特色があって、ヘッドの直進性を重視するメーカーもあれば、操作性を重視するメーカーや、モデル別に直進性と操作性のバランスを変えるメーカーもあります。メーカーそれぞれの特色の中で直進性=軸周り慣性モーメントが拡大しているということです」名前は同じ「MAX」でも、メーカーごとに味付けが違うということだ。
軸周り慣性モーメントと重心アングルによる分類では4つのタイプに分けられたという。また、さらにヘッド重量や重心高さなども加味して、MAXドライバーそれぞれの違いを書いた診断書も作成してもらった。
チャートと診断書で名前は同じ「MAX」でも、どのような差があるのかを見てみよう。
計測したのはこの11モデル
軸周り慣性モーメント
シャフト軸を中心とした慣性モーメントが「軸周り慣性モーメント」。この数値が大きいほどヘッドの直進性が高く、ミスヒットに強くなるが、直進性が上がるとヘッドは返し難くなる。つまり、“返しやすさ”の指標。
重心アングル
シャフトを台に乗せ、ヘッドを台から垂らした時に、垂直線に対してフェースが何度上を向くかが「重心アングル」。これが大きいほど、スイング中の遠心力でフェースが左を向こうとする。“返りやすさ”の指標。
計測結果チャート
Aタイプの特性
軸周り慣性モーメンドが大きく、ヘッドの直進性が高い。ミスヒットでもヘッドのブレが少なく、インパクト時のフェース向き通りにストレートボールが打ちやすい。ただし、フェースが開閉する動きは緩慢なので、フェースローテーションが少ないスイングが必要。
Bタイプの特性
直進性は高めながらもヘッドの操作性も持たせたタイプ。ヘッドの直進性で球の曲がりを抑えながら、フェースローテーションの動きにも追従するので、ゴルファーそれぞれの持ち球を生かして、狙った球筋で飛ばしやすい。最近、主流となりつつあるタイプ。
Cタイプの特性
重心アングルが大きく、軸周り慣性モーメントは控えめのタイプ。軸周り慣性モーメントが控えめなので、重心アングルによる自然とヘッドがターンする動きが出やすく、同時にフェースを返しやすいので、球のつかまりが最も強く、右曲がりが減るタイプ。
Dタイプの特性
軸周り慣性モーメントは大きく、重心アングルは控えめ。ヘッドの直進性で左右のブレは抑えつつ、球のつかまりは控えめになる。Bタイプのつかまりを控えめにしたものという見方でOK。球がつかまり過ぎて左方向へ曲がり過ぎるミスを避けたい人に合うタイプ。
Eタイプの特性
軸周り慣性モーメントも重心アングルも控えめ。5つのタイプの中で、最もヘッドの操作性が高くなるので、フェースローテーションが多い人や、上下左右に球筋をコントロールしたい人にマッチするタイプ。ただし、ミスヒットに対する寛容性は低くなる。
メーカー別診断書
ピン|直進性がMAX
「G430MAX」で既に、トゥ~ヒール方向の慣性モーメントは上限に迫っていたので、最新の「G430 MAX 10K」と「G430 MAX 10K HL」では、上下の慣性モーメントを拡大し、スイートエリアをフェース全面方向に拡大。低重心化も図り「どこに当たっても飛ぶ」ように進化しています。10K HLはヘッドが軽い分、少し操作しやすくなっています。10K、10K HLどちらも非常に直進性が高いので、フェースローテーションが少ない人向きとなります。
キャロウェイ|ボール初速がMAX
Aiフェースによる初速性能の高さがキャロウェイの特徴です。操作性と直進性のバランスを取っているところは、これまでのモデルから大幅に性格が変わっていませんが、全体的に重心アングルが拡大しましたので、球のつかまりが向上しています。MAX FASTはヘッドが軽い分、操作性が少し高くなります。MAXとMAX Dはチャート上ではほぼ同じエリアにありますが、MAX Dはライ角をアップライトにすることで球のつかまりを強化しています。
テーラーメイド|やさしさMAX
SIM、SIM2、ステルス、ステルス2の多くが、チャートのBタイプの左側に分布していましたが、Qi10ではかなり意図的に軸周り慣性モーメントを拡大しています。また、同時に重心アングルも拡大しているので、直進性は高めながら球のつかまりを確保しようという意図が見られます。Qi10 MAX、Qi10 MAX LITEともに、オートマチックに球をつかまえて、直進性で真っすぐ飛ばす。やさしさを重視したモデルになっています。
ブリヂストン|やさしさMAXとつかまりMAXの D
ブリヂストンのドライバーは、以前はEタイプのモデルが中心でした。最近では徐々に右上に移動し、Bタイプの左側のモデルが主流となって来ていました。その中でB3の2タイプは、思い切って大きく右側に移動させています。B3 MAXは軸周り慣性モーメントと重心角を拡大して、よりオートマチックにやさしく打てる設計。B3 MAX Dは、軸周り慣性モーメントはあまり拡大せず、重心アングルを大きくして、球のつかまりを重視した設計になっています。
コブラ|球の強さMAX
DARKSPEED MAXは現在主流のBタイプのど真ん中といった計測結果です。チャートからは、ニュートラルな特性と言う見方もできますが、重心位置のデータを見たところ、フェース面上の重心高さがかなり低くなっていました。これまでのコブラのドライバーもそうでしたが、適度な直進性と操作性に加え、低スピンによる強い球が出ると言うのが特徴です。
ミズノ|つかまえやすさMAX
これまでのミズノのドライバーの多くは、チャートのEタイプに分布していました。ヘッドの操作性を重視して設計していたと考えられますが、ST-MAX 230では、軸周り慣性モーメントを拡大しています。ミズノとしては最大の慣性モーメントですが、特性としては操作性を持たせながら、スイートエリアを拡大したモデルになっています。
杉山公平
(すぎやま こうへい)
大手クラブメーカーで27年間クラブ開発に携わる。現在は大手ゴルフ量販「二木ゴルフ」で取り扱うすべてのクラブの分析を行う、クラブ分析のプロ。愛称は「ドクター スギ」。
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