アプローチ&バンカー絶対上達!! 「バウンス」を使いこなせ バウンスの役割と活かし方
向江寛尚の 「知っ得!! ウェッジ・バウンス学」 Vol.3
“読むと得する”ゴルフの知っ得ネタを向江寛尚プロが届けてくれる「知っ得!ウェッジバウンス学」シリーズ。第3回目は「バウンス」をうまく使ってバンカーショットに自信をつけるコツのお話。バンカーショットが苦手なゴルファーはぜひご参考に!
向江寛尚
むかえ・ひろたか/1972年11月11日生まれ、東京都出身。法政大ゴルフ部を経て99年プロ転向。多くのトーナメント出場の経験を積み、2005年からレッスン活動を開始。現在はオンワードゴルフアカデミー(東京都世田谷区玉川)を拠点に多くのアマチュアゴルファーをレッスン。クラブの造詣も深い。
バウンスで砂を叩くイメージで打てば、ボールが砂と一緒に飛んでいく
バンカーが苦手な人ほど難しい打ち方をしている
バンカーショットが大の苦手というゴルファーはとても多くて、「バンカー恐怖症」なんて言葉もあるほどです。通常のショットでは普通にスイングしていい球を打っている人でも、バンカーショットになるとまったく別人のようなスイングになってしまう人もよくいます。
1回で出せそうもないと不安感に襲われたり、どう打てばいいかわからず気持ちがソワソワしたりするのでしょうね。あなたがバンカーショットにまったく自信が持てないとしたら、バンカーショットを難しく考えていませんか? あるいはバンカーショットを特殊なショットと思い込んでいませんか? 私がいつも思うことですが、バンカーが苦手という人たちのアドレスやスイングを見ていると難しいことばかりをやろうとしています。
これはゴルフのレッスン書などを読んで覚えたことを、そのままやろうとするためでしょう。確かにバンカーの打ち方の基本としては、「サンドウェッジのフェースを開いて、オープンスタンスに構える」とか「アウトサイドインの軌道でボールの手前の砂をカットに打ち抜く」などと説明されていますが、実はこれ、バンカーショットの高等技術なのです。
バンカーのアゴが高くて、ピンが近いときはこうした難しいテクニックが要求されますが、バンカーのアゴが自分の肩や腰くらいの高さであれば、ボールをそれほど高く上げる必要はありません。
それにフェースを開いてオープンスタンスに構えるとバックスイングでクラブをインサイド方向に低く上げてしまいやすく、ボールを下からすくい上げるような動きになりやすい。結果的にインパクトで左半身が伸びて大ダフリになったり、フェースが開いてボールが右にプすっぽ抜けたりで、何回打ってもバンカーから出ないハメとなるのです。
バンカーからなかなか出ないと、力まかせに上から打ち込んでしまう人もいますが、これも逆効果。砂が多く取れてしまうだけでインパクトが詰まり、キャリーが十分に出ないからです。
ボールよりもグリーンの面が高いため、すくい打ちになりやすい点に十分注意しよう。
バンカーショットは特別なショットではありません。バンカーから1回で出すコツを覚えるには、通常のショットと同じようにピンに対してなるべくスクエアに構えて、フェースもあまり開かないようにするのがベターです。
私自身、バンカーからなかなか出ないで困っているゴルファーには、「フェースもスタンスもスクエアのままでOKですよ」とアドバイスしています。それだけで通常のショットのようにピンに対してクラブを真っすぐ振れるから、バンカーからの脱出成功率がアップします。シンプルな打ち方でバンカーショットに自信をつけることが大事なのです。
ボールよりもグリーンの面が高い場所にあるから、「高い球を打たないといけない」と思いがちですが、こうした先入観も捨ててください。ロフト角が56〜58度あるサンドウェッジで打てばボールが十分な高さまで上がると信じてしっかりとスイングしましょう。
「バウンス」が勝手に使えるように、ハンドダウン&ハンドレートに構えるのがコツ
ところでバンカーショットではどうしてサンドウェッジを使うのでしょうか。ここでちょっとサンドウェッジのウンチク話を聞いてください。サンドウェッジを発明したのは1920〜30年代に活躍した往年の名プレーヤーとして活躍したジーン・サラゼンです。世界初のグランドスラマーとなったサラゼンですが、その偉業を達成する前はバンカーショットが大の苦手でした。
あるとき飛行機が離陸するとき、パイロットが水平尾翼のフラップを下げるのを見て、この原理をクラブにも応用できないかとひらめいたそうです。「ニブリック」と呼ばれた当時の9番アイアンのソールも飛行機の水平尾翼のように下げればバンカーの砂の上で打つときにスパッと砂が取れて、クラブヘッドが上昇するのではないかと考えたのです。
発明家でも知られたサラゼンは9番アイアンのソールに様々な形の鉛をハンダ付けにして試行錯誤を繰り返した末に「SAND IRON」を完成させました。その時代からサンドウェッジは様変わりしていますが、サンドウェッジ特有の厚みのあるソールはサラゼンのアイディアが今もなお継承されています。ソールの出っ張った部分を「バウンス」といって、このバウンスを使って砂を弾き飛ばすように打つのがサラゼン直伝のバンカーショットの極意です。
もう一つ知って頂きたいのは、サンドウェッジの「バウンス角」はクラブごとに異なっていて、一般的にはロフト角56〜58度のサンドウェッジの場合、バウンス角が06〜08度と小さいのを「ローバウンス」、12〜14度くらいと多いのは「ハイバウンス」と呼ばれています。
最近ではプロたちも10度くらいのバウンス角を好んで使いますから、8〜12度くらいのバウンス角が無難といえるでしょう。バウンス角が多いほどソールの膨らみが大きくて、インパクトでフェース面の刃の部分にあたるリーディングエッジよりもソールの出っ張りのバウンスが先に着地します。フェースの刃を使って打つよりも、バウンスを利用して打つイメージが強まるのです。構えたときにフェースを開けば開くほどリーディングエッジが浮いてバウンスが使いやすくなります。
ただし一般のアマチュアゴルファーの場合、フェースを開いて構えるのに抵抗を感じたり、うまく開けなかったりするので、フェースをスクエアにセットしてもバウンスが自然に使えるようなハイバウンスのサンドウェッジを使うのもいいと思います。
バウンス角が10度くらいのサンドウェッジでしたら、フェースをあまり開かなくてもバウンスが自然に使えるようにハンドダウンとハンドレートの構えを作りましょう。
スタンスはスクエアか軽いオープン。肩や腰はボールとピンを結ぶターゲットラインと平行にセットします。ボールの位置はスタンスの中央よりも半個から1個分左。そしてボールから少し離れて両手の位置をやや下げてハンドダウンに構えましょう。両手のポジションは体の中心線上です。両腕とクラブがY字となるような軽いハンドレートの構えです。
両手を左モモの前にセットするようなハンドファーストの構えはバンカーショットではNGです。インパクトでフェースの刃から砂に潜ってしまい、クラブが振り抜けなくなるからです。バウンスが使えないと、ボールの周りの砂を弾き飛ばせません。キャリーがまったく出ず、バンカーから脱出できないのです。
その点、ハンドダウンとハンドレートの構えを作れば、フェースを開かなくてもインパクトでバウンスが先に砂に着地して、ボールの周りの砂を薄く長く削り取る感じで砂をきれいに弾き飛ばすことができます。
バウンスを使って打つ感覚をマスターしたいという人は9番アイアンを持ち、フェースをうんと開いて構え、バンカーショットを打つ練習をするのが一番です。9番アイアンはサンドウェッジほどソールが厚くないですが、フェースを大きく開けばバウンスを使って砂を弾き飛ばすことができます。
このようにフェースを開いてバンカーショットを打つのが好きな人はバウンス角が8度くらいのローバウンスのサンドウェッジを使うのもいいでしょう。ローバウンスのサンドウェッジはバンカーの砂が硬く締まっているときに重宝します。上級レベルのゴルファーにとっては、フェースを開いたりかぶせたり色々な細工がしやすいという長所もあります。
逆にいえばソールが厚いハイバウンスのサンドウェッジは砂が硬いバンカーではインパクトでソールが跳ね返されてトップが生じやすいので注意が必要です。
バンカーショットに必要なのは、「思い切りよくスイングする」という気持ち
バンカーショットには「思い切り」の気持ちが必要です。思い切りは力にまかせてスイングするのとは違います。「しっかりと振り切ろう」と決めてスイングすることをいいます。これはバウンスを使って打つことと大きく関係しています。アプローチショットではソールを芝の上で滑らせるように打つ感覚ですが、バンカーショットも同じようにソールを滑らせる感覚があります。
ただしアプローチショットと決定的に違うのはボールに直接コンタクトしないで打つことと、インパクト時の砂の抵抗が強いことです。当然バックスイングの大きさはアプローチショットの2倍から3倍くらいとなります。60ヤードのアプローチと同じくらいのバックスイングをとってもバンカーでは20ヤードくらい、パワーのある人でせいぜい30ヤード止まりです。
大事なのはバックスイングを大きめにとったら、砂を前に飛ばすつもりでしっかり振り抜くこと。ピンまでの距離が20〜30ヤードですとクラブを大きく振ったら飛びすぎてしまいそうな気がして、ダウンスイングで減速したりインパクトを緩めたりしてしまうゴルファーがとても多いのです。これではインパクト時の砂の抵抗に負けて、クラブを加速させることができません。クラブが振り抜けない→バウンスが使えなくなる→砂の爆発力を引き出せず、ボールが飛ばない。こうした負の連鎖でバンカーからの脱出に失敗してしまいます。
クラブヘッドを加速させて、しっかり振り切る気持ちでスイングしましょう。クラブヘッドが走ればボールの下をソールが滑っていく→バウンスが使えて砂の爆発力を引き出せる→ピンの方に砂が飛んでいき、ボールも一緒に飛んでいく。これがバウンスを使って打つということなのです。
バンカーで練習する機会があったら、一度フルスイングしてキャリーがどのくらい出るかをテストしてみてください。きちんと打てればパワーのある人で30ヤードくらいが精一杯です。「大きくスイングしても飛ばない」ということを実体験できれば、飛びすぎに対する不安や迷いを払拭でき、クラブヘッドを走らせてバウンスを有効活用することができます。
バウンスの活用法のネタ話もう一つ紹介しましょう。バンカーショットにはボールが砂に埋まった「目玉」の状態になることがたまにありますよね。こんなときはボールの真下までクラブヘッドを深く入れないとダメだから、フェースを開いて構えるとクラブヘッドがボールの下まで入らず、クリーンヒットしてホームランになりやすい。砂の深くまで入りやすいようにフェースをかぶせて、上から鋭角に打ち込むのがいい。そんな風に教えられたことがあるでしょう。
それも正解です。ただし、砂がかなり取れてランが多く出やすく、距離感のコントロールが難しい。じゃ、どうすればいいかというと、フェースを開いておいて沈んでいるボールの下までクラブヘッドを入れてエネルギーを発散させる。要はクラブの円運動を変えてあげるのです。
ポイントは通常のアドレスから自分の体を左に傾けること。クラブの円軌道の最下点に向かう途中で砂にもぐっていくので、フェースを開いてもボールの下まで入っていきます。クラブの入射角は鋭角でも、フェースを開いているからバウンスが使えます。この打ち方ならボールが上がりやすいですし、結構止まりやすいんです。タイガー・ウッズは目玉のバンカーでこうした打ち方をして、距離感をうまくコントロールしています。
私はバンカーの練習をするときにボールを砂の深くまでもぐらせて、斜めに構えて打つこともよくやります。バンカーショットのワザのバリエーションを広げるためにもぜひ試してください。
取材・文/三代 崇
写真/圓岡紀夫
協力/高麗川カントリークラブ
【シリーズ一覧】
●Vol.1:バウンスを使って打てばアプローチもバンカーもやさしい!
●Vol.2:バウンスを滑らせれば、アプローチはもっと簡単になる
●Vol.3:「バウンス」を使いこなせ バウンスの役割と活かし方
●Vol.4:目指すは90切り! 気持ちよくグリーンに乗せよう!!
●Vol.5:アイアンショットが劇的にうまくなる4ステップドリルを公開!!
●Vol.6:曲げないことよりも、狙った方向に打ち出せるようになろう!