アイアンショット絶対上達!! 4ステップドリルでアイアンスキルを劇的に進化
向江寛尚の 「知っ得!! アイアン・スキルアップ学」 Vol.5
“読むと得する”ゴルフの知っ得ネタを向江寛尚プロが届けてくれるシリーズ。今回は向江プロが多くのアマチュアゴルファーに教えているアイアンの上達練習法を紹介する。4つのドリルを段階的に行うことで効果がぐっと高まるという。
向江寛尚
むかえ・ひろたか/1972年11月11日生まれ、東京都出身。法政大ゴルフ部を経て99年プロ転向。多くのトーナメント出場の経験を積み、2005年からレッスン活動を開始。現在はオンワードゴルフアカデミー(東京都世田谷区玉川)を拠点に多くのアマチュアゴルファーをレッスン。クラブの造詣も深い。
アイアンショットが劇的にうまくなる4ステップドリルを公開!!
左足前出し打ちドリルと右足前出し打ちドリルで、すくい打ちの悪癖を解消
アイアンのダウンブロースイングをマスターする練習法はいくつかありますが、私のこれまでの経験を通じて多くのアマチュアゴルファーに特に効果が高かったドリルは次の4つです。
1.左足前出し打ちドリル
2.右足前出し打ちドリル
3.左手一本打ちドリル
4.右手一本打ちドリル
最初に左足前出し打ちドリルに取り組んでください。これは両足をそろえてボールを体の中心線上にセットした体勢から、右足を後ろに引いて構えます。後ろに引いた右足はツマ先を開き、体重のほとんどを左足に乗せましょう。
アイアンショットではクラブにきれいな円運動をさせて、スイング軌道の最下点の少し手前でボールをとらえるのが理想です。ところがダウンスイングで体が早く開いたり、ボールを上げようとしてダウンスイングで右肩が下がってリリースが早くほどけたりすると、ボールを下から拾い上げるようなスイングになってしまいます。つまり、すくい打ちです。
こうなるとアドレスしたときのクラブのロフト角よりも、インパクト時のロフト角が増えてしまいますし、フェースが開いて当たりやすいのです。結果として大きい番手のクラブになるほど、距離がほとんど変わらなくなります。昔からよくいわれるように、「5番アイアンで打っても7番アイアンで打っても距離がほぼ一緒」という現象が起こるのです。
その点、左足前出し打ちドリルのようにクローズスタンスに構えることで、ダウンスイングで体が開きにくくなり、左足体重のままでボールを上から正確にヒットしやすくなります。すくい打ちの悪癖を徹底解消したいゴルファーに抜群の効果を発揮してくれるドリルです。
次は右足前出し打ちドリルです。この場合は両足をそろえて、ボールを体の中心線上にセットした体勢から左足を後ろに引いて、右ツマ先を開いて構えます。注意したいのは両足を広げすぎないにすることです。左足前出し打ちドリルもそうですが、片足を真っすぐ後ろに引いてからツマ先を開くようにしましょう。
右足前出しドリルの場合は体重のほとんどを右足に乗せて、極端にオープンスタンスに構える感覚となります。左足がない状態といってもいいくらいです。左足前出し打ちドリルではテークバックからインパクトまでの意識でダウンブローに打つ感覚をマスターするのが目的で、右足前出しドリルではむしろインパクト以降の動きに着目してください。
右足体重のままでバックスイングし、そのままクラブを振り下ろしてボールをヒットしたら、インパクト以降は体を左側に預けてターンさせましょう。実際のスイングで体重が右足に残ってすくい打ちになる人は、この体を左側に預ける動きができません。
最初のうちはボールを打ち抜いた直後に体を左に倒してしまうくらいでも構いません。この感覚に慣れてくると、実際のスイングではフォロースルーで体重を左足にぐっと乗せてクラブヘッドを低く長く振り抜けるようになります。左足前出し打ちドリルで覚えた動きとリンクして、ボールをより正確にダウンブローにとらえられるようになるのです。
左手一本打ちドリルと右手一本打ちドリルで、ダウンブローの軌道を整える
3つ目の左手一本打ちドリルは通常のアドレスを作ったら、右手をグリップから離して左手だけでスイングします。慣れないうちは素振りからスタートし、感覚がつかめたところでボールを打ちましょう。打球練習をするときは小さめの振り幅からスタートし、最終的にはフルスイングの4分の3くらいの振り幅のスリークォータースイングへと近づけましょう。
左手は「リードアーム」と呼ばれているほどですから、左手一本打ちドリルはスイングをリードする左手の正しい動きをマスターするのに大きく役立ちます。ボールをダウンブローにヒットしようと思うと、左手でクラブを引っ張り下ろして大きなタメを作るというイメージにつながりやすいことと思います。でも実際にはクラブは左手だけでクラブを下ろしているのではなくて、体の回転と連動して自然に左手で振り下ろして見えるような動きとなるのです。
ダウンスイングからフォロースルーにかけて体の回転で遠心力が働くと、フォロースルーではクラブヘッドが体からどんどん離れていこうとします。クラブヘッドが目標よりも右側のアウトサイド方向に進もうとするわけです。ところがクラブの遠心力に任せっぱなしでは左ワキが大きくあいてしまい、回転がその時点で止まってクラブをフィニッシュのポジションへと導けなくなります。
そこで体を素早く左に回転しながら、左手でグリップを引っ張り下ろしましょう。左手単体ではなく、体の回転と連動した左手リードでクラブを下ろせば、クラブヘッドがインサイドから適正の角度で下りてきて、ボールをダウンブローに打ち抜けます。私はこの左手の動きを「引き込み動作」という表現で説明していますが、左手一本打ちドリルでこうした正しい左手リードの動きをマスターしてください。
最後の右手一本打ちドリルは、左手の動きに沿った右手の正しい動きを覚えるのが目的です。この場合も通常のアドレスを作り、それから左手をグリップから離して右手だけでボールを打ちます。素振りでもいいですし、小さめのスイングでボールを打っても構いません。
アイアンショットでダフリやトップ、シャンクなどのミスがよく出るという人は、右手を正しく使えていないのが一番の原因です。もっとも警戒しなくてはならないのは、インパクトで右手首が手のひら側に折れるミスです。こうなると左手リードの動きを妨害してしまうことになります。
アドレスでは右手首が自分から見て少し「く」の字に折れていることがわかりますよね。この右手首の角度をテークバックの始動からフォロースルーまでしっかりとキープしましょう。
左手首が甲側に折れてしまうというよりも、器用な右手でクラブを操作してしまうために右手首が折れやすいと考えたほうが正しいといえます。右手首の角度が変わらなければスイングをリードする左手と同調してクラブを正しい軌道に乗せやすくなります。
ここで紹介した4つのドリルは、アイアンの正しい打ち方をマスターするための幹となるものです。それ以外にも枝葉となるドリルは沢山ありますが、核となる練習はこの4つしかないと思います。極論すればこの4つのドリルだけを実践するだけで、ダフリやトップなどすべてのミスを解消できてしまうのです。
ダウンブローに打つ基本の動きがわからない人は左足前出し打ちドリル、体重が右足に残ってすくい打ちになりやすい人は右足前出し打ちドリル、ダウンスイングで左ワキがあいて正しい軌道で下ろせない人は左手片手打ちドリル、インパクトで手首をコネてしまう人は右手片手打ちドリル、という具合に自分の欠点や苦手な部分に合わせて、一つのドリルを重点的に行うのもいいでしょう。
取材・文/三代 崇
写真/圓岡紀夫
協力/高麗川カントリークラブ
【シリーズ一覧】
●Vol.1:バウンスを使って打てばアプローチもバンカーもやさしい!
●Vol.2:バウンスを滑らせれば、アプローチはもっと簡単になる
●Vol.3:「バウンス」を使いこなせ バウンスの役割と活かし方
●Vol.4:目指すは90切り! 気持ちよくグリーンに乗せよう!!
●Vol.5:アイアンショットが劇的にうまくなる4ステップドリルを公開!!
●Vol.6:曲げないことよりも、狙った方向に打ち出せるようになろう!
●Vol.7:距離感を安定させるコツは、「同じスピード感」で振ること
●Vol.8:方向性がもっとよくなる「スクエア感覚」を身につけよう
●Vol.9:「飛ばない」「上がらない」の悩みは「飛び系アイアン」で解消