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令和の時代も匠の手から名器を生むHONMAイズム

話題の新作開発ストーリー秘話 ギアモノ語り VOL.44|HONMA TW767【特集HONMA】

2024/12/13 ゴルフトゥデイ 編集部

ギアモノ語り

最先端ドライバーのトレンドとなった10K。10Kには慣性モーメント10000g・cm2という意味がある。HONMAの新ドライバー『TW767シリーズ』も10Kを実現しているが、そのカタチは匠が手から削ったモックアップだった。
ゴルフトゥデイ本誌 631号/59~63ページより
取材・構成・文/野中真一 撮影/相田克己

10Kのヘッドも原型は手で削った木のモックアップ

HONMA TW767

1981年に誕生した酒田工場はパーシモン全盛期のHONMAの拠点であり、ゴルフクラブにおけるメイド イン ジャパンのシンボルだった。ドライバーは時代の流れとともにパーシモン、メタル、チタン、そしてカーボンと素材が変わった。しかし、今でも酒田工場のウッド開発部門には試作段階の木のモックアップが沢山あった。開発部門を統括する名匠・佐藤巧さんに話を聞いた。

「最新モデルでもHONMAは匠と呼ばれる職人がハンドピースやヤスリを使って木のモックアップでマスターを作るところからはじめています。もちろん『TW767シリーズ』も同じです。最初にモックアップを作って、それを3Dスキャンします。その数値データをCAD設計に落とし込んでいくところから開発を進めていきます。

近年はほとんどのメーカーがCAD設計からはじめるので、開発しながらヘッド形状が変わっていきます。しかし、HONMAは最初に形状を決める。内部には最先端の素材やテクノロジーを採用しますが、外側の形状は匠が作ったモックアップから変えません」

HONMA

HONMAの開発では、匠が削ったモックアップを3Dスキャンしたところから、内部設計を進める。

酒田工場には約250名の従業員がいるが、匠と呼ばれる名匠は20人ほど。ドライバーのモックアップを担当しているのは入社40年を超える名匠だった。あらためて10Kを実現した『TW767』を構えてみると(左ページの写真)、他メーカーの10Kとは何かが違う。

「CADは3D設計がどこまで進化したとしても、結局は『面』と『面』の形を数字上で計算しながらヘッドを作っていくことになる。だから、つなぎめやRの部分(曲線部分)に違和感が出てしまう。人間が削るときは、ヘッドを一つの塊としてとらえています。ヒール側を削ったり、後方部分を調整したときでも、全体として違和感のない形状にしようとするのが人間です。10Kだからといって極端にシャローにする必要はありません。オーソドックスで構えやすい形状でも十分に慣性モーメント10000g・cm2を超えることは可能です」

匠の手から生まれた『TW767』はHONMAらしい美しいヘッド形状で10Kを実現させた。さらに内部設計においても斬新な構造に挑戦していた。

5年かけて完成させた接着部分がないカーボンロール

HONMA TW767

「今回の『TW767』は従来のアスリートモデルではなくて、アベレージゴルファーが使えるドライバーにしたかった。そのためには、慣性モーメントを大きくして、余剰重量を確保したい。それで目をつけたのがカーボンです。『TR20』のときにもカーボンボディを採用しましたが、今回は試作段階で後方にウェイトをつけると衝撃でカーボンボディが割れてしまった。割れたということはそれだけ後方からボディを押すパワーがあるということ。これを活用すればすごいエネルギーをボールに伝えることができます。その発想から生まれたのが後方をチタン、中央部分をカーボン、フェース側をチタンにした構造です。カーボンをチタンで挟む設計になっているので、開発段階では『サンドイッチ』と呼んでいました」

中央のカーボンボディが割れる問題はどのように解決したのか?

「亀裂が入って割れるのは剛性の高い部分、低い部分があることが原因です。だから、カーボンボディの肉厚を均一に設計することを考えました。その上でフレームがあってはいけない。フレーム部分があって、それを接着すると接着部分が一番弱い。だから、フレームや接着部分を作らないロール型の構造にしています」

フレームを作らない構造は5年前からはじまっていた。

「実は『TR20』を作ったときはほとんどカーボンボディだったのですが、フレームはチタンでした。だから、カーボンフレームにしようと思って開発していたのですが、その頃にテーラーメイドさんからアルミフレームの『SIM2』が発売された。当社で開発していたのも同じような構造だったので、それなら、うちはフレームなしのカーボン一体成型にするしかないと思いながら研究を続けていました」

『TW767』『TW767 MAX』の後方にはタングステンウェイトを含めて約20.5グラム、『TW767 LS』は約15グラムのバックウェイトを搭載している。
『TW767』『TW767 MAX』の後方にはタングステンウェイトを含めて約20.5グラム、『TW767 LS』は約15グラムのバックウェイトを搭載している。

結果的に『TW767』のドライバーはフェースがチタン鋳造、中央がカーボン一体成型、そして後方がチタン鋳造となっているが、そのパーツを重ねると匠が最初に作ったモックアップの形状になる。

「もちろん、試作品が完成したときも、モックアップを作った匠が確認します。そこで『(モックアップから)変わっていない』と判断したものが製品化されています」

「組み立てた後も1本1本、検品の匠が確認する」

HONMA TW767

(株)本間ゴルフ 酒田工場
名匠・開発責任者
佐藤 巧
Takumi Sato

HONMA TW767

TW767
SPEC
●ヘッド体積/460cm3
●ロフト/9、10.5度
●長さ/45.5インチ
●シャフト/VIZARD EZ-Cなど
●価格/10万2300円

HONMA史上最高の慣性モーメントを実現しつつ、HONMAらしい丸み・美しさを継承した「顔」になっている。

匠の目と手はCADよりも美しい「つながり」を生む

HONMA TW767

ドライバーの開発では木のモックアップがあったが、アイアンの作業場にはハンダゴテやヤスリがある。アイアンも匠の手から開発がはじまっていた。

現在は開発部門全体を統括している佐藤巧だが元々はアイアンのヘッドを開発している匠の一人だった。

「アイアンこそ匠が削らないと上手くできない部分が沢山あります。アイアンは「面」と「丸」のつながりが難しい。最も難しいのはネックからフェースにかけての曲面です。ポケット部分からリーディングエッジにかけてのラインが腕の見せどころです。そこがアイアンを作る上で一番難しいですし、プロゴルファーもアマチュアゴルファーも構えたときに気にするポイントの一つです。

丸くなっている部分から平面部分につながる部分は、CAD設計で数字を入力しても、いびつな形状になりやすい。匠がハンダやヤスリで削ったほうがはるかに美しく仕上がります」

アイアンを削る上で最も大切にしているのはどんなところか?

「セット全体の流れです。5番アイアンからPWまでの形状を綺麗につなげること。HONMAでは基本的に7番アイアンから作ります。7番を作ってから、ショートアイアン、PWにかけて微妙にフローさせながら、全体的に丸くさせていきます。そして6番、5番にかけてはフェースプログレッションを意識しながら流れをつないでいく。セット全体のつながりも最初からCADでやろうとするとなかなか上手くいきません」

新モデルでは匠の手によるつながりを生かしたコンボセットも推奨している。

「今回のシリーズで言えば『Vx』はHONMAの王道的な軟鉄鍛造のハーフキャビティ。『Px』はポケットキャビティでミスヒットに強いアイアンです。今回はこの2モデルを双子のようなアイアンにしたかった。ロフトも同じにして『顔』も同じ雰囲気にすることによって、上の番手を『Px』にして下の番手を『Vx』にするセットを試してほしいと思っています」

ちなみに『Px』では歴代TWシリーズで初となるL型カップフェースを採用している。

「普通のL型ではありません。実はL型の部分は短くして、その後ろを肉厚にしています。ドライバーのように後方から押す発想なのですが、後方部分を厚くすることでインパクトで前に押すパワーが増幅される効果を狙いました」
『Vx』や『TOUR V』でもフェースを厚くしている。その狙いは?

「勘違いしている人も多いのですが、アイアンの場合、フェースを薄くすると飛ばなくなってしまう。ドライバーはバルジやロールがあるので、フェースが薄いことが反発性能につながるのですが、アイアンのフェースは基本的にフラット。そこが薄いと凹んでしまうだけで飛距離をロスします。むしろ、ある程度の肉厚があったほうがヘッドスピード40m/s以上のゴルファーには飛距離が出ます。

また肉厚にした方が打感も良くなります。特に『TOUR V』はハーフキャビティ構造になっていますが、マッスルバックのように分厚い打感です。もちろん、『Vx』は軟鉄鍛造らしい打感になっていますが、『Px』も打点部分を厚くすることによって『Vx』に極めて近い打感に仕上げています。打感も双子です」

アイアンの作業場にあった試作品はネックやソールに何度もハンダをつけてヘッド形状を微調整していた。
アイアンの作業場にあった試作品はネックやソールに何度もハンダをつけてヘッド形状を微調整していた。

「アイアンはフェースを薄くすると飛ばなくなる」

ゴルフクラブの開発においても3Dプリンター、AIなど急速にテクノロジー化が進んでいるが、HONMAが匠の手によるマスターモデルにこだわる理由とは?

「もちろん当社でも3DプリンターやCAD設計は使っていますが、その原型を匠が削っているだけです。ただのこだわりかもしれませんが、HONMAには先代の頃から『美しいモノを売らないといけない』というHONMAイズムがあります。だから、今でも形状に対するこだわりが強いのかもしれません」

ゴルフクラブを構えるのも打つのも最後はゴルファーである人間。人間が構える道具である以上、人間が作ったものが一番構えやすくて、安心感がある。酒田工場の匠からはそんなメッセージを感じた。

TWシリーズ初のL型カップフェース

HONMA TW767
HONMA TW767

『Px』はTWシリーズ初のL型カップフェースを採用したことで寛容性を高めた。打点エリアを肉厚にして振動吸収エンブレムも搭載することで打感を良くした。

TW TOUR

TW TOUR V
SPEC
●ヘッド素材/S20C
●ロフト角(7I)/32度
●シャフト/N.S.プロ
モーダス3ツアー115など
●価格(6本セット)/16万5000円~

TW Vx

TW Vx
SPEC
●ヘッド素材/S20C+
タングステン(4I-8I)、S20C(9I-A)
●ロフト角(7I)/30度
●シャフト/N.S.プロ
モーダス3ツアー105など
●価格(5本セット)/13万7500円~

TW Px

TW Px
SPEC
●ヘッド素材/S25Cボディ、
AM355Pフェース(5I-8I)、ES235フェース(9I-A)
●ロフト角(7I)/30度
●シャフト/VIZARD EZ-Cなど
●価格(5本セット)/13万7500円~

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