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「242CB+」と「241CB」が売れている! ブリヂストンのアイアン「名器を生んだ3つのフォージド哲学」

ギアモノ語り VOL.43|BRIDGESTONE 241CB/242CB+

2024/10/12 ゴルフトゥデイ 編集部

キャロウェイ、テーラーメイド、ミズノ、ヤマハ、プロギアなど9月は米国と日本の大手メーカーから一斉に新アイアンが発売された。その中で、月間売り上げ1位を獲得しそうなのがブリヂストン。ツアープロや有識者からも最近のブリヂストンのアイアンは評価が高い。そこには、同社がフォージドアイアンで大切にする3つの設計哲学があった。

ゴルフトゥデイ本誌 629号/62~72ページより
取材・構成・文/野中真一 撮影/相田克己 落合隆仁
取材協力/ブリヂストンゴルフガーデンTOKYO

前作を必ず超えるために軟鉄鍛造でもインナー革命を

9月の販売実績において1位を獲得する勢いなのはプロ使用率が高い『241CB』ではなく、『242CB+』だった。そこには、軟鉄鍛造アイアンとは思えない大胆な設計があった。

~『CB』ではなく、『CB+』が開発の基準だった~
~『CB』ではなく、『CB+』が開発の基準だった~

実はブリヂストンのアイアンは2年前に発売した『221CB/222CB+』や、4年前のモデル『201CB』も有識者からの評価が高かった。2006年に入社して、20年近く開発・企画部門でキャリアを重ねてきた北川は2020年モデルがひとつの転機だったと教えてくれた。

「もちろん、それ以前のモデルも軟鉄鍛造アイアンとして評価されたことはありましたが、2年に1度のペースで新モデルを発売するときに設計を変えすぎたり、飛距離性能を求めすぎたりして、本来の軟鉄鍛造アイアンに求められる性能とは違うところに進んでしまったモデルもありました。

それをもう一度、見直したのが2020年モデルからです。シンプルなプロダクトを意識して余計なことはしない。新モデルを開発するときでも変化量をコントロールしながら、変えるべきところは変えるけれど、変えないところは変えないということを開発チームとして共有するようになりました。開発者としては変えないことも勇気がいるし、難しい。例えばロフトを立てたら初速も出て飛距離も伸びます。ヘッドサイズを大きくしたらやさしくなる。変えたほうがわかりやすく結果が出るし、販売店にもアピールしやすい。でも、軟鉄鍛造アイアンに求められる性能はそれではない。『241CB/242CB+』のロフトは前作から変えていませんし、ヘッドサイズ、ソール幅も同じです。変えない部分があるからこそ、正統進化できると思っています」

「インナーポケットの構造はソール側から大きな穴を空けようかというアイデアもありましたし、もっと左右に穴を広げることも検討しましたが、試行錯誤の末に完成品の形状になりました」(北川)
「インナーポケットの構造はソール側から大きな穴を空けようかというアイデアもありましたし、もっと左右に穴を広げることも検討しましたが、試行錯誤の末に完成品の形状になりました」(北川)

北川は2020年モデル以降、軟鉄鍛造アイアンの開発では3つの設計哲学を貫くようになったと語る。

「ブリヂストンの軟鉄鍛造アイアンは設計の段階から『打感・顔・抜け』の3大要素に徹底的にこだわるというコンセプトを重視するようになりました。もちろん、それまでのフォージドアイアンでもその3要素は意識していましたが、明文化したのは2020年モデルからです。今回の『242CB+』では打感にこだわった結果として、リブ付きのインナーポケットという構造にたどりつきました」

『242CB+』はヘッド下部に二つのポケットのような空洞部分がある。この設計を取り入れた最大の狙いは『打感』と『形状』だった。

「打感を良くするためにはフェースの裏側を厚くすることがポイントです。ポケットキャビディだとどうしても裏側が薄くなってしまう。前作の『222CB+』では裏側に厚みを持たせた上で、2つの穴を空けました。打感をブラッシュアップしたつもりでしたが、『打感が軽い』『デザインとして穴が気になる』という声がありました。だから『242CB+』ではまず穴を隠して、外観から全く見えないようにするために、空洞部分を完全にヘッド内部に入れました。ただし、最初の試作品だとポケットキャビティに近い音になってしまった。それを解決したのがセンター部分のリブです。リブをつけたことで、マッスルキャビティ構造の『241CB』と近い打感になりました。この打感にしたことで、『241CB』とのコンボセットでも違和感がなくなり、5番、6番だけを『242CB+』にするセッティングを推奨できるようになりました」

北川 知憲

ブリヂストンスポーツ株式会社
商品企画部
北川 知憲
Tomonori Kitagawa

「ロフトやフェース長をあえて変えないことが正統進化につながった」

打感だけではなく、ヘッド内部を軽くしたことによって寛容性にもつながった。

「インナーポケット構造によって約20グラムの重量を削減できたので、4番・5番アイアンではソール側にタングステンを入れて低重心化できました。重量を中央部分から、周辺に分散することによって慣性モーメントも大きくなります。それが、やさしさにもつながっています」

完成品を見ると、全くフェース面のつなぎめが見えないので、まさか内部に穴があるとは思えない。

「この穴は、軟鉄鍛造のヘッドが完成した後にガリガリと削って開けています。その後でフェースの下側を溶接しているのですが、溶接ビードを完全に消すことで段差も全くなくて綺麗なフェース面に仕上げています。手間とお金はかかっていますが、打感と形状に関しては前作の『222CB+』より格段に良くなったと思います」

ツアープロの使用率が高い『241CB』の方が話題になることは多いが、実は開発チームは『242CB+』を軟鉄鍛造アイアンの基準だと認識していた。

「もちろんターゲットゴルファーは違いますが、明らかに『242CB+』の方が幅広いゴルファーにマッチしています。だから、開発チームとしても軟鉄鍛造アイアンとしては『242CB+』がスタンダード。特に今回重視した3大要素の一つである『抜け』に関しても『242CB+』がベースです」

前作の『CB+』はバックフェースに2つの穴を空けた

『222CB+』ではキャビティ部分に2つの穴が空いていたが、アドレスしたときには見えない設計になっていた。
『222CB+』ではキャビティ部分に2つの穴が空いていたが、アドレスしたときには見えない設計になっていた。

抜けを極めた2つのソールと5つの『CBプロト』

『打感・顔・抜け』の3大要素のなかでも、今回最もこだわったのが『抜け』。ツアープロへのテストは昨年の夏からはじまっていた。

『241CB』(上)はロングアイアンになるほどリーディングエッジをトゥ側まで長めに削っている。『242CB+』(下)はオールラウンドタイプのラウンドソール。
『241CB』(上)はロングアイアンになるほどリーディングエッジをトゥ側まで長めに削っている。『242CB+』(下)はオールラウンドタイプのラウンドソール。

~3面ソールと30度のラウンドソールができるまで~

『241CB』と『242CB+』で最も違いがわかりやすいのがソール形状。『241CB』はエッジを削ったソール形状になっているが、『242CB+』はラウンドソールになっている。2つのソールについて北川氏は、

「どちらかと言えば『242CB+』のラウンドソールを、ブリヂストンでは軟鉄鍛造アイアンのスタンダードなソールだと考えています。ただし、それでも複数のソール形状を試作品として検討しました。ラウンドの角度が『25R』『35R』のプロトタイプも作りましたし、過去には『40R』を試したこともあります。今回は芝の上から、プロゴルファーや弊社のモニターに打ってもらい、様々なフィードバックを取り入れながら『30R』を採用しました」

リーディングエッジとトレーリングエッジを削った『241CB』については、

「アマチュアゴルファーの大多数と相性が良いのはラウンドソールの『242CB+』だと思っていますが、一部のゴルファーにはもっとシャープなソールが好まれます。それはヘッドスピードが速くてダウンブローの角度が鋭角なゴルファー。プロゴルファーに多いスイング。そのための『241CB』です」

『241CB』はリーディングエッジとトレーリングエッジを削って落としたことで3面ソールになっている。リーディングエッジを削ることによって鋭角に入ったときもヘッドが刺さりにくい。

トレーリングエッジを削ると、一定のソール幅があっても、ソールの接地面積が少なくなるので抜けがいい。ただし、ただエッジを削ればいいというわけではない。

「エッジを削るときは角度と幅が勝負になります。プロには昨年の夏くらいからリーディングエッジを急角度に削ったタイプ、浅めに削ったタイプ、トレーリングエッジの削り方でも複数の試作品を試してもらいました。1年以上もテストを重ねていたので、プロトタイプの数としては5つくらい作っています。その中からプロが認めたのが『241CB』のソールでした」

「顔を見て、すぐ試合で使えると思った。今までより格段に抜けが良くなった」吉田優利
「顔を見て、すぐ試合で使えると思った。今までより格段に抜けが良くなった」吉田優利

1年以上にわたりテストを続けたことで、完成した後は異例のスピードでツアープロが新モデルを試合で使いはじめた。

「7月の『日本プロゴルフ選手権』でテストがはじまったのですが、契約外の選手も含めて、その試合から5人が『241CB』を使いはじめました。国内メジャー大会の直前にアイアンセットを変えるのは異例のことです」

そのうちの1人、堀川未来夢がアイアンを変えるのは7年振りだった。18年モデルの『ツアーB X-CB』から『241CB』にスイッチ。また米国ツアーに参戦中の吉田優利も最初のテストで即投入を決めたそうだ。吉田優利は、

「今までのモデルよりターフに刺さりすぎることなく、抜けが良くなった。ボールも上がりやすくなったので、5番アイアンでも打ちやすかったです。顔を見たときに、『このアイアンはすぐ使える』と思いました」

と語ったそうだ。顔については、

「顔は前作から評価が高かったのでフェース長も含めたサイズ感はほとんど変えていません。ただし、トップラインからネックにつながる稜線や、リーディングエッジからネックにつながる部分を少しシャープにしました。かなり細かい部分ですが、プロが構えやすく感じた要因は線の見え方も大きかったと思います。コンボセットを想定していたので、両モデルとも8番、9番、PWのロフトは全く同じ。『241CB』と『242CB+』では顔の見え方はもちろん、ネックの長さも揃えました。打球を上げる、飛ばすことが目的なら『242CB+』はネックを短くして重心を低くすればいい。でも、ネックを短くするとシャフトのしなり感も変わってしまうので、コンボセットにしたときの違和感につながってしまう。それを避けるために今回はネックを揃えています。

実は吉田選手も最初は5番を『242CB+』にするコンボセットを検討していたそうですが、想像よりも『241CB』がやさしかったので全番手『241CB』にすることになりました」

241CB、242CB+

241CB
SPEC
素材・製法/軟鉄(S20C)鍛造
ロフト角(7I)/32度
シャフト/N.S.プロモーダス3ツアー105など
税込価格/14万5200円(6本セット・5I-PW)、2万4200円(4I)

242CB+
SPEC
素材・製法/軟鉄(S20C)鍛造
ロフト角(7I)/31度
シャフト/N.S.プロモーダス3ツアー105など
税込価格/14万5200円(6本セット・5I-PW)、2万4200円(4I)

あらためて『241CB/242CB+』の形状を見ると、わずかにグースが入っていて、トップラインの頂点が少し手前にある「BS顔」をしていた。それは90年代、2000年代から変わっていない。変えないこともあれば、大胆に変えたところもある。5年後に名器と呼ばれるアイアンは、こういうアイアンなのかもしれない。

「今作ほどコンボセットを意識したのははじめて。顔やロフトはもちろん、ホーゼルの長さや重心も近づけた」(北川)
「今作ほどコンボセットを意識したのははじめて。顔やロフトはもちろん、ホーゼルの長さや重心も近づけた」(北川)

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