クラブ1本の機能を欲張ると特性がなくなる? だからクラブは14本あるのだ!
【ダグ三瓶・クラブ選びの超知識】

いいスコアを出すためにクラブセッティングを考える。それにはラウンドをイメージして、より実践的なシーンを思い浮かべると、答えが出てくるのかもしれない。
前回は、ある機能に特化したクラブをご紹介させていただきました。
今回は、クラブの汎用性について書いていきましょう。
一番わかりやすいのは、ウェッジだと思いますので、まずはウェッジのお話からしていきましょう。
まず、ウェッジとはそもそもどんな機能を持ったクラブでしょう?
簡単に言えば、お持ちのセッティングの中で、一番ロフト角の大きいモデルです。ロフト角が大きいということは、球が上がりやすく、スピンもかかりやすいクラブとなります。
そして、かつ、飛距離も一番飛ばないクラブという位置づけです。
それを使う場面として考えると、ピンまでの距離が近い時や、高く上げて止めたい時などで使うことを目的に作られているクラブです。また、トラブルからの脱出のためにも使うことが多いでしょう。
前回、書かせていただいた、バンカーショットに特化したサンドウェッジも、この部類に入るということになります。
ウェッジというのは、上がりやすい、止まりやすい、飛ばない、ことが重要な要素ということを、まずはご理解いただければ嬉しいです。
ですからで、ここに、足していく機能として、低く打ちたい、転がしやすい、フルショットで飛距離を得たい、というのは矛盾していることになります。
また、ゴルフゲームでは、様々な距離を打ち分けて進んでいきますから、この、飛ばないクラブ、というのが入っていないと、いつまで経ってもピンに近づかないということが起ります。
飛ばなければよい、というものではありませんが、適度な距離以上を求めない、ということが汎用性を求めるうえで重要になることになっていきます。
となると、どんなスペックがいいのか?ということになってきます。
飛距離を求めないとなると、重さはある程度あった方が良いでしょう。また、長さも短くても良いですね!シャフトも、ヘッドスピードが遅い時に使うことになるので、硬すぎない方が良いでしょう。
機能を欲張ると特化性がなくなってしまう
続いてウェッジの場合、ソールの形状、バウンスも考えて行かなくてはいけませんね。
バウンスは大きい方が良い? 小さい方が良い?ソール形状は、三日月形が良い?などがあると思います。
よく汎用性が大きいモデルというのは、三日月形でバウンスが小さい方が良いと言われていますが、ここはもう少し深く考えてみましょう。
前回書かせていただいた、バンカーに特化したモデルは、バウンスが大きい方が良いとさせていただきました。適度に砂に潜りつつも、潜りすぎないためには、ある程度以上のバウンス角は必要です。
まずは、バンカーからの脱出をするためのクラブですから、そこを最低限抑えたうえで、フェアウエイやラフなどでも使えるものを目指そうとすると、バウンスをギリギリまで減らしていきたいと考える人がいるでしょう。
一方で、いわゆる汎用性が高いウェッジというと、開いた時も使いやすいモデルをすぐに思い浮かべることでしょう。
開いて使うということは、バウンス効果を増やして使うということになりますから、開いて使うモデルはバウンス角があまり大きくないモデルにする方が多いです。
ということから、バウンス角が小さいモデルを汎用性が高いと感じている方が多いです。
となると、バンカー脱出のためには、開いて使うことでバウンス効果を増やして使うことがおおくなり、バンカー内でできることが減ってしまうことになります。
つまりは、フェアウエイなどでの使い勝手を目指して、汎用性を増やすと、肝心のバンカーでの使用の汎用性が減ってしまうということになります。
これでは本末転倒。本当の意味での汎用性の高いウェッジになっているとは言い切れないでしょう。
では、ウェッジで汎用性を実現するためにはどうしたらよいか?
となりますが、それは、ウェッジの本数を増やすことになります。
バンカー脱出のための1本と、開いて使いやすい1本を入れていくということになります。
たとえ、1本でいろんなショットが打てるようになったとしても、そのウェッジで、やりやすいショットもあれば、やりにくいショットがなくなるわけではありません。プロの様に豊富な練習量があれば克服できるかもしれませんが、アマチュアにはかなりハードルが高いでしょう。であれば、様々なコンディションを想定して、2種類以上のウェッジを入れていくことで、結果的に汎用性を高めることが可能になります。
汎用性が欲しいクラブは……
実はドライバーこそ汎用性があるクラブの方が良いと考えています。
えっ、ドライバーはフルショットするクラブだから必要ないのでは?と考える方が多いかもしれませんね。
では、ドライバーショットの一番重要な目的は何でしょう?
それは、セカンドショットが打てるところにボールを運ぶことです。
その上で、飛距離が稼げたら良い、というものになります。
セッティングの中で一番飛ぶクラブになっているわけですから、基本的には普通に打てば飛距離が稼げます。本人の満足度という話ではなく、結果的に、ご自身のクラブ選択でドライバーを打って、ホールに一番近くにボールを運べるということを意味しています。
となると、一番大事なことは、前述しましたように、そのホールの1打目のティショットで、一番飛ぶクラブを持って、最もホールに近づけるように打っていき、セカンドショットをしっかり打てるところにポジショニングするということです。
常に最大の距離を打てることを目指していては、リスクが高く、枠に飛ばす可能性が低くなりやすいです。セカンドショットが打てる中では、やはりフェアウエイに置けることが理想です。そのためには、置いていけるショットが必要となるわけです。
刻む時や、狭いホールでは、3WなどやUTなどで打てばよいのでは? と考える方もいらっしゃると思います。
もちろん、それも得策の一つですが、意外と3W、5Wなどはドライバーより球筋が高くなりがちですから、ドライバーよりも曲がるという方も少なくありません。
ドライバーは長いですが、ヘッドも大きいですし、昨今のドライバーは慣性モーメントも大きく、ミスヒットに強いですから、実は、置きに行くショットがやりやすかったりします。
では、汎用性のあるドライバーとはどんなものになるでしょう。
飛ばすだけであれば、軽くて、振り負けない程度の硬いシャフト、長さも振り切れるギリギリの長さを目指しても良いかもしれません。
ですが、そこに特化してしまうとフルスイング以外やりにくくなってしまいます。
コントロールショットがやりやすいドライバーとなると、長さは少し余裕のある長さ、例えば45インチがギリギリ振り切れる長さであれば、44~44.5くらい、重さも、軽すぎない重さ、また、シャフトもマン振りのしやすい硬さのよりも、少ししなりをコントロールできるくらいにしていくのが良いでしょう。
・まとめ
ということで、クラブには本当の意味で、汎用性が必要なものや、機能性を特化したもので組み合わせることで汎用性をあげた方が良い場合などがあるということになります。
ご自身のセッティングを今一度見直していただき、先日ご提案させていただいた、自己分析ノートを埋めていき、コントロールショットのできるできないや、使用可能な場面を洗い出していただき、クラブで補えるものは追加していっていただければと思います。

ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。
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