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APEX Ai200/300 アイアン & OPUS ウェッジ~キャロウェイの新モデルに継承される開発哲学~

ギアモノ語り VOL.42|Callaway APEX Ai200/300 OPUS

2024/09/05 ゴルフトゥデイ 編集部

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キャロウェイからは続々と新製品が発売されるが、そのたびに話題になっている。今年も『パラダイム Ai SMOKE』や『X フォージド スター』が大ヒットし、ミニドライバーや『オデッセイ』も好調。秋に発売されるアイアンとウェッジも注目度が高い。なぜ、次々に魅力的なモデルを開発できるのか?そこには創業当時から継承される開発哲学があった。
ゴルフトゥデイ本誌 628号/62~72ページより
取材・構成・文/野中真一  撮影/相田克己、PMT

明らかに優れていて、その違いを楽しめる

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APEX Ai200/300|鍛造、AI、鍛造

今年で10周年を迎える『APEX』アイアン。その進化と開発哲学について、米国本社の開発部門(R&D)を統括するヴァイスプレジデント、ブライアン・ウィリアムズ氏に話を聞いた。

カールスバッドで初代『APEX』を取材したのは2013年11月だった。それ以来、約10年間にわたり『APEXシリーズ』の変遷を取材してきたが、今年の秋に『APEX パフォーマンス シリーズ』として発売する『APEX Ai200/Ai300』は今まで一度も見たことがない構造をしていた。

そもそも、『APEXシリーズ』では一貫して鍛造にこだわってきた。その理由を開発を指揮するブライアン・ウィリアムズ氏に聞いた。

「このブランドはAPEX(=最高峰)を求めているアイアンです。開発のプロセスも素材もプレミアムなモノを常に追求しています。製造コストを惜しむことなく開発しています。今回の新モデルでは開発初期から構造そのもののレベルを高いものにしようというコンセプトでした。複合構造でも、1枚モノの軟鉄鍛造に近い打感にするためにあらゆるアイデアを出し合いました。そのなかでフェースカップでありながら鍛造製法にすることに挑戦しました。これは決して簡単なことではありません。フェースカップもソールだけではなくホーゼル方向にも広げたことでミスヒットに強くしています」

フェース素材はカーペンター455スチール。かつてはフェアウェイウッドなどに使用されていた反発性能が高い素材。2014年の初代『APEX』にも同じ素材を使っていたが、当時はフェースカップにはできなかった。その理由は耐久性をクリアできなかったからだ。2代目以降はフェースカップにするために素材を17‐4 ステンレススチールに変更した。しかし、『APEX Ai200/Ai300』ではあえてカーペンター455スチールでフェースカップ、鍛造製法という最高峰の構造にチャレンジした。

唯一無二の複合設計で明らかに優れたパフォーマンス

そしてボディも鍛造製法にこだわった。

「競合他社はボディを鋳造にする製法にするようになりましたが、キャロウェイは鍛造にこだわりました。鍛造フェースを受け止めるボディも鍛造にすることによって、1枚モノの軟鉄鍛造と同じような打感に近づく。開発段階では数カ月にわたり、アマチュアゴルファーに試打をしてもらいましたが、『今までのAPEXアイアンで最も打感がいい』と聞いてすごく感激しました」

もう一つ、キャロウェイといえばAI設計のフェース。ただし、他のAiスマートフェースとは違う。

「例えば今年発売された『パラダイム Ai SMOKEアイアン』で採用したAIの活用方法とは全く異なるアプローチをしています。そもそも『APEX』を使用するユーザーは熱心なゴルファーです。AIの活用ツールとしては弾道の補正や左右の曲がり幅の改善よりも、キャリーの飛距離、打ち出し角、スピン量を一定にすることを優先しました。また『Ai200』と『Ai300』でもAiスマートフェースの構造は異なります。『Ai300』では少しスイングスピードを落としても打ち出し角を出せるフェースにしています」

フェースもボディも鍛造、そしてAIによって設計されたフェース。そんな構造のアイアンを作れるのは今、キャロウェイだけだろう。

キャロウェイには創業者であるイリー・キャロウェイが残したDSPD(Demonstrably Superior and Pleasingly Different)という開発哲学がある。日本では“明らかに優れていて、その違いを楽しめる”と訳されている。ブライアン・ウィリアムズは開発の背景として、その哲学が現CEOのチップ・ブリュワーも取り入れていると語った。

『Ai200』と『Ai300』でAiフェースの凹凸が違う

Demonstrably Superior
Demonstrably Superior

『Ai200』は80台のゴルファーでダウンブローに打てることを想定したAiスマートフェース。『Ai300』は90台以上のゴルファーデータをAIにインプットしたフェース形状になっているので凹凸が違う。

Callaway Golf
Vice President,R&D Golf
ブライアン・ウィリアムズ
Brian Williams

打感、顔、飛距離、やさしさ、デザイン。すべてを妥協せず米国№1アイアンに

米国にあるキャロウェイゴルフの本社に行くと、開発施設につながる廊下にも「Demonstrably Superior and Pleasingly Different」の文字が描かれている。その開発哲学があったからこそキャロウェイは『APEX』という米国No.1アイアンを開発することができたのだろう。

初代『APEX』が登場する2014年以前、キャロウェイのアイアンは苦戦していた。米国でのシェアは2位か3位。1位のメーカーとは差があった。しかし、2014年に『APEX』が発売されるとすぐに大ヒットを記録して、2014年の№1セールスを記録。当時、米国のアマチュアゴルファーに取材をすると「米国にはフォージドアイアンで飛距離性能が出て、やさしいアイアンはなかった。『APEX』がはじめてだった」と語っていた。当時の『APEX』についてブライアン氏は、

「革新的なコンセプトでした。キャディバッグに入れて誇らしい外観、驚異的な飛距離性能、そしてフォージド アイアンの打感にもこだわっていたことがアクティブゴルファーに受け入れられました」 

今作で5代目となる『APEX』だが、歴代シリーズの開発については、

「もちろん、キャロウェイのDSPDを継承するために徹底的なテストをしながら、開発チームでも“明らかに優れたパフォーマンス”を証明しようと常に努力をしています。外観、飛距離、打感にこだわるコンセプトを引き継ぎながらも前作より優れたモデルを開発するまで発売することはありません。アイアンにおける全ての要素において妥協しないことで『APEXアイアン』は米国でもロングセラーになっています。その要素にプラスして、『Ai200/Ai300』ではツアープロが好むインスピレーションを感じる形状にもこだわりました。そのためにポケットキャビティではなく、中空構造でモダンなシェイプにしています。当社のテストセンターではプロもアマチュアもロボットもテストしていましたが、我々が目指していた以上の結果でした」

もう一人、キャロウェイでは重要な人物が新製品の試打をする。2012年からCEOをつとめるチップ・ブリュワー氏だ。

「練習場でもコースでも、彼は当社が製造するほぼすべての製品を打ちます。彼は創業者イリー・キャロウェイのDSPDの哲学を現在でもキャロウェイの経営方針の根幹、戦略として採り入れています」

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APEX Ai200
SPEC
●ロフト角(♯7)/30度
●素材(♯7)/鍛造カーペンター455
スチール、Aiスマートフェース、フェースカップ、軟鉄鍛造ボディ、ウレタン・マイクロスフィア、タングステンウェイト
●価格(税込)/21万1200円(6本セット・5I-PW)、3万5200円(単品・4I、AW)

APEX Ai300
SPEC
●ロフト角(♯7)/29度
●素材(♯7)/鍛造カーペンター455スチール、Aiスマートフェース、フェースカップ、軟鉄鍛造ボディ、ウレタン・マイクロスフィア、タングステンウェイト
●価格(税込)/21万1200円(6本セット・5I-PW)、3万5200円(単品・4I、AW)

米国ではフォージドディスタンスのパイオニア

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2014年に発売された『APEX』、2016年の2代目『APEX』は米国ではフォージドディスタンスという新カテゴリーのパイオニアとして評価されている。

「大ヒット中の『X フォージド』よりも性能と結果は“明らかに”上です」

今作から『APEX パフォーマンスシリーズ』という新しいカテゴリーになった『Ai200』と『Ai300』。間違いなく、歴代APEX史上最高のアイアンになっているだろう。ただし、今年の日本市場においては『X フォージド スター』が品切れになるくらい大ヒットしている。『X フォージド スター』との比較について、日本のキャロウェイゴルフ株式会社でアジアプロダクトマネジメントを担当する石野翔太郎氏に話を聞いた。

「もちろん、『X フォージド スター』もすごく良いアイアンです。軟鉄鍛造なので打感も評価されています。ただし、あくまで一枚モノとして性能を高めたアイアン。『APEX パフォーマンス シリーズ』の『Ai200/Ai300』はキャロウェイがもっているアイデア、素材、設計、AIをすべて注ぎ込んだ複合構造のアイアン。性能や結果が優れているのは明らかです」

「『Ai300』と『Xフォージドスター』の7番アイアンはどちらもロフトが29度ですが、間違いなく『Ai300』の方が飛びますし、ミスヒットにも強いです」

「『Ai300』と『Xフォージドスター』の7番アイアンはどちらもロフトが29度ですが、間違いなく『Ai300』の方が飛びますし、ミスヒットにも強いです」

キャロウェイゴルフ株式会社
ハードグッズ アジアプロダクトマネジメント
石野 翔太郎
Ishino Shotaro

19カ月かけて改良した「顔」。スピンの違いを楽しめる「17の刃」

過去のウェッジでも、もちろんツアープレーヤーのテストをしながら開発をしてきた。しかし、新シリーズ『OPUS(オーパス)』では、キャロウェイ史上、最も長い時間をかけてプロにテストしてもらい、改良を続けて完成した。

最初のテストがはじまったのは2022年。改良を重ねたプロトタイプ(試作品)は6モデルにもおよんだ。この開発過程について石野氏は、

「顔と形状だけで、約19カ月間をかけてツアープロの意見を取り入れながら開発していきました。歴代のキャロウェイのウェッジでも、これだけ長い期間をかけて開発したウェッジはなかったと思います」

ザンダー・シャウフェレ、ジョン・ラーム、笹生優花、ローズ・チャンなど世界のトップ選手が試作段階のウェッジをテストしていた。そんな選手の声をもとに、具体的にどのように形状を改良したのか?

「ポイントは大きく3つあります。まずはリーディングエッジのゆるやかな丸み。ストレートすぎても、丸すぎるのも良くないので選手からのリクエストに応えて絶妙なカーブになっています。2つめはホーゼルからフェースにつながるライン。出っ張りすぎることなく流線型の滑らかな形にしました。そして、3つめはトップライン。今までのウェッジよりもティアドロップ型が強調された形になっています」

さらにスピン性能も前作『ジョーズ RAW』からさらに高めている。

「もちろん『ジョーズ RAW』もスピン性能は高く評価されましたが、『OPUS』ではさらにスピン量を上げるために溝と溝の幅を狭くして、溝を2本増やして17本にしました。ラフや湿った状況からのスピン量は10%以上も向上し、打ち出しは低くなった。低く出てギュギュッとスピンが入る。それもプロが求める性能でした」

『OPUS(オーパス)』という名前はカリフォルニア・ナパバレーの高級ワイン『オーパス・ワン』を参考にしたもの。最高峰のウェッジという自信作。石野氏は「グリーン周りから短いアプローチを打ったときのスピン量は“明らかに違います”」と語った。

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OPUS
SPEC
●ロフト角/48、50、52、54、56、58、60
●素材/軟鉄
●シャフト/N.S.プロ950GH neoなど
●価格(税込)/2万9700円

ミーリングを斜めにすることでフェースを開いたときのスピン性能が向上

溝と溝の間にあるマイクロフィーチャー(ミーリング)は斜めに約20度の角度をつけることによって、フェースを開いたときでもスピンが入るようになっている。
溝と溝の間にあるマイクロフィーチャー(ミーリング)は斜めに約20度の角度をつけることによって、フェースを開いたときでもスピンが入るようになっている。
リーディングエッジが丸くなり、ティアドロップ型になったことで、日本ツアーの選手からも「顔がシャープになった」「スッキリした見た目で構えやすい」という声が多い。
リーディングエッジが丸くなり、ティアドロップ型になったことで、日本ツアーの選手からも「顔がシャープになった」「スッキリした見た目で構えやすい」という声が多い。

「キャロウェイ史上、最もツアープロの意見をとり入れたウェッジです」

「ソールグラインドも今までの3タイプ(Cグラインド、Sグラインド、Wグラインド)に加えて、より繊細なフィーリングが出せるツアープロ好みのTグラインドを追加しました」
「ソールグラインドも今までの3タイプ(Cグラインド、Sグラインド、Wグラインド)に加えて、より繊細なフィーリングが出せるツアープロ好みのTグラインドを追加しました」

2人のメジャー王者も使っていた『S6』の正体

19カ月かけて、6本目の試作品(プロトタイプ)を経て完成した『OPUS』。最終段階の試作品は正式発表される前からトップ選手が試合で使用。メジャー優勝にも貢献していた。

Xander Schauffele
ザンダー・シャウフェレ
「全米プロ」でメジャー初優勝したザンダーは、52度のSグラインドで『S6』を使っていた。

最終段階のテストは練習ではなく、選手が試合で使ったときの評価だった。最後のプロトタイプには6番目という意味で『シェイプシックス』と呼ばれていたが、キャロウェイ契約のトップ選手達は試合で使っていた。正式発表する前なので、そのウェッジには『OPUS』のロゴは入っていない。『JAWS RAW』のウェッジに『シェイプシックス』を意味する『S6』の刻印を入れて使っていた。

5月の「全米プロ」でメジャー初優勝を達成したザンダー・シャウフェレも、6月に2度目の「全米女子オープン」を制した笹生優花も『S6』の刻印が入ったウェッジでメジャータイトルを獲得していた。『OPUS』が正式に解禁されたのは6月中旬の「全米オープン」から。ザンダーはメジャー2勝目となった7月の「全英オープン」では正式に『OPUS』を投入していた。日本ツアーでは石川遼も『OPUS』で2年振りとなるツアー優勝を達成している。ちなみに笹生は米国ではじめてテストしたときから「このウェッジはいつから使っていいの?来週から使いたい」と言ったそうだ。

キャロウェイの開発哲学でもあるDSPD。明らかに優れていて、その違いを楽しめる。世界中のツアーでプロが出す結果を見ても“明らかに優れていること”は証明されている。“その違いを楽しめる”のはアマチュアゴルファーの特権でもある。

ザンダー・シャウフェレや笹生優花が使用していた6番目のプロトタイプはCallawayのロゴの下に『S6』の刻印が入っていた。
ザンダー・シャウフェレや笹生優花が使用していた6番目のプロトタイプはCallawayのロゴの下に『S6』の刻印が入っていた。

Yuka Saso
笹生優花
今シーズンの途中から『S6』の60度を使っていた笹生。優勝した『全米女子オープン』でも使用。

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