青木瀬令奈が実証!ドライバー飛距離を短期間でアップする「アッパーの押し込み力」
ドライバー上手になる「超」練習法 大特集 PART-1
ゴルフでの悩みはと聞けばスライスやダフリも多くあるが、何よりも1番克服したいのは「飛距離」と思うアマも多いだろう。そんなアマにオススメするのが、2015年に約1ヶ月でドライバーの飛距離を30ヤード伸ばすことに成功した青木瀬令奈の練習法だ。その青木をコーチングした大西に、ドライバー飛距離アップの全貌を教えてもらおう!
教えてくれるのは
大西翔太
おおにし・しょうた
1992年生まれ千葉県出身。ティーチングプロ。2015年より青木瀬令奈のコーチ兼キャディとしてツアーに帯同。大西の指導により青木は30ヤードの飛距離アップに成功し、2017年に青木を初優勝へと導く。女性やジュニアなど、幅広い層のアマチュアにもレッスンを行う。
青木瀬令奈に聞く|「苦手」とどう向き合えば次のステップへと繋がるのか?
打ち込むことで飛距離を稼ごうとしていた2014年に比べ、2015年ではアッパー軌道になりフォローでヘッドが上に伸びるようになった。
ゴルフは常に挑戦し続けることができる素晴らしいスポーツ
「2015年を1年間戦い抜くために、自分のスイングデータを見直したことが、飛距離アップへの挑戦の始まりでした」(青木)見直してみて、まず目にとまったのはインパクトでの入射角度だ。
「入射角度が数値で言うとマイナス6度くらい。アイアン並みのダウンブローでした。そこで私は上からヘッドを下ろしすぎでスピン量が多いのが飛ばない原因なんだということに気づきました。」(青木)入射角度マイナス6度とは、プロの平均でも6番アイアンで平均がマイナス4.1なのだから、とてつもないダウンブロー軌道でドライバーを打っていたということになる。
「彼女はダウンスイングで右肩が前に出すぎて、打ち込みインパクトになっていました。なので、ダウンスイングで右肩を抑える練習から必要だなと感じました」(大西)
「まずは、レベルにインパクトできるように、様々なドリルで練習して、徐々にアッパー軌道へとなっていきました。期間的には約1ヶ月で約20ヤードも飛距離が伸びて、最終的には30ヤードの飛距離アップに成功しました」(青木)
練習日でも試合当日の練習でも、大西が教えることに常に耳を傾ける青木。この飽くなき向上心がトッププロたる由縁だろう。
ミスを1つ1つ減らしていくことがゴルフ上手の本質
「私は、自分が今1番これが苦手だなって思うことは、1つずつ自分の中で消化できるように練習します。ゴルフというスポーツは、いかにミスを減らしていくかということが本質だと思っているからです。1つ1つ克服していく中で、今日はココができた!あれ?昨日までできていたのにココができなくなった。なんてことは私たちも日常茶飯事です。その成功と失敗と達成感をくりかえしていくことでしか、ゴルフは上達しないと思っています。ゴルフというスポーツは、何歳になっても新しいことに挑戦し続けられる素晴らしいスポーツです。苦手を克服して、これからも一緒にゴルフを楽しみましょう!」
青木が得意とする直ドラは、上から打ち込んだ軌道になっていないか確認するのに最も適した練習法だと大西は言う。
青木瀬令奈
(三和シヤッター)
あおき・せれな 1993年2月8日生まれ。群馬県出身。30ヤードの飛距離アップに成功した2015年から連続でシード権を守り続けている。2019年の賞金ランキングは35位。ツアー通算1勝。
青木瀬令奈の軌道をアッパーに変えたのは球とフェースの"お見合いテークバック"
約30ヤードの飛距離アップに1ヶ月で成功したのは、青木本人も言うように「アッパー軌道」がポイント。アッパー軌道で高い球を打てるということは、球の滞空時間が長くなり、必ずと言って良いほど飛距離は伸びる。青木はその「アッパー軌道」をいかにして手に入れたのか。
打ち込み型からすくい型への大幅な改革
彼女のスイングは打ち込み型でスピン量がとても多かったので、ドライバーショットのキャリーで190ヤードの飛距離しかありませんでした。1番の問題はダウンスイングで右肩が前に出てきてしまうこと。そこで、より自然なインサイドからのダウンスイングにするために、テークバックから意識改革を始めました。
彼女はフェースを開いてトップまで上げて、そこから打ち込んでしまう、典型的な打ち込み型だった。なのでアドレスからヘッドを始動する時に、フェースと球を右足の前まで“お見合い状態”にすることをアドバイスしました。
お見合いテークバックでクラブを上げることができると、クラブを縦に大きく使うトップが作れるので、インサイドへの自然なヘッドの移動が可能になります。インサイドから自然にダウンスイングできることで、右肩の突っ込みも解消され、アッパー軌道でのインパクトを実現できるようになりました。
飛距離が他の選手よりも劣っていた彼女は、なんとか飛距離を出そうと球を上から叩き込むような、打ち込み型のスイングになっていました。アイアンショットなら良いですが、ドライバーとなるとスピン量は3800回転と多すぎてしまい、190ヤードのキャリーにピタッと止まるような球しか打てませんでした。
ヘッドが下から入るアッパー軌道で、すぐに飛距離アップを実感することができました。そして、今まで吹け上がっていた球のスピン量も2700回転まで激減し、球が落ちてから、さらにランが出てくれる球筋に進化しました。彼女のスイングで1番大きく変化したのがヘッド軌道と言うことは間違いありません。
お見合いすることによってトップでヘッドが垂れることなくインサイドからのアッパー軌道になりやすくなった!
ヘッドを低く長くのイメージ!
テークバックでヘッドが右足を通過するまで、ヘッドを低く長くすることで、お見合いテークバックをしやすくなります。
これが打ち込みの原因!
フェースを開いてあげてしまうことで、ダウンスイングでは上から打ち込むようなスイングになってしまいます。
“お見合いテークバック”でフェースの向きをキープすればアッパー軌道を実現できる!!
インサイドにフェースを開きながらテークバックしてしまうと、トップではクラブは寝てしまいます。それを、腕の力や上半身で元の軌道に戻そうとすることで、インパクトまで突っ込んでダウンスイングする動きが出てしまいます。
“お見合いテークバック”をすることで、ヘッドを真っすぐ引くことができるので、トップではクラブを縦に大きく使うことができ、インサイドからの自然なダウンスイングが可能になります。
“お見合い”で上げると、ヘッド本来の向きをキープしたまま上げられる
青木もバックスイングでは背中とフェース面が平行になっている
“お見合い”で上げると、ヘッド本来の向きをキープしたまま上げられる
クラブを縦に使うトップで、インサイドからクラブを下ろしやすくなるからアッパー軌道になる
フェースを閉じたままバックスイングすることで、クラブを縦に大きく使うトップの形が作れる。インサイドに下ろしやすくなり、球に対して下からインパクトするアッパー軌道にしやすくなる。
クラブを縦に使うトップで、1回ヘッドが背面へ動いてからインサイドに下りている
フェースを開いてテークバックするとトップまで開きっぱなしのスイングになる
開いたフェースを無理矢理戻そうと、ダウンスイングでは上から叩き込んでしまう
フェースを開くとヘッドの重さでクラブが垂れるので、トップでは右手のヒラが真上を向いた状態になる。そこからヘッドをスイング軌道に乗せようとすると、上から叩き込むスイングになる。
アッパー軌道の弊害となったのはインパクトの弱さ!それを克服した『押し込み力』 アップ3大ドリル
アッパー軌道で飛距離アップに成功した青木だが、アッパー軌道にすることによる障害もできてきてしまった。さらなる飛距離アップに欠かせないのは球の直進力。それにはインパクトでの「押し込み力」が必要不可欠だったのだ。
ただアッパー軌道にするだけではなく、そこに「直進性」も加えた
アッパー軌道にすることで、球は高くなり飛距離は伸びました。以前までは上から思い切り打ち込んでいたからか、アッパー軌道にしたことで、インパクトが少し弱くなっていたように感じました。
そこで、「球を押し込む」ということをテーマに、様々なドリルを試みました。この数々のドリルは、実際に彼女にもずっと練習してもらっているメニューです。元々曲がるほうではなかったのですが、左右に曲がることで起こるほんの少しの飛距離ロスを直進性に変えることで、さらなる飛距離アップを目指しました。
ドライバースイング練習方法1. ティ2本ドリル
まず、インパクトで押し込むということを体感するには、このドリルが1番適していると思います。実際に球を乗せたティの奥(飛球線方向)に5㎝くらい間隔を空けて、もう1本ティ刺します。準備はコレだけです。あとは、実際に球を打つ時に、余分に刺したティも打つように意識してみましょう。そうすることで、インパクトで「押し込む」感覚が体感できます。
アッパー軌道を意識して、インパクトで上半身が浮いてしまい、球にパワーが全く伝わらないインパクトに。アッパー軌道で飛距離は伸びましたが、まだ彼女の非力さが出てしまうスイングになっていました。
3大ドリルを練習することで、上半身の起き上がりがなくなりました。そして、自分の持っているパワーを最大限、球に伝えることができるようになり、約1ヶ月で30ヤードの飛距離アップに成功しました。
「押し込み力」を効率的にアップさせよう!
押し込むインパクトは、前傾キープから生まれる
これらのドリルで上手く球を飛ばすには、「前傾角度のキープ」がキーポイントです。球を押し込むということは、球に自分の持っているパワーをいかに多く伝えられるかが大事になります。打ち込み型のインパクトだと、案外簡単にこの3つのドリルをマスターできてしまいますが、アッパー軌道でこのドリルをマスターすることで、本当の「押し込み力」を体感できるのです。効率よく飛距離アップを目指すのであれば、まずは「アッパー軌道」、その後に「押し込み力」をマスターしましょう!
前傾の形がアドレスとインパクトで変わらない、力強いインパクト
ドライバースイング練習方法2. 押し出しドリル
アドレスの状態から、腰だけインパクトの状態を作りそのまま球を押し込んでみよう。前傾角度をキープしたまま押し込むと、球は真っすぐ宙に浮いて飛んで行くが、少しでも上半身が浮くと、コロがるような球で全く飛ばない。押し込むということは、球にフェースを乗せる感覚と似ているため、このドリルでまずフェースに球を乗せる感覚をつかもう。このドリルは7番アイアンくらいで練習するのがオススメ。
[押し出しドリルの効能]球をフェースに乗せて押し込む感覚がつかめる
アドレスから腰だけを回転させたインパクトの形から、押し出していくようにフォローを出していく。
(POINT)インパクトの体の形を作ってからヘッドを押し込む
腰を球に対して正面に構えるアドレスから、手元は少しハンドファースト。腰は少し開いた状態がこのドリルのスタート。
ドライバー練習方法3. 杖つきドリル
左手でクラブを地面に対して垂直になるように持ち、もう1本のクラブを右手だけで振ります。小さいスイングでOKですが、トップからフォローにかけて、左手で持っているクラブが地面から離れないようにしましょう。離れてしまうと、前傾が上がっていると言うことになるので、球にパワーが伝わらないスイングになってしまいます。実際に球を打つのも良いですが、素振りとして活用するのもオススメです。
フォローでスイングが多少窮屈になるが、ここを堪えて振り切ることで前傾をキープできる。
(POINT)骨盤から折るように構える。
アドレスは、ただ上半身を前のめりにさせるのではなく、背中は曲げずに骨盤から折るように構えてみよう。
杖が地面から離れると前傾も上がる
少しでも杖が浮いてしまうと、体も一緒に起き上がってしまう。杖は地面に押し込むように構えてみよう。
撮影トーナメント/ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメント 第38回大王製紙エリエールレディスオープン
GOLF TODAY本誌 No.572 30〜41ページより
【ドライバー上手になる「超」練習法 大特集 シリーズ一覧】
●PART1:青木瀬令奈が実証!ドライバー飛距離を短期間でアップする「アッパーの押し込み力」
●PART2:ドライバースイング練習方法|ミート率がアップする「起き上がり防止ドリル」
●PART3:【タイプ別】長所を生かすドライバースイングと練習方法を北野正之が解説!
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