えっ!そこまでやってたの[飛び・スピン・方向性]ルールギリギリまで追求!? 限界設計ギア
気になるギア
もっと飛距離を、もっとスピンを、もっと正確にゴルファーの欲望は尽きない。そんな欲求に応えるために、ギアメーカーは日々努力を惜しまないが、その前にはルールという壁がある。それならば!ルールの限界ギリギリまでは性能を追求しようという限界設計のギアが増加中だ。
夢は300ヤードオーバー!|ボール初速を高める反発性能の限界設計は2タイプある
限界設計で最初に気になるのは、飛距離性能。ドライバーの反発性能をルールの限界まで引き上げるための限界設計はこうなっている。
高精度加工型|元祖ギリギリ
コンピュータを駆使して、ルール限界ギリギリの反発性能を持つフェースを設計。製造精度を極限まで高めることで限界ギリギリの反発力を実現している。
プロギア・新ナブラフェース
PRGR RSシリーズ
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限界設計と全数検査で、限界ギリギリの反発性能を達成。ドライバーは4種類をラインナップ。
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ギリギリを実現するために、プロギアでは反発性能(CT値)を素早く計測するマシンを開発。全数検査でギリギリの反発性能を達成している。
RSシリーズは、ギリギリまで研ぎ澄ました限界設計
反発性能の限界設計の元祖が、プロギア「RSシリーズ」。スーパーコンピュータを駆使して設計したフェースを高精度に製造することで、ルール限界の反発性能を達成。高精度・高品質=高性能という日本メーカーらしい限界設計がなされている。
限界設計と全数検査で、限界ギリギリの反発性能を達成。ドライバーは4種類をラインナップ。
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RS REDドライバー ●価格/8万8000円+税
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RS Eドライバー ●価格/6万8000円+税
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RS Fドライバー ●価格/8万円+税
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RSドライバー ●価格/8万円+税
偏肉フェースが限界設計のルーツ
フェースが撓むほど反発性能は高まるが反発性能にはルールで上限が定められている。撓みを増やすために全体を薄くすると、フェースの中心部分の反発力がルール規制値を超えてしまう。そこで、フェースセンターは厚く、外周部は薄くして全体の反発力を高めながら、センターの反発力はルールの範囲内に抑えようとしたのが偏肉フェースだ。
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フェース中央部は肉厚に、外周部は薄肉に設計されている。
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リミッター型|反発力を下げる!? 逆転の発想
フェースの反発性能をルールギリギリに作るのではなく、ルールオーバーにまで高めておいて、後から反発力を下げるリミッターを取り付けると言うのがリミッター型。
ギテーラーメイド・スピードインジェクション
あえて反発性能を下げるという逆転の発想
工業製品には製造誤差というものがつきもの。反発性能をルール上限まで高めていくと、製造誤差で上限を超えてしまうものと、上限より低くなってしまうものが生まれる。後から反発力を下げることができれば、全数をルールオーバーで作り、その後ルール上限ギリギリに調整すれば、すべての製品をルール上限の反発性能で統一できるという画期的な手法が「スピードインジェクション」だ。
ブリヂストン・サスペンションコア
ルール上限の反発エリアを拡大しながら、打感の向上にも貢献
ブリヂストンのサスペンションコアはポリマー製。フェースセンターの反発力をルール上限に抑えながら、振動減衰効果でマイルドな打感も同時に達成している。
今業界内でささやかれている事|CORとCTは一致していない!?
フェースの反発力を示すのは反発係数(COR)だが、CORを直接計測する手法は大がかりな装置と手間がかかるため、実際にはより簡単に計測することが可能な接触時間(CT)の数値をルールで規定している。CTとCORは比例関係にあるはずだが、実際には比例関係にないものも存在する。そこでクラブメーカーはCT値は低く、CORは高くなる設計を狙った開発が進められているらしいが、これを公言すると新たなルールが制定されるので真実は語られていない。
ボールも(ルール限界の)飛び設計。ドライバーは(ルール限界の)方向性、ウェッジは(ルール限界の)スピン設計があった!
反発性能以外にもフェースの溝や慣性モーメント等、さまざまなルールに対する限界設計がある
ギリギリの初速なのにゆっくり飛ぶ!?|ブリヂストン ツアーB X・XS
ギリギリの初速なのにゆっくり飛ぶ!?
これまでのボールも実はそのほとんどが、高精度加工型の限界設計だった。しかし、最新のツアーB、X・XSはリミッター型の設計が取り入れられている。ボールのコアはルールを超える反発力としながら、カバーに衝撃吸収材を複合することで、ルール上限の初速を達成しながら、アプローチでは衝撃吸収材の効果で、ソフトな打感とゆっくりとした球の打ち出しが得られる設計となっている。
ボールに関するルール
あまり知られていないが、ボールにはトータル飛距離規制と初速規制がある。
トータル飛距離規制
R&Aが定めるテスト条件で打ち出した時に、トータル飛距離が317ヤード+3ヤード以下でなければならない。
初速規制
R&Aが定める条件でテストした時にボール初速は76.2m/s+2%以下でなければならない。
上記以外にも、ボールの直径、重量、対称性に関するルールもある。
12年ぶりに慣性モーメン5900g・㎠が復活|オノフ AKA RD5900
ギリギリの慣性モーメント しかもつかまる!
ヘッドの慣性モーメントは大きいほど、ミスヒットに強くなる。だから、ルールで5900g・㎠に上限が定められているのだが、12年前のモデルでは慣性モーメントを高めるために、重心角や形状、重心高さ等が犠牲になっていた。最新のコンポシット構造等でこれらを解消したのが、このモデル。球がつかまってしかも曲がらない。
数値だけは 上限だったが
2008年にナイキが発売した、サスクワッチSUMO2 5900は、慣性モーメント5900g・㎠だったが、球のつかまりや形状の問題で短命に終わった。
ルール適合溝なのに角がある|キャロウェイ JAWSウェッジ
発想の転換で角溝規制をクリア
フェース溝の壁面を直角ではなく、角度をつけた傾斜にすることで、角溝を規制するルールをクリアした限界設計。ジョーズの名の通り、溝の角が鋭くボールに食いつく。
0.0254ミリの 隙を突く設計
ルールでは溝の角は0.254ミリ以上の半径を持たなければならない、ただし0.0254ミリ以内の偏差は認められると定められている。溝の壁に角度をつければ、図の二つの円の間で角を作ることが可能になる。この設計が用いられている。
溝の断面積がルールギリギリだからラフでも雨でもスピンがかかる|フォーティーン DJ-4ウェッジ
溝の断面積をギリギリにすれば、芝や水の逃げ場が増える
溝の角度以外に、溝の断面積もスピンに大きく影響する。ラフでボールとフェースの間に芝が噛んだ場合や、雨でぬれている場合、溝が芝や水の逃げ場となり、スリップを防いでくれる。溝を高精度に加工することで、溝の断面積をルールギリギリに設計し、状況が変化しても安定してスピンが得られる設計がなされている。
ウェッジの溝に関するルール
●溝の幅
R&Aが定める方法で計測した時、最大0.9㎜迄
●溝の断面形状は左右対称でかつ下部や途中が広がっていてはならない。(収束していない)
●溝と溝の間隔は溝の幅の3倍以上かつ1.905㎜以上でなければならない。
●ドライビングクラブ以外のクラブは、溝の断面積を溝の幅と溝と溝の間隔を足した数値で割った時に、0.0762㎟/㎜以下でなければならない。
●ロフト25°以上のクラブで溝の縁は0.254㎜以上0.508㎜以下の有効半径を持たなければならない。ただし0.0254㎜以内の偏差は認められる。
GOLF TODAY本誌 No.574 159〜163ページより